第1738回 フランスリーグ開幕(3) 2部昇格にストップがかけられたルズナック

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1部リーグより1週間早く開幕する2部リーグ

 前回の本連載では前年度のフランスリーグとフランスカップの優勝チームが争うチャンピオンズトロフィーの模様を紹介したが、いよいよシーズン開幕である。1部リーグは8月8日のスタッド・ド・ランス-パリサンジェルマンという新旧のフランスサッカーの盟主の戦いで長いシーズンが始まる。実は2部リーグは1部リーグよりも1週早い8月1日に開幕している。2部リーグが1部リーグよりも開幕の時期が早いのは、フランスカップには年末の7回戦から参戦し、1部勢よりも2試合多く戦うことから、リーグ戦を行わずにフランスカップ戦を行う日程が存在するからである。

■ルズナックがナショナルリーグで2位となり、初の2部昇格

 本連載では2部リーグについて取り扱うことは極めて少なく、終盤の1部昇格争いや1部の名門チームが2部に降格した時くらいである。ところが今年は思わぬ事件が起こった。
  本連載の読者の皆様はよくご存じの通り、1部と2部は3チームが自動入替であり、1部の下位3チーム(18位、19位、20位)のチームが2部降格、2部の上位3チーム(1位、2位、3位)が1部に昇格する。
 2部とナショナルリーグの間も同様であり、昨季2部で18位のシャトールー、19位のイストル、20位のCAバスティアがナショナルリーグに降格、ナショナルリーグで優勝したオルレアン、2位のルズナック、3位のGFCアジャクシオが2部に昇格することになっていた。オルレアンは1978年から1992年まで2部に在籍し、実に22年ぶりの2部復帰、GFCアジャクシオは昨季ナショナルリーグに降格したばかりで1シーズンで返り咲きとなった。そしてルズナックは2部初昇格である。ルズナックはスペインに接するアリエージュ県にある人口わずか600人の街にあるクラブである。1936年に設立しているが、5部に相当するCFA2部に昇格したのは2000年のことであり、2005年にCFAに昇格、そしてナショナルリーグには2009年に昇格している。ナショナルリーグでは中位以下の順位が続いたが、大きな転機となったのが2013年のことである。元フランス代表GKのファビアン・バルテスはアリエージュ県の出身であり、アリエージュ県で最も高い位置にあるこのルズナックのジェネラルマネジャーに就任したのである。ワールドカップ優勝GKのバルテス効果もあり、4月28日の第29節(ナショナルリーグは全34節)でブローニュ・シュール・メールに勝利して3位以内を確定し、2部昇格を決めたのである。
 5月23日に全日程が終了し、ルズナックは2位でシーズンを終え、カメルーン人のアンデ・ドナ。エンドーが22得点でリーグの得点王に輝いた。2部でのルズナックはホームゲームはトゥールーズのラグビー場のエルネスト・ワロン競技場で行うと宣言。ラグビーの強豪スタッド・トゥールーザンの本拠地であり1万9500人収容可能である。1998年のサッカー、2007年のラグビーのワールドカップはサッカーのトゥールーズFCの本拠地の市営競技場を利用しており、それに次ぐサイズの競技場である。

■フランスリーグの経営委員会、ルズナックの2部昇格にストップ

 ところが、6月5日、フランスリーグの経営委員会は、ナショナルリーグの中ですら一番経営規模の小さいルズナックに対して経営的な観点から2部昇格に待ったをかけた。もちろん、クラブ側はこれに反対する。しかしながら、そのほぼ1月後の7月4日、フランスリーグの経営委員会はクラブの申し出を却下する。
 ルズナック側はただちにフランス五輪委員会に申し立てるが五輪委員会の結論もリーグの経営委員会と同じであり、2部昇格は認められなかった。五輪委員会に拒絶した翌日、ルズナックはトゥールーズ地方裁判所に申し立てを行う。

■昨季18位のシャトールーが残留し、20チームで開幕した2部リーグ

 フランスリーグ2部は昨季18位のシャトールーが残留し、8月1日に開幕する。裁判所は2部リーグが開幕した8月1日に判決を下す。裁判所は経営委員会に1週間の猶予を与え再考するよう促すが、経営委員会の決定は覆らない。
 ついにトゥールーズ市は3度のワールドカップで使用(1938年大会のサッカーも含む)した市営競技場をルズナックが使うことを認め、ルズナックの2部昇格、21チームによる2部リーグを支援することになったのである。(続く)

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