第3300回 前半戦を終えたフランスリーグ(2) 序盤戦の主役は南野拓実のモナコ

 第3300回の連載を迎えることになりました。連載開始以来22年で3300回もの連載を続けることができたのは読者の皆様のおかげです。読者の皆様に改めて感謝するとともに、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。

■昨季6位で欧州カップを逃したモナコ

 これまで大型補強を続けてきたパリサンジェルマンが、カタール資本傘下で初めてその勢いが止まったのが今シーズンであり、シーズン開幕前からチーム編成に苦労した。しかし、キリアン・ムバッペがチームに合流してからは勢いを見せたが、首位奪取のかかった第5節ではパルク・デ・プランスでニースに敗れてしまい、後退する。今季の序盤のフランスリーグを牽引したのはモナコであった。
 このところリーグ戦で好成績を残しているモナコであるが、昨季はヨーロッパリーグの決勝プレーオフまで残ったが、国内リーグでは6位に終わり、欧州カップへの挑戦権のある5位リールに勝ち点2及ばなかった。

■レッドブル・ザルツブルク時代に南野拓実を知るアドルフ・ヒュッター

 モナコは監督をベルギー人のフィリップ・クレマンからオーストリア人のアドルフ・ヒュッターに代える。オーストリアのクラブだけではなく、ドイツのフランクフルト、ボルシア・メンヒェングラートバッハで監督をしたこともあるが、この監督の交代によって覚醒したのが南野拓実である。イングランドのリバプールというビッグクラブから2022年にモナコに移籍してきた際は、モナコの歴史上最高の逸材と期待され、グレース・ケリー以来の厚遇をもってモナコ国民に熱狂的な歓迎を受けたが、厳しい練習についていけず、全く期待外れであった。シーズン途中に行われたワールドカップでも精彩を欠き、低空飛行のままシーズンを終えてしまい、国内タイトルを獲得することはできず、欧州カップも出場権も逃してしまう。そこに新監督としてやってきたヒュッターは南野が初めて所属したレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)の時の監督であった。

■南野の活躍で首位を走ったモナコ

 南野をよく知るヒュッター監督の下で南野は本来の姿を取り戻す。プレシーズンマッチのバイエルン・ミュンヘン戦では先制点を上げるなど大活躍、開幕戦のクレルモン戦にも先発出場し、ゴールこそなかったものの、複数の得点にからみ4-2と勝利する。続く第2節のストラスブール戦はホームゲーム、通常閑古鳥のなく真夏のルイ二世競技場には「強いモナコ」を見ようと異例の1万人以上の観衆が集まる。その大観衆の中で南野は大活躍、20分に20メートルほどのミドルシュートで先制点をあげる。モナコに来て今年の1月以来、ようやく2点目のゴールを決めた。さらに南野は36分にも追加点、3-0で勝利したモナコは首位に躍り出た。第3節のナント戦は3-3のドローとなったが、この試合でも南野は1点を入れ、反撃ののろしとなった。その後も南野のいるモナコは白星を重ね、第6節では前節でパリサンジェルマンを破ったニースに試合終盤の決勝点で敗れ、首位の座をブレストに譲ったが、その翌週にはマルセイユを下して再び首位の座を取り戻した。第10節でリールに敗れて首位から陥落したが、それまでのフランスリーグの主役はモナコであり、その顔は南野であり、冬の移籍市場では南野争奪戦が必至である。

■第13節まで無敗をキープしたニース

 そのモナコに代わって首位に立ったのがニースであった。昨季はヨーロッパカンファレンスリーグで準々決勝に残り、フランス勢の期待を集めたが、国内リーグでは9位に終わり、今季の欧州カップの出場権を獲得できなかった。ニースの監督は契約満了のディディエ・ディガールに代わり、イタリア人のフランチェスコ・ファリオリが就任する。新監督の手腕に期待が集まったが、開幕から3試合連続で引き分ける。しかし無敗記録は続き、11月26日の第13節のトゥールーズ戦までリーグ戦で無敗を保った。そしてその中には上記の通りパリサンジェルマンやモナコという首位争いをするチームに対する勝利もあったのである。
 ただ、無敗とは言っても引き分けの場合は勝ち点はわずか1である。第12節でニースは金曜日の11月10日にモンペリエと対戦し、スコアレスドローで勝ち点を26とする。その翌日に勝ち点3をあげたチームに抜かれ、首位を明け渡したのである。(続く)

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