第2666回 2019-20フランスリーグ回顧 (2) 圧倒的な攻撃力のパリサンジェルマン

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■スペクタクルな試合を展開したパリサンジェルマン

 前回の本連載ではパリサンジェルマンが圧倒的な力の差を見せて今季も優勝したことを紹介したが、2位以下との勝ち点差だけではなく、得点、失点、そしてその結果である得失点差も圧倒的である。
 今季総得点は75点、1試合当たり3得点に近い。また2位のリヨンが42点であり、パリサンジェルマンが試合消化数が少ないことを考えれば、1試合あたりでリヨンのほぼ2倍の得点力を記録していることがわかる。
 一方、失点に関しては24、これはスタッド・ド・ランスの21に及ばず、レンヌと並んで2番目に少ない。スタッド・ド・ランスはその堅い守備で今季は5位に入り、来季は久しぶりの欧州カップ出場が予想されるが、得点はパリサンジェルマンのほぼ3分の1の26点である。得点に関して言えば、スタッド・ド・ランスは最下位のトゥールーズの22点に次いで少ないのである。スタッド・ド・ランスは得点は2番目に少なく、失点は一番少ないという数字を残している。この結果として、パリサンジェルマンは総得点と総失点を足した得失点和は99で最多、一方のスタッド・ド・ランスは43で最少であり、パリサンジェルマンの半分以下なのである。
 このようにパリサンジェルマンの試合はゴールシーンが多く、フランス人好みのスペクタクルな試合となるのである。

■22年ぶりに2年連続の得点王に輝いたキリアン・ムバッペ

 そのゴールの4分の3はパリサンジェルマンのものであり、極上のエンターテインメントをファンはパルク・デ・プランスをはじめとするスタジアムで楽しむことができるのである。
 このゴールシーンの中心となっているのがキリアン・ムバッペである。チーム75得点のうち18得点をあげてリーグ得点王に輝いた。ムバッペは昨年も33得点で2年連続の得点王となった。2年連続で得点王を獲得したのはステファン・ギバルッシュ以来22年ぶりのこととなった。またパリサンジェルマンはズラタン・イブラヒモビッチ、エディンソン・カバーニに続いてムバッペが得点王になっており、4年連続で得点王を輩出している。なお、同じ18点でモナコのウィッサム・ベン・イェデルがムバッペに並んでいる。

■アシストランキングのトップはアンヘル・ディマリア

 アシストランキングもトップはパリサンジェルマンの選手であり、アンヘル・ディアマリアが14を記録している。アシストランキングで2位はモナコのイスマル・スリマニとブレストのヨアン・クールの7、ディマリアのパスの正確性、そしてそれを決める攻撃陣の精度の高さを物語っている。パリサンジェルマンは枠内シュートの得点率は53パーセントでトップ、パリサンジェルマン以外にこの数字が50パーセントを越えているのはニースだけである。
 パリサンジェルマンの攻撃を支えているのはFWの選手だけではない。中盤での圧倒的なボール支配率がその源泉となっている。27試合の平均ボール支配率は65.5パーセントであり、中盤のマルコ・ベラッティから前方のムバッペやエディンソン・カバーニ、両翼のディマリア、ネイマールへのパスは脅威である。特にネイマールはパリサンジェルマンに来てからの評価はフィールド外部での言動もあり、いろいろと分かれる。しかし、今季は背番号10を付けたサイドプレーヤーとなり、得点ランキング5位となる13得点をあげただけではなく、ゴールとアシストの両方を決めた試合が4試合もある。新たなプレースタイルを確立したといえるであろう。

■7回の優勝に貢献したチアゴ・シウバとマルコ・ベラッティ

 そして2013年以降これが7回目の優勝となったパリサンジェルマンであるが、7回すべての優勝メンバーとなったのがチアゴ・シウバとベラッティである。リーグ戦で優勝経験が7回という選手はこれまでに7連覇時のリヨンのジュニーニョ、シドニー・ゴブー、グレゴリー・クーペ、1960年代から70年代のサンテチエンヌに所属したジャン・ミッシェル・ラルケとエルベ・ルベリの5人しかいないのである。チアゴ・シウバとベラッティが記録を更新することは時間の問題であろう。(続く)

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