第3209回 2022-23フランスリーグ回顧

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■史上最多の11回目の優勝を果たしたパリサンジェルマン

 今季のフランスリーグは2年前の新型コロナウイルスの感染拡大に続いて中断期間があった。しかし、今回はワールドカップ開催による中断であり、史上初めてあらかじめ中断期間が設けられたシーズンとなった。
 結果としては優勝は予想通りパリサンジェルマンであったが、今回の優勝には2つの意味がある。まず、11回目の優勝となり、10回で並んでいたサンテチエンヌを抜いて単独最多の優勝回数となった。1970年設立と歴史は浅く、サンテチエンヌが10回目の優勝を果たしたのは1980-81シーズン、主力メンバーにはミッシェル・プラティニもいた。選手の国外移籍はほとんどない時代であった。当時のパリサンジェルマンはようやく1部に定着したところでまだタイトルを獲得できるだけの力はなかった。設立以来、パリ財界のバックアップを受けて資金に困ることのないクラブであったが、創立から40年間でリーグ優勝はわずか2回、1993-94シーズン以来優勝から遠ざかっていたが、2011年にカタール資本となってから大型補強を繰り返すし、実に12シーズンのうち9シーズンでリーグ優勝を果たした。しかし、それでも欧州の王座には届かない。当時とは環境が大きく変わっているとはいえ、欧州カップ(チャンピオンズリーグ)では1990年代以下の成績しか残せない、それがこのクラブの現実である。

■欧州で揺らぐ一強時代

 そしてもう1点はこれだけ圧倒的な戦力を有しながら、2位のRCランスとの勝ち点の差はわずか1であった。欧州五大リーグのうちで一強時代となっているのはフランスのパリサンジェルマン以外にドイツのバイエルン・ミュンヘン、イタリアのユベントスが該当するが、今季はその一強が苦戦し、バイエルン・ミュンヘンはボルシア・ドルトムントと勝ち点で並び、得失点差でようやく11連覇にたどり着いた。イタリアは3年前まで9連覇を果たしたユベントスが4位が2季続き、今季は6位となった。一強のクラブに陰りが見えたのも今年の特徴であった。

■ワールドカップ後失速したパリサンジェルマンにRCランスは一歩届かず

 そしてワールドカップによる中断が影響したことは間違いないであろう。フランスリーグは第15節を終えた段階でワールドカップ開幕を迎えた。中断時点の成績を振り返ると首位はパリサンジェルマン、13勝2分と負けなしの勝ち点41であった。2位はRCランス、11勝3分1敗で勝ち点36、この時点で2位に勝ち点5の差をつけていたパリサンジェルマンであったが、再開後の成績は14勝2分7敗と負けの数が目立つ。7か国11人の選手がワールドカップに出場したパリサンジェルマンはワールドカップの反動があったとみてよいであろう。RCランスは14勝6分3敗と再開後の成績はパリサンジェルマンを上回り、直接対決は2試合とも再開後に行われ、いずれもホームチームが3-1で勝利したが、勝ち点1の差に泣いた。なお、RCランスの年間勝ち点84は勝利の勝ち点が2であった時代の勝ち点を3と換算してもクラブ史上最高の成績となる。

■ワールドカップ効果で史上最多を記録した観客動員

 そしてワールドカップがポジティブに影響したのが観客動員である。ワールドカップでのフランス代表の活躍、フランスリーグに所属している選手の活躍はすでに本連載で紹介してきた。今季の1部リーグの観客動員数は905万人であり、史上最多となった。1試合当たりの平均観客動員数は23,810人となった。20クラブ中8クラブは平均観客動員数が2万5000人を超えた。そして収容率は優勝したパリサンジェルマンと2位のRCランスは99%、ストラスブールも97%、マルセイユとレンヌも95%と満員のスタジアムの中で試合が行われたのである。(この項、終わり)

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