第2375回 2018-19シーズン開幕(5) 移籍の少なかったパリサンジェルマン、開幕戦で快勝

 1998年の「フランス・サッカー実存主義」で連載を始めて、早いもので20年たちました。第2368回が通算して2500回目の連載となりました。記念すべき節目の連載でフランスのワールドカップ優勝をお伝えできたことをうれしく思います。引き続きよろしくご愛読のほどお願いいたします。

■大物選手を獲得しなかったパリサンジェルマン

 フランスリーグ第1節の3日目の8月19日の日曜日、15時から昨季3位のリヨンがアミアン戦、17時からヨーロッパリーグの予備戦3回戦を戦ったばかりの昨季6位のボルドーがストラスブールと戦い、そして21時からは昨季三冠のパリサンジェルマンがカーンと対戦、いずれも昨季上位チームのホームで開幕戦を迎える。
 パリサンジェルマンは、2011年にカタール資本となってからは世界を驚かせるような大型補強をつづけてきた。しかし今季はハビエル・パストーレをイタリアのローマへ、ユーリ・ベルチチェをスペインのアスレチック・ビルバオへ移籍するなど、レギュラークラスを放出し、イタリアのユベントスからジャンルイジ・ブッフォンを獲得したくらいで、例年に比べて非常に小規模な移籍となった。さらに40歳のブッフォンはユベントスとの契約がちょうど切れる年に当たり、移籍金は発生しなかった。すなわち、これまでエディンソン・カバーニに6400万ユーロ、アンヘル・ディマリアに6300万ユーロ、ダビド・ルイスに5000万ユーロという多額の移籍金を支払ってきたパリサンジェルマンは今季は移籍金を支払わず、パストーレ、ベルチチェの移籍でそれぞれ2400万ユーロを受け取った。パストーレを4200万ユーロで獲得した2011年以来、欧州の移籍市場の主役を張り続けてきたパリサンジェルマンは今季はおとなしく、移籍市場からは距離を置いた形になった。

■昨季最終戦でスコアレスドローとなったカーン-パリサンジェルマン戦

 それでもパリサンジェルマンが圧倒的な戦力を有していることは疑いの余地はない。開幕の1週間前に行われたチャンピオンズトロフィーでは、両チームともベストメンバーではなかったが、4-0と最大のライバルを一蹴している。
 実は昨季の最終戦でパリサンジェルマンはカーンと対戦しており、年度をまたいで2試合同じ相手と戦うことになる。カーンでの5月19日の戦いはすでにパリサンジェルマンが優勝を決めていたこともあり、スコアレスドローとなった。しかし、昨季16位のカーンにとって開幕初戦がアウエーのパリサンジェルマン戦というのは荷が重い。得点力不足に悩むカーンは新戦力としてカシミール・ニンガをモンペリエから獲得したが、開幕前の5試合でわずか2得点と状況が好転しないまま開幕を迎えた。

■下部組織上がりの若手選手を多数起用したトーマス・トゥヘル新監督

 ほぼ満員の4万7000人の観衆を飲み込んだパルク・デ・プランス、トーマス・トゥヘル新監督がピッチに送り込んだメンバーは新鮮であった。キリアン・ムバッペ、エディンソン・カバーニ、プレスネル・キンペンベ、マルコ・ベラッティなど多くの主力が本調子でなかったこともあるが、クラブの下部組織から上がってきた3人の若手選手、スタンリー・エンソキ、コラン・ダグバ、アントワン・ベルネードを先発に起用したのである。また攻撃陣は中央にネイマール、左サイドにディマリア、そして右サイドには20歳のクリストファー・ヌクンクを起用したのである。

■ネイマールの先制点、アドリアン・ラビオとティモシー・ウェアが追加点

 先制点を決めたのは千両役者のネイマール、10分にパリサンジェルマンがリードする。さらに35分にはワールドカップのバックアップメンバーを拒否したアドリアン・ラビオがゴールを決めてパリジャンを沸かせる。ハーフタイムにはチームを去ったパストーレのお別れセレモニーが行われ、ファンの万雷の拍手でパリの地を去って行った。
 そして試合終了間際には前週のチャンピオンズトロフィーで得点を記録したティモシー・ウェアがゴール、パリサンジェルマンは3-0と快勝、今季も優勝争いの軸となることを確信させた。
 その他の上位陣であるが、開幕前のインターナショナルチャンピオンズカップでは得点力不足に悩んだリヨンはベルトラン・トラオレ、メンフィス・デパイのゴールで2-0とアミアンを下す。
 昨季5位のレンヌはアウエーでリールに敗れ、ヨーロッパリーグの予備戦で一足早くシーズンインしたボルドーはホームでストラスブールに敗れている。
 今季も各地で歓声の起こる週末が楽しみである。(この項、終わり)

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