第833回 パリサンジェルマン、リーグカップを制す(1) パリサンジェルマン、8年ぶりに決勝進出
■リーグ戦で不振のチームが揃ったベスト4
本連載の第804回から第808回にかけてベスト4が出揃うまでのリーグカップを紹介したが、3月29日にリーグカップの決勝が行われ、今季初めてのタイトルが確定した。今回からはこのリーグカップの準決勝と決勝の模様、そして決勝で起こった事件について紹介したい。
上記の連載で紹介したとおり、フランスカップのベスト4はルマン、ランス、パリサンジェルマン、オセールの4チームであり、2月26日にパリサンジェルマン-オセール戦、27日にルマン-ランス戦が行われた。今季の準決勝進出チームの特徴としてリーグ戦で不振なチームが多いと言うことである。1月中旬の準々決勝終了時に4チームの順位はルマンが7位、パリサンジェルマンが11位、オセールが16位、ランスが18位であったが、準決勝の段階でルマンが4位、オセールが12位、パリサンジェルマンが16位、ランスが17位とルマン、オセールは順位を上げたものの、パリサンジェルマンとランスはほぼ横ばいである。このリーグカップで優勝するとUEFAカップへの出場権が与えられるが、ルマン以外はリーグ戦でUEFAカップの出場権を獲得する可能性はゼロと言えるであろう。また、18位以下は2部降格であり、パリサンジェルマンとランスはぎりぎりの状況でこのリーグカップを戦わなくてはならず、UEFAカップという夢と1部残留と言う現実の間でキックオフを迎えるのである。
■リーグカップにかけるファンの期待
試合はパリサンジェルマンの本拠地、パルク・デ・プランスにほぼ満員の3万5000人の観衆を集めてキックオフされた。この観客の数字は直前の週末に行われたリーグ戦のモナコ戦と同じ数である。シーズン当初から対戦相手と日時があらかじめ決まっており、多数のシーズンチケットホルダーの存在により安定的に観客動員ができるリーグ戦とは違い、カップ戦は観客動員に苦労するのが普通である。その中でリーグ戦と同じ集客をしたこの日のパリサンジェルマンには、リーグカップで優勝という夢を追うファンの気持ちが表れている。
■マリオ・ジェペス、パウレタのゴールで前半を折り返す
そのファンの期待に応えたのは昨年のキリンカップでコロンビア代表の主将として訪日したマリオ・ジェペスである。昨季の訪日で日本の皆様にもすっかりおなじみになった選手であり、2002年の初めにアルゼンチンのリバープレートからナントに移籍し、フランスリーグで7シーズン目を迎えるコロンビア代表選手が31分に先制点をあげる。ジェペスは2004年のリーグカップではナントに所属し、決勝でソショーに敗れており、今度こそ栄冠を獲得したいと言う気持ちが先制点を生んだのであろう。
そして選手としてパリサンジェルマンで最も期待されるのがカップ戦に滅法強いパウレタである。このポルトガル代表選手はパリサンジェルマンに移籍してきて以来、リーグ戦では1試合平均得点が0.46であるのに対し、カップ戦では1試合平均得点が0.96と2倍以上の得点力を誇っているのである。前半終了間際の43分にはCKからのクリアミスをパリサンジェルマンの選手がつなぎ、ゴール前に控えていたパウレタがヘッドで追加点を上げ、前半を折り返す。
■GKミカエル・ランドローのミスにより詰め寄られるも勝利を収める
しかし、後半の73分、パリサンジェルマンのGKミカエル・ランドローがイージーミスで自らのゴールにボールをパンチングしてしまう。このあたりが、今季パリサンジェルマンがリーグ戦で低迷している一因であろう。1点差に迫られ、パリサンジェルマンのファンの気持ちは急転する。
そのファンの気持ちを再び安堵へと変えたのが79分のベルナール・メンディであった。メンディが3点目を上げ、突き放す。オセールはロスタイムにシーズン途中にソショーから移籍してきたジュリアン・ケルシアが見事なボレーシュートを見せて1点差に再び迫る。しかし、すでに時間はほとんど残っておらず、パリサンジェルマンは2000年以来8年ぶりに決勝進出、1998年以来の優勝を目指すのである。(続く)