第1739回 フランスリーグ開幕(4) ワールドカップ後の大型移籍

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■今季最高の移籍金でハメス・ロドリゲスがレアル・マドリッドへ移籍

 チャンピオンズトロフィーの初めてのアジアでの開催、ナショナルリーグから2部昇格を決めたルズナックの昇格取り消し、と例年になく話題の多い中でフランスリーグが開幕するが、やはりシーズン前の話題と言えば選手の移籍であろう。
 特に今年はワールドカップという世界最大の選手の見本市がサッカー王国ブラジルで行われたこともあり、選手の移籍は注目を集める。ワールドカップ後の移籍には例年のシーズン後と比較して大きな特徴があり、ワールドカップを通じてその実力が知られた選手がビッグクラブに移籍する。その象徴が得点王に輝いたコロンビアのハメス・ロドリゲスであろう。昨季からモナコに所属するロドリゲスはワールドカップでの活躍で世界中のビッグクラブの注目の的となり、スペインのレアル・マドリッドに移籍した。移籍金は今季の欧州では最高額となる9000万ユーロと言われている。フランスのクラブの選手の移籍が世界最高となるのはボスマン判決以降では最初のことである。

■ダビド・ルイスが加わったパリサンジェルマン

 一方、フランスにも大物選手がやってきた。チェルシー(イングランド)からパリサンジェルマンに移籍してきたブラジル代表のダビド・ルイスである。ダビド・ルイスの移籍金は4950万ユーロ、この夏の欧州の移籍ではロドリゲス、リバプール(イングランド)からバルセロナ(スペイン)へ8100万ユーロの移籍金で移籍するルイス・スアレスに次いで3番目の大きな移籍となる。ダビド・ルイスの場合はワールドカップ前の5月に移籍が決まっていたが、パリサンジェルマンの最終ラインはマクスウェル、チアゴ・シウバ、ダビド・ルイスと3人がブラジル代表の選手となる。

■ワールドカップで活躍したギジェルモ・オチョア、セルジュ・オーリエ

 本連載第1730回から第1733回にかけてフランスのクラブに所属する選手のワールドカップでの活躍について紹介したが、メキシコのGKとして活躍したギジェルモ・オチョアは所属していたアジャクシオが2部降格、ちょうど契約が切れるところで次の移籍先を探していたところでワールドカップでのファインセーブの連発、スペインのマラガに移籍することになった。  コートジボワールの右サイドバックとして日本を苦しめたセルジュ・オーリエはトゥールーズからパリサンジェルマンへ移籍、リーグチャンピオンチームでオランダ代表から外れたグレゴリー・ファンデルビールとポジションを争うことになる。

■チーム編成に苦労するモナコ

 一方、移籍先が決まらないのがモナコのGKセルヒオ・ロメロである。ワールドカップではアルゼンチンのゴールを守り、特に準決勝のオランダ戦は2本のPKを防ぎ、アルゼンチンの24年ぶりの決勝進出の立役者となった。しかし、所属クラブのモナコではクロアチア代表のダニエル・スパシッチの控えである。また、モナコはオランダ代表のGKとして2010年のワールドカップでグループリーグから決勝までの全7試合に出場したマールテン・ステケレンブルクもイングランドのフルハムから獲得している。このような状況でロメロ本人もクラブも移籍を希望しているが移籍先が決まらない。
 また、大型の移籍があったチームはそれを埋め合わせる逆の移籍が必要である。例えば、ダビド・ルイスの獲得によってパリサンジェルマンは金銭的に厳しい。しかし、移籍金を見返りに放出したのはクリストフ・ジャレくらいで、しかもその移籍金はわずか150万ユーロである。アルゼンチン代表としてワールドカップで活躍したエセキエル・ラベッシの放出が噂されている。
 そして今季世界最大の移籍金によりロドリゲスを失ったモナコ、ロドリゲスだけではなくエマニュエル・リビエールもニューカッスル(イングランド)に移籍してしまった。彼らの穴を埋める新戦力はこの夏の移籍では今のところ獲得していない。
 モナコのように移籍で戦力が補強できていない段階のチームもあるが、フランスリーグは欧州の他の主要リーグよりも早く開幕するのである。(続く)

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