第1403回 フランスリーグ、フィナーレ(9) ドラマに次ぐドラマ、モンペリエ初優勝
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■得点王ランキングでトップに並んだネネ
38試合を戦う長丁場のフランスリーグ、最終節を迎える段階で首位モンペリエは勝ち点79、得失点差+33、追う2位パリサンジェルマンは勝ち点76、得失点差+33となった。すなわち、最終節でモンペリエが敗れ、パリサンジェルマンが勝利すればパリサンジェルマンが歴史に残る長い接戦の最後の最後で逆転優勝を飾ることができる。今季のモンペリエは攻撃力が売り物で、オリビエ・ジルーの得点力がチームを支えてきたが、終盤になり、パリサンジェルマンがハビエル・パストーレの復調もあり、攻撃力を増し、ついに第37節のレンヌ戦ではネネがハットトリックをあげ、得点ランキングでジルーと並んだ。
■モンペリエの最終節は2部降格の決まったオセール
最終節はモンペリエ、パリサンジェルマンともアウエーゲームである。5月20日21時に同時にキックオフされるが、パリサンジェルマンの相手はロリアン、モンペリエの相手はオセールである。
ロリアンは14位であるが、最終節を迎える段階で12位のバランシエンヌから19位のディジョンまで8チームに降格のリスクがある。一方、オセールは、最終戦を待たずしてすでに2部降格が決定、1980年代からフランスリーグの上位を占めてきたチームがまた1つトップリーグから去る。
パリサンジェルマンの勢い、2部降格を回避しようとするロリアン、そして初優勝を狙うモンペリエといくつか要素はあるが、オセールの戦意喪失によりモンペリエの勝利は堅いと思われた。
■オセールファンの怒りにより試合は長時間にわたり中断
しかし、この最終節もまたドラマが待っていた。オセールのアベ・デシャン競技場にはモンペリエの優勝を見ようとする遠来のサポーターもいたが、大多数はオセールの2部降格に怒りをあらわにする地元ファンである。
このファンの怒りにこたえてオセールはオリビエ・カポが20分にCKから先制点を奪う。一方、ロリアンのパリサンジェルマンも28分に先制点を許してしまう。前半のうちに追いついたのはモンペリエであった。32分にジョン・ウタカが同点ゴールを決め、モンペリエは同点で、パリサンジェルマンは1点を追って後半を迎える。
後半が始まったが、オセールでの試合は2部降格に怒るファンがピッチ内にテニスボールを投げ込み、試合が中断する。試合は再開されたが、51分には発煙筒がたかれ、また試合は止まる。そうこうしているうちにロリアンではパリサンジェルマンのパストーレが同点ゴールを決める。
■41分間の試合中断、ジョン・ウタカが逆転ゴール、モンペリエ初優勝
オセールでの試合はなおも混乱が続き、70分には発煙筒がピッチの上に投げ込まれてしまい、機動隊も出動する始末となった。試合は再開の見通しが立たず、その間にパリサンジェルマンはチアゴ・モッタが逆転ゴールを決め、ロリアンに逆転勝利する。この段階でパリサンジェルマンは勝ち点でモンペリエに並び、得失点差で上回ったのである。
パリサンジェルマンが勝利した時点でオセールではまだ警察当局の介入により試合再開を探る段階であったが、ようやく23時過ぎに試合が再開される。フランス国内でこの23時過ぎにサッカーの試合をやっているのはこのオセール-モンペリエ戦だけであろう。そして、残り20分でモンペリエが失点して負けてしまえば、初優勝は夢と消えてしまう。そのようなプレッシャーの中で残り20分のプレーとなった。
この重圧の中で決勝点をあげたのはウタカであった。76分にCKからの混戦でウタカがこの試合2得点目をあげる。
モンペリエはリードを守り、試合終了、すなわち優勝確定のホイッスルが吹かれたのは、実に試合開始から2時間半近く経過した23時28分であった。
41分間の試合中断という状況を乗り越え、モンペリエは初優勝、19チーム目のリーグチャンピオンとなったのである。そして得点ランキングは21ゴールでジルーとネネが並んだが、規定によりPKによる得点の少ないジルーが表彰されることになったのである。(この項、終わり)