第2869回 2021-22シーズン開幕(2) タイトルホルダーを補強したパリサンジェルマン

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■ブーイングを浴びながらも活躍したアクラフ・ハキミ

 シーズン開幕を告げるチャンピオンズトロフィーは昨季のリーグチャンピオンのリールがフランスカップ優勝のパリサンジェルマンを1-0と破って初優勝を決めた。ただ、パリサンジェルマンの選手の多くは欧州選手権あるいは南米選手権に出場しており、十分な休息をとって、シーズン開幕を迎え、昨年逃したリーグ優勝、そして悲願のチャンピオンズリーグ優勝を目指すことになる。チャンピオンズトロフィーに出場したメンバーのうち、2人が移籍によって獲得した新メンバーである。
 先発したのが右サイドのDFを務めたアクラフ・ハキミである。スペイン生まれのモロッコ代表、すでに18歳の時にはロシアでのワールドカップのグループリーグ3試合に出場しており、そのスピードには目を見張るものがある。イタリアのインテルミラノから7月初めに移籍してきたが、チャンピオンズトロフィーの前週に行われたオルレアンとの練習試合で決勝点をあげている。そして、チャンピオンズトロフィーでも先発した。イスラエルのテルアビブで行われた試合、ハキミは2万9000人の観衆から終始ブーイングを浴びた。イスラエルはこれまでアラブ諸国ではエジプトとヨルダンとしか国交がなかったが、ロナルド・トランプ大統領の中東政策の影響もあり、2020年にUAEと国交正常化、つづいてバーレーン、モロッコ、スーダンとも国交を結んだ。したがって、モロッコ代表のハキミはイスラエルのファンから歓迎されてもよいはずである。ところが、敬虔なイスラム教徒であるハキミは今年の5月にパレスチナへの支持を表明しており、パレスチナと対峙するイスラエルの観衆からブーイングを受けたわけである。しかし、ハキミはブーイングにも関わらず、右サイドでスピードあふれるプレーを続け、パリのファンに期待を持たせたのである。

■ジョルジニオ・ワイナルドゥム、セルヒオ・ラモス、ジャンルイジ・ドンナルンマを獲得

 そしてもう1人が、終盤に登場したジョルジニオ・ワイナルドゥムである。ワイナルドゥムはオランダ代表であり、イングランドのリバプールから移籍してきた。昨季、スペインのバルセロナの監督にオランダ人のロナルド・クーマンが就任し、ワイナルドゥム獲得の動きがあったが、結局バルセロナが獲得しなかった。ワイナルドゥムはリバプールとの契約が切れたところでパリサンジェルマン移籍となった。
 このテルアビブ遠征には帯同していなかったが、その他にスペインのレアル・マドリッドからスペイン代表としても活躍したストッパーのセルヒオ・ラモスを獲得している。
 さらに欧州選手権の決勝でPK戦勝利の立役者となったイタリアのGKジャンルイジ・ドンナルンマもACミランから獲得した。ドンナルンマは16歳でACミランとプロ契約を果たしている。そして2016年9月1日にバーリで行われたフランスとの試合、後半からジャンルイジ・ブッフォンに代わって出場し、17歳で代表デビューを果たしている。なお、この試合ではレイバン・クルザワに得点を奪われており、5年の歳月を経て、チームメイトとなった。

■ビッグタイトルを獲得した選手とともに目指すチャンピオンズリーグ

 これらの選手の共通点はビッグタイトルを獲得しているということである。ハキミは22歳と若いが、プロ生活を始めたレアル・マドリッドではチャンピオンズリーグの優勝メンバーとなり、インテルミラノでもセリエA優勝を果たしている。同じ22歳のドンナルンマも欧州選手権で優勝し、大会の最優秀選手にも選出されている。
 ワイナルドゥムはオランダのフェイエノールト、PSVアイントフォーヘンでは国内タイトルだけであったが、リバプールではチャンピオンズリーグ優勝を果たしている。
 ベテランのセルヒオ・ラモスの栄光については紙面が足りないくらいである。16年間のレアル・マドリッドでの経験でチャンピオンズリーグ4回、国内リーグ優勝5回を数えている。またスペイン代表として欧州選手権で2回、ワールドカップで1回の優勝を誇る。
 これらの選手は勝者のメンタリティを持ち、悲願のチャンピオンズリーグ優勝のために獲得したのである。
 そして、シーズン開幕後に、それ以上の実績を有する大選手がパリサンジェルマンのメンバーに加わったのである。(続く)

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