第1555回 パリサンジェルマン、19年ぶり優勝(7) バランシエンヌと引き分けたパリサンジェルマン
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■第35節での地元優勝が実現しなかったパリサンジェルマン
5月に入って残り4節となり、パリサンジェルマンの地元での試合は第35節のバランシエンヌ戦と第37節のブレスト戦の2試合である。前回の本連載で紹介したとおり、残り4節となった段階でのパリサンジェルマンと2位マルセイユの勝ち点差は9であり、マルセイユが勝利以外の場合はパリサンジェルマンはこの第35節で本拠地での優勝も可能であったが、パリサンジェルマンの前日に試合を行ったマルセイユがバスティアに勝利し、第35節での優勝はなくなった。
パリサンジェルマンが第35節で勝利すれば残り3試合で勝ち点9差、残り試合でパリサンジェルマンが3戦全敗で、マルセイユが3戦全勝すれば数字の上では勝ち点で並ぶ。しかし、得失点差は30点以上離れており、パリサンジェルマンは第35節で勝利すれば優勝をほぼ手中にする。
■ゴール前に出現するバランシエンヌ
そして第35節の相手はバランシエンヌである。中位以下のチームで決して難しい相手ではない。しかし、バランシエンヌと言えば本連載の読者の皆様であれば20年前の事件を思い出されるであろう。日本がJリーグ開幕に沸く1993年春。フランスでは国内リーグで首位のマルセイユはチャンピオンズリーグの決勝に進出し、ライバルのACミラノとドイツのミュンヘンで対戦することになっていた。リーグ優勝まであと一歩のマルセイユは最下位のバランシエンヌと対戦する。勝利はたやすいかに見えたが、国内外のタフな試合を戦い、現在はすっかり定着したターンオーバー制もなく、マルセイユの選手は疲労のピークにあった。そのような中で迎えたバランシエンヌ戦で八百長が起こったわけである。
■大量の出場停止、チアゴ・シウバ退場処分
20年前のマルセイユがリーグ終盤のバランシエンヌ戦で苦労したように、現在のパリサンジェルマンも苦戦したのである。パルク・デ・プランスは4万4000人を超える超満員の観客。これまでゴールを守ってきたGKサルバトーレ・シリグ、2月からのチームの快進撃を支えたデビッド・ベッカム、中盤の新星マルコ・ベラッティ、中盤で攻撃の起点となってきたチアゴ・モッタというイタリア代表3人と元イングランド代表の合計4人累積警告で出場停止となる。パリサンジェルマンはこれまでの戦いで見せてきた圧倒的なボールポゼッションが姿をひそめる。そして17分にはバランシエンヌのガエル・ダニッチに先制点を許す。決して焦る必要のない相手であるが、パリサンジェルマンはこの失点で浮足立つ。パリサンジェルマンのチーム全体のファウルの数はここまでリーグで2番目に少なかったが、バランシエンヌ相手に次々とファウルを重ねてしまう。その結果、この失点以降3枚のイエローカードをもらい、43分には主将のチアゴ・シウバが主審の判定に不服を示し、主審に手を出してしまい、レッドカードをもらい、退場処分となる。多数の出場停止に加え、1人少ないパリサンジェルマン、敗戦も覚悟したファンも多かったが、82分、エセキエル・ラベッシのCKをアレックスが合わせる。
バランシエンヌのゴールを守っているのはマルセイユ生まれのニコラ・プヌトー、この日はスーパーセーブを連発していたが、ついに無念の失点で金星を逃す。勝利を狙っていたパリサンジェルマンは勝ち点1にとどまり、第36節以降での優勝決定を目指す。
■試合終了後、スポーツディレクターのレオナルドが審判に暴行
しかし、この試合の後、事件は起こった。パリサンジェルマンのスポーツディレクターのレオナルドがチアゴ・シウバを退場処分にした主審に対して試合終了後詰め寄り、暴力をふるったところをテレビカメラがとらえた。パリサンジェルマンはおおむね優勢に試合を進めることからファウルは先述の通り少ない。これは他国の首位グループのチームも同様である。しかし、問題はベンチである。特にレオナルドはシーズン当初から審判への不服をあらわにすることが頻繁にあった。審判の印象の悪いパリサンジェルマンはここまでに9枚もイエローカードをもらい、これはレンヌに次ぐ2番目に悪い数字なのである。(続く)