第993回 2009-10フランスリーグ開幕(2) 最終戦をホームで勝利、昇格したモンペリエとブローニュ
■勝利すれば1部復帰のモンペリエ
2008-09シーズンの2部リーグは、最終節で3位のモンペリエが2位のストラスブールを迎えることになった。このモンペリエでの試合は伝説になった。この試合を見ようと集まった観衆は30,428人、ラモッソン競技場の最多観客動員記録を更新した。3位モンペリエの勝ち点は63、2位ストラスブールの勝ち点は65、すなわち、モンペリエが勝利すればストラスブールをかわし、1部に昇格する。逆にストラスブールは引き分け以上の成績ならば1部昇格となる。
6年ぶりの1部復帰を目指すモンペリエは、中世から続く古い町の長い歴史の中で、最も多いであろう観客の前で、勝利を収めたいところである。一方、ライン川沿いから乗り込んできたストラスブールはアウエーで守りを固めて引き分けを狙い、1シーズンで1部に返り咲きたいところである。ホームチームにとって勝利、アウエーチームにとっては引き分け以上と言う条件での直接対決は見ごたえのあるものになるであろう。
■モンペリエ、ブローニュともに勝利して1部昇格
そして試合は序盤から動いた。モンペリエは11分、16分と立て続けにゴールを決めて優位に立つ。そしてドーバー海峡沿いのブローニュ・シュール・メールで行われている4位ブローニュの試合にも注意を払わなくてはならない。ブローニュの勝ち点はモンペリエと並ぶ63であり、2位ストラスブールと2ポイントの差である。つまり、ストラスブールはモンペリエに負けた場合、モンペリエに抜かれるが、ブローニュも勝利した場合、ブローニュにも抜かれ、4位以下に順位を落とし、1部昇格を逃すことになるのである。そのブローニュの試合であるが、ブローニュはアミアン相手に4分、16分とゴールを決めたのである。ストラスブールは何とか引き分けに持ち込みたいところであり、前半の長いロスタイムの間の49分にカンディア・トラオレが1点を返し、1点差でハーフタイムを迎えたのである。
後半に入ってもブローニュ・シュール・メールでのブローニュの勢いは止まらず、63分、80分と追加点を入れて4点差の大量リードとなり、勝負は決したも同然である。こうなるとストラスブールがモンペリエからゴールを奪って引き分けることができるかどうか、に1部昇格が委ねられた。そして勝利の女神はモンペリエに微笑んだ。大観衆の声援を受けたモンペリエは1点のリードを守りきり、1部復帰を決める。そしてブローニュも大勝し、初の1部昇格を決め、ストラスブールは4位に終わり2部残留となったのである。また、ランス、ストラスブールとともに1部から降格してきたメッスも勝ち点63の5位に終わる。1部から降格してきたチームに関しては、優勝したランス以外は惜しいところで2部残留となったのである。
■初めて1部に昇格したブローニュ
そして注目すべきは初昇格のブローニュである。ドーバー海峡に面するブローニュ・シュール・メールはジャン・ピエール・パパンやフランク・リベリーの出身地として有名である。この町にあるサッカークラブのUSブローニュは1898年創立、1998年には創立100年を記念してイングランドとのリバプールと親善試合を行っている。しかしながらこれまで1部リーグで戦ったことはなく、入替戦を戦ったシーズンが1回あるだけである。数年前までは3部に相当するナショナルリーグと4部に相当するCFAを往復するチームであったが、2007年に2部に昇格すると、初年度は16位であったが、2年目の昨季は見事に最終戦で3位となり、2部を2シーズンで通過し、夢の1部の座を獲得したのである。
■厚い1部の壁をシーズン前に実感したブローニュ
パパンはこのチームに在籍したことはないが、リベリーはこのチームでプロ生活を始め、1シーズン在籍している。ブローニュのメンバーのうち、1部経験が豊富なのは、ブローニュと入替で2部に降格したナントから獲得したフレデリック・ダロッシャくらいである。ダロッシャの1部での出場試合数は実に383、残りの選手の1部での出場数を束にしてもダロッシャ1人の数字に及ばない。これは逆に言うと人材がいないことを意味している。7月18日にリールと親善試合を行い、0-3と完敗、新監督のローラン・ギヨーは1部の壁を再認識した。そして毎週末にフランスカップがあるつもりでシーズンを戦っていくという覚悟である。(続く)