第2669回 2019-20フランスリーグ回顧 (5) 暫定で順位を上げたニースとスタッド・ド・ランス
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ストラスブールのあるグランテスト地方が感染の中心
今季のフランスリーグの最終節となった第28節、3月7日には6試合が予定されていたが、この時点でフランスにおける感染の中心であったグランテスト地方で行われるストラスブール-パリサンジェルマン戦のみが延期となり、残り5試合は予定通り行われた。この時点でフランスにおける感染者数は613人、そのうちの2割強の136人がグランテスト地方であったことから、試合が延期となった。しかし、まだこの時点では死者は9人、多くのフランス人は中国を発端とした対岸の火事という認識であっただろう。そして、この日20時にキックオフを迎えた10チームの選手、スタッフ、ファンも同じ思いだったかもしれない。
■欧州カップ出場を目指してニースとモナコが直接対決
この10チームの中で欧州カップ出場や降格にかかわる順位にいたのは7位のモナコ(勝ち点40、得失点差+1)、8位のスタッド・ド・ランス(38、+4)、9位のニース(38、+2)、11位のナント(37、-1)、17位のディジョン(27、-9)、18位のニーム(27、-14)であった。なお、試合を行うことができなかったストラスブールは10位で勝ち点38、得失点差±0であった。
この中で唯一の直接対決となったのがニース-モナコ戦である。南仏の名門同士の戦いということでファンの関心も高く、ニースのアリアンツ・リビエラ競技場には2万1000人のファンが集まった。両チームとも今季の目標は欧州カップ出場であるが、現在の順位ではあと一歩及ばない同士の対戦となった。
■カスパー・ドルベリの2得点でニースが逆転勝利
試合はほぼ互角の展開であったが、先制点を奪ったのはアウエーのモナコ、32分にウィッサム・ベン・イェデルがバカヨコのパスを右足で決める。ベン・イェデルは通算18得点となって得点王争いで試合のなかったキリアン・ムバッペ(パリサンジェルマン)と並んだ。
しかし、ニースはここからデンマーク代表のカスパー・ドルベリが活躍する。オランダのアヤックス・アムステルダムからニースのクラブ史上最高の移籍金で移ってきたドルベリは、59分にヘディングで同点ゴールを決める。対するモナコは監督のロベルト・モレノを含み4枚のイエローカードを受ける。さらに84分にはステバン・ヨベティッチが一発退場となる。モナコはこれがシーズン10人目の退場となり、フランスでは最多、欧州五大リーグでも最多という不名誉な数字である。
そして後半の長いアディショナルタイム、ドルベリは今度は左足でゴールを決める。ドルベリは今季11ゴールを記録したが、そのうち6点は2020年になってからのものである。11ゴールは得点ランキング8位であるが、2020年になってからに限るとトップは7得点のムバッペ、ドルベリの成績はそれに次ぐものである。ドルベリの活躍でニースは勝ち点を41とし、勝ち点40のモナコを逆転したのである。
■58年ぶりの欧州カップ出場に近づいたスタッド・ド・ランス
欧州カップ出場を目指す8位のスタッド・ド・ランスはブレストと対戦する。第1回のチャンピオンズカップにフランス代表として出場した名門スタッド・ド・ランスも1962-63シーズンのチャンピオンズカップに出場したのを最後に欧州カップから60年近く離れている。2010年代に1部復活を果たし、そろそろオールドファンを喜ばせたいところである。
スタッド・ド・ランスは29分にPKを与えてしまい、ピンチを迎える。キッカーはアレクサンドル・マンディ、これをスタッド・ド・ランスのGK、セルビア代表のプレドラグ・ライコビッチが両腕で見事にストップした。スタッド・ド・ランスはFW陣のポジション争いが厳しいが、この日はCFにエル・ビラル・トゥーレを起用する。このトゥーレが37分に右足でゴールを決める。スタッド・ド・ランスは68分にギレーヌ・コナンが2回目の警告で退場処分となり、1人少なくなる。しかし、チーム一丸となって守り切り、1-0と勝利し、勝ち点を41に伸ばす。
この結果、スタッド・ド・ランスとニースは、暫定の順位をそれぞれ3つ上げ、5位と6位となる。両チームは、モナコだけではなく日曜日に試合を控えるリヨンとモンペリエも抜いたのである。(続く)