第2489回 パリサンジェルマン、足踏みの末に連覇(4) リールで歴史的大敗
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■リールのピエール・モーロワ競技場での直接対決
本拠地パルク・デ・プランスでの優勝のチャンスを逃したパリサンジェルマン、優勝は持ち越しとなった。パリサンジェルマンは未消化の試合が1試合あるが、この第28節のナント戦(アウエー)は4月17日に予定されているため、次の試合は第32節、リールとのアウエーゲームとなった。2位チームとの直接対決で引き分け以上であれば優勝が決まる。
リールにとっては本拠地ピエール・モーロワで意地を見せたいところである。2012年に完成したこのスタジアムは開閉式の屋根を備え、サッカーだけではなくテニス、バスケットボールなどの試合で多くの観客を集めている。リールの最後のリーグ優勝は2010-11シーズンのことであり、このスタジアムの主役はスタジアムの主であるリールよりも代表をはじめとする他のサッカーチームや、テニス、バスケットボールという他の競技の国内外のチームであった。自らの優勝の可能性はほとんどないとはいえ、目の前でリーグ優勝を決められるか、あるいはそれを阻止するか、という試合がスポットライトを浴びる形になったのである。
■今季のリールの躍進を支えている選手たち
パリサンジェルマンを迎え撃つ形になったリールであるが、今季の躍進の原動力は18得点をあげているニコラ・ペペ、10得点をあげているジョナタン・バンバという23歳の攻撃陣、そして若いチームの中にあって存在感のある35歳のジョゼ・フォンテである。フォンテはかつてイングランドのサウサンプトンに所属しており、吉田麻也とコンビを組んだこともあるから日本の読者の皆様もよくご存じであろう。また、ポルトガル代表のストッパーとして2016年の欧州選手権でも優勝しているが、代表入りしたのは31歳と遅咲きの選手である。若い時の苦労を知る大ベテランが若手選手をまとめている。またトップ下のジョナタン・イコネは20歳、実はパリサンジェルマンのキリアン・ムバッペと同じ年で、同じボンディで生まれ育っている。6歳から12歳まで彼らはキリアン・ムバッペの父のウィルフリッド・ムパッペが監督を務めるASボンディのチームメイトであった。
■史上最多の観衆を集めたピエール・モーロワ競技場
この両者の対戦にピエール・モーロワ競技場は開場以来すべてのスポーツで最高となる49,712人の観客が集まった。ちなみにこれまでの最高は2014年のサッカーのフランス-ジャマイカ戦、それに次ぐ記録は3月30日に行われたリーグカップの決勝のストラスブール-ギャンガン戦である。
前週の失敗を踏まえ、パリサンジェルマンのトーマス・トゥヘル監督は3人の攻撃陣は中央にムパッペ、右にダニエウ・アウベス、左にユリアン・ドラクスラーを配す。そして1週間前にゴールを守っていたベテランのジャンルイジ・ブッフォンに代えてアルフォンス・アレオラに最後の守りを託す。
■後半に大量失点、悲劇的な結果となる
ところが試合はパリサンジェルマンが押し気味に進めるものの悲劇的な結果に終わってしまう。
まず7分、かつてのチームメイトのムパッベの前で意気の上がるイコネがクロスをあげる。これをシェカがヘディングで流したボールをパリサンジェルマンのトマ・ムニエが自らのゴールに入れてしまう。思わぬ形で先制を奪われたパリサンジェルマンであるが、その4分後にムバッペが打開する。ムバッペが右サイドでリールの選手を抜き去ってクロス、ファーサイドにいたファン・ベルナトが左足で同点ゴール。このままでいけばパリサンジェルマンの優勝であったが、これが最後のパリサンジェルマンの得点となり、前半のうちにチアゴ・シウバ、ムニエが負傷退場する。
後半に入ってリールは51分にペペが勝ち越し点を奪うと一気にゴールラッシュとなる。65分にはイコネのパスを受けたバンバが追加点、73分にはFKからガブリエルがプレスネル・キンペンベに競り勝ってゴールをあげる。そして84分にはチームの精神的支柱のフォンテがキンペンベに空中戦でまた勝ち、ヘディングでとどめのゴール。結局5-1という大差でリールが勝利、目の前のパリサンジェルマンの優勝を阻止したのである。(続く)