第834回 パリサンジェルマン、リーグカップを制す(2) 降格線上のランスも決勝進出

■カップ戦で強さを誇るパリサンジェルマン

 前回の連載ではリーグカップの準決勝のパリサンジェルマン-オセール戦を紹介した。決勝に進出したパリサンジェルマンは、国内リーグでは振るわないが、カップ戦では強く、リーグカップについては1995年と1998年に優勝、2000年に準優勝、そしてフランスカップでは過去10年間だけで1998年、2004年、2006年に優勝、2003年に準優勝とカップ戦での強さは追随を許さないのである。

■初タイトルを狙う松井大輔のルマン

 そしてその翌日の2月27日に行われたもう1つの準決勝がルマン-ランス戦である。ルマンのリーグ順位はこの段階で4位、このままでリーグ戦を終了してもUEFAカップに出場することはできるが、1902年に創立して以来、これまでタイトルを獲得したことがない。このリーグカップは一昨年、昨年と準決勝に進出しており、今年で3年連続での準決勝進出、なんとしてもタイトルが欲しいところである。また、日本の皆様にとっては松井大輔の活躍も期待されていることであろう。

■唯一のリーグ優勝から10年後の今季は苦戦しているランス

 一方のランスはリーグ戦で17位、18位以下のチームが2部に降格することからパリサンジェルマン同様、危機に瀕する中での準決勝進出である。このランスもまた1906年創立と言う長い歴史を持つが、初タイトルは自国開催のワールドカップを控えた1997-98シーズンのフランスリーグである。そしてその翌年の1999年にはリーグカップを獲得しているが、それ以来タイトルはない。ただしタイトルはないものの、常にリーグでは上位に食い込み、欧州カップの常連となっている。1998年11月25日にはチャンピオンズリーグでアーセナルとウェンブリー競技場で対戦し、1-0で勝利を収め、フランスのチームとして初めてこのサッカーの聖地で勝利をあげている。また2000年にはUEFAカップで準決勝に進出している。
 しかしながら今季はインタートトを勝ち抜いて出場したUEFAカップでは1回戦で敗退しており、国内リーグでは下位低迷、そしてフランスカップでもベスト32決定戦で2部のニオールに敗れている。このフランスカップ敗退を機に、ジャン・ピエール・パパン監督の片腕としてダニエル・ルクレルクをスポーツディレクターとして迎え入れる。ルクレルクは1998年のリーグ優勝の際の監督であり、ウェンブリーでの勝利、そして1999年のリーグカップの際も、ルクレルクがランスを率いていたのである。

■ゴールラッシュの乱戦を制したランス

 名将の古巣への復帰はあるものの、ホームチームのルマンが試合前は優勢を伝えられていた。予想通り、先制点は23分、ルマンのジェルビーニュがゴールに押し込む。これがゴールラッシュの始まりであった。36分にはランスのFKに対し、ルマンのCFであるトゥーリオ・ドメロがクリアミスし、自ゴールに蹴りこんでしまう。そして前半も終了間際となった44分にルマンのハッサン・イエブダがジェルビーニョのパスを得点に結びつけ、リードする。しかし、前半ロスタイムにはランスのロイック・レミが同点ゴールを決めて2-2でハーフタイム、試合は混戦模様となった。
 そしてこのゴールラッシュは後半が始まっても止まらなかった。52分にはランスのアルーナ・ダンダンがセンタリングを勝ち越し点に結びつけ、この試合初めてランスがリードする。そして64分にはルマンのGKペレがミスをしてオウンゴール、前夜のパリサンジェルマンのミカエル・ランドロー同様、GKのオウンゴールとなった。逆転したランスは2点のリードを奪ったが、瞬く間にルマンは追いついた。66分には日本のファン待望の松井のゴール、そして67分には前半にオウンゴールを献上したドメロが今度は本来のゴールにシュートを決めて、ルマンは2点のビハインドをわずか3分で埋めてしまったのである。ここで勢いに乗るルマンが優勢かと思われたが、ここからスコアは動かず、後半も終了し、4-4と両チームとも大量得点を取り合っての延長戦入りとなる。振り返ってみれば8得点は23分から67分までに集中した。
 後半の半ば以降は得点が生まれず、延長戦に入っても無得点が続き、PK戦かと思われた118分、51分ぶりにゴールが生まれる。ランスのシディ・ケイタが勝ち越しとなるゴールを決め、ランスは5-4と乱戦を制し、決勝進出を決めたのである。(続く)

このページのTOPへ