第994回 2009-10フランスリーグ開幕(3) 注目の優勝候補、白星発進

■優勝候補筆頭はヨアン・グルクフのボルドー

 前回と前々回の本連載ではフランスリーグの開幕に際して、2部から昇格してきたランス、モンペリエ、ブローニュの3チームを紹介してきたが、やはりファンの注目は優勝争いであろう。
 先ず昨シーズン優勝のボルドーが最右翼である。ジネディーヌ・ジダンの再来といわれるヨアン・グルクフを擁し、連覇を狙う。シーズン直前にカナダのモントリオールで行われたチャンピオンズトロフィーは2部のギャンガンを2-0と下し、2年連続優勝している。何と言ってもこのチャンピオンズトロフィーを制したチームが8年連続でリーグを制覇しているということも、このタイトルが単なるシーズン前の親善試合にとどまらないことを示している。

■対抗馬はディディエ・デシャン新監督のマルセイユ

 そして対抗馬と目されるのがマルセイユである。最後にリーグを制したのが1992-93シーズンと既に16年が経ってしまった。正確にはこのシーズンは八百長疑惑でチャンピオンズリーグだけではなくリーグチャンピオンも剥奪されている。そしてそれ以来、リーグだけではなく、国内外のあらゆるタイトルから見放されている。しかし、近年の充実ぶりは目覚ましく、昨季は2位、そして一昨季は3位、その前のシーズンは2位と上位をキープしている。2001-02シーズン以来一桁順位を常に維持しており、そろそろ優勝してもおかしくないころである。
 今季は新たに監督にディディエ・デシャンを招聘した。選手としてはマルセイユの黄金期の一員であり、ここで改めて紹介する必要はないであろう。そして若くして監督になってからはモナコを就任2年目でリーグ2位、そして3年目にはチャンピオンズリーグ準優勝に導く。イタリアのユベントスを率いた際は不正疑惑でセリエBへの降格を余儀なくされたが、翌年には勝ち点がマイナスからのスタートという逆境にも負けず、チームをセリエAに復帰させる。選手時代のリーダーシップは監督になってからは一段の輝きを見せる。今季のマルセイユは、デシャンとともに黄金時代を築いたジャン・ピエール・パパンをして「現在のマルセイユは自分の在籍時のマルセイユ以来フランスのクラブチームとして最高のチーム」と言わしめるチームになった。

■ダークホースはリヨンとパリサンジェルマン

 忘れてはならないのがリヨンである。一昨季までの7連覇は並みのチームで成し遂げることのできるものではない。昨季は終盤まで首位をキープしながら、ボルドー、マルセイユに抜かれて3位にとどまり、8連覇を逃した。精神的な気落ちに加え、今季はカリム・ベンゼマがスペインのレアル・マドリッドに移籍し、シーズン前のピースカップでは精彩を欠いたことは本連載の第990回で紹介したとおりである。しかし、強力な補強を行った。それがアルゼンチン代表のリサンドロ・ロペスである。アルゼンチンのラシンに所属していたころの活躍は日本のファンの皆さまならよくご存じであろう。その後、ポルトガルのポルトに移籍、ポルトガルリーグでは得点王、最優秀選手に輝いている。そのロペスの獲得でリヨンは王座奪回を目指す。
 また、人気はマルセイユと並ぶパリサンジェルマンも上位進出が期待できる。1993-94シーズンにマルセイユの6連覇をストップしたのはこのパリサンジェルマンである。その後もカップウィナーズカップ、フランスカップ、リーグカップとカップ戦のタイトルは数多く獲得しているが、リーグ戦の優勝から離れて既に15年である。いつの間にかリーグ最古参となったパリサンジェルマンの優勝を期待するファンは少なくない。

■昇格組の初戦は1分2敗

 8月8日に開幕した第1節では昇格3チームのうち2チームが上記の有力チームと対戦した。モンペリエはパリサンジェルマンと対戦し、71分に先制を許しながら、ロスタイムに追いついてドローに持ち込む。ランスはボルドーに圧倒され、1-4と大敗を喫する。そして初昇格のブローニュはレンヌと対戦するが、0-3と完敗し、昇格3チームの初戦は1分2敗であった。
 そしてマルセイユはグルノーブルに2-0とアウエーで完勝する。優勝候補の双璧であるボルドーとマルセイユは白星発進となった。リヨンはアウエーでルマンと対戦し、常に先行される展開で終了間際まで1-2とリードされていたが、ロスタイムに新戦力のロペスが同点ゴールをあげて、勝ち点1を獲得した。
 さて来年5月にリーグチャンピオンに輝くのはどのチームであろうか、今季もリーグ戦から目が離せない。(この項、終わり)

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