第1248回 リール、57年ぶりのリーグ制覇(1) 3日で首位を奪い返したリール

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■昨年の再現なるかマルセイユ

 本連載第1240回と第1241回で今季のフランスリーグの混戦模様を紹介したが、フランスカップの決勝も終わり、最後のタイトルとなったリーグ戦もフィナーレを迎えようとしている。
 4月27日の第32節のニース戦に完勝したマルセイユが、残り6試合となった段階で奪回したことを第1241回で紹介したが、多くのファンはリーグカップ優勝で勢いに乗ってリーグ戦も制した昨年同様のマルセイユのサクセスストーリーを思い出されただろう。

■最下位のアルル・アビニョンに大勝したリール、オセールと引き分けたマルセイユ

 しかし、このマルセイユの天下はわずか3日で終わってしまった。第33節は平日に行われ、リールは4月30日、マルセイユは5月1日に戦った。先攻となるリールはアルル・アビニョンをホームに迎える。アルル・アビニョンは本連載第1241回でも紹介している通り、リーグ戦では最下位で、早々と2部降格が決まっている。このアルル・アビニョン相手にリールは5-0と大勝し、暫定的に首位の座を奪い、5月を迎える。
 マルセイユはその翌日、メーデーに本拠地にオセールを迎える。かつては欧州カップの常連だったオセールであるが、近年は振るわず、今季も中位以下の成績であるオセールに勝てばマルセイユは一夜で首位に返り咲くことができる。マルセイユは後半の前半にマチュー・バルブエナが先制点をあげたが、オセールに終盤追いつかれ、1-1のドローに終わり、勝ち点1差でリールが首位を守る。

■3位リヨン相手に敗れたマルセイユ、アウエーゲームが続くリール

 首位奪還に失敗したマルセイユはこれで失速する。続く試合は3位のリヨンが相手である。アウエーでの試合は2点を先行されたが、70分、77分にゴールをあげて追いつく執念を見せる。しかしながら、84分に決勝点を奪われ、2-3と星を落とす。リーグ戦では3月初めのリール戦以来、8試合ぶりの黒星となる。
 一方のリールであるが、フランスカップ決勝を控えており、マルセイユよりも試合数が1試合多い。しかもフランスカップ決勝までに控えている2試合のリーグ戦はいずれもアウエーでの戦いである。さらにフランスカップの決勝の相手がパリサンジェルマンであり、実質的にアウエーゲームが3試合続くことになる。リールは今季はヨーロッパリーグにも参戦しているが、アウエーゲームが3試合連続したことはなく、シーズンの最後になって厳しい日程となる。

■アウエーでナンシー、サンテエチエンヌに連勝したリール

 リールのアウエーゲーム第一幕はナンシー戦である。ナンシーはこの段階で下から3番目の18位、下位3チームが降格するわけであるから降格圏内にある。しかし、13位のバランシエンヌから17位のナンシーまで5チームが同じ勝ち点38で並び、ナンシーとの勝ち点差はわずか1である。ナンシーにとっては首位チームをホームに迎え、最低でも勝ち点1を獲得したいところである。
 試合はそのナンシーが粘りを見せる。リールは前半ロスタイムの47分、ベルギー代表のエデン・アザールがゴールネットを揺らす。アザールはベルギーのテュビズに所属していたが、当時まだ2部リーグに所属していたテュビズを率いていたのはベルギー代表として活躍し、オセールでも活躍したエンゾ・シーフォであった。このシーフォの勧めもあり、アザールは14歳の時にベルギーの2部リーグのチームからリールへと移籍する。この移籍が功を奏し、2008-09シーズンからレギュラーに定着する。そして2年連続でフランスリーグの最優秀若手選手に選出される。この二十歳になったばかりのベルギーの若者のあげた1点を後半も守り抜き、リールは勝利する。
 リールは残り4試合となった段階でマルセイユとの勝ち点差を4と広げたのである。
 続く第35節はフランスカップ決勝前ということで決勝に進出したパリサンジェルマンとリールは他チームより1日早い5月10日に試合を行った。リールはアウエーでサンテエチエンヌと対戦する。サンテエチエンヌは5分に先制するがリールは前半に追いつき、後半に逆転して2-1と勝利、翌日に試合を行うマルセイユに勝ち点7の大差をつけたのである。(続く)

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