第835回 パリサンジェルマン、リーグカップを制す(3) スタッド・ド・フランス黎明期を盛り上げた両チーム

■欧州の頂点へつながっているリーグカップ

 今季最初のタイトルとなるリーグカップ決勝は3月29日にパリサンジェルマンとランスという顔合わせになった。これまでの本連載で紹介している通り、パリサンジェルマンは1998年、ランスは1999年に優勝しており、それ以来の優勝を目指す。リーグカップはフランスリーグ、フランスカップに次ぐ第三のタイトルとして定着してきた。リーグカップの特徴としては、準々決勝以降は全試合が地上波のテレビで放映され、優勝賞金も200万ユーロと多額である。
 このような経済的な面は各クラブにとって大きな魅力であるが、フィールド上の選手にとっては優勝チームにはUEFAカップの出場権が与えられることが最大の魅力であろう。欧州三大カップが再編成されてカップウィナーズカップがなくなった現在、欧州への位置と言う点ではフランスカップと同じ地位にある。さらに、3月末に決勝が行われることから、欧州カップへのチケットを真っ先に確保することができることも各クラブの第三のタイトルへの意欲をかき立てている。

■聖地・スタッド・ド・フランスで決勝が行われるリーグカップ

 そして忘れてはならないのが、決勝の舞台がスタッド・ド・フランスということである。10年前の自国開催でのワールドカップに向けて完成したこの競技場は、サッカーの世界ではフランス代表の新たな本拠地となり、ワールドカップ優勝をはじめとする数々の輝かしい伝説の舞台となってきた。
 代表チームの本拠地と言う点ではラグビーもサッカーと同様であるが、ラグビーの場合、クラブチームがしばしばリーグ戦を行っている。一方のサッカーのリーグ戦に関しては1部リーグの試合はようやく今季初めて開催されただけであり、クラブチームがこのサッカーの聖地で試合を行うのはフランスカップとリーグカップの決勝だけであり、その年に2度しか門戸が開かれていないチャンスである。リーグカップの決勝はフランスのクラブに所属する選手にとっては夢の舞台である。

■スタッド・ド・フランスで初の勝利チームとなったパリサンジェルマン

 このスタッド・ド・フランスに初めてクラブチームとして登場したのは、1998年4月4日のリーグカップ決勝のファイナリストとなったパリサンジェルマンとボルドーである。この試合は延長でも決着がつかず、PK戦を制したパリサンジェルマンがスタッド・ド・フランスで初めて勝ち名乗りを受けたクラブでとなった。そして同年のフランスカップ決勝は5月2日に行われ、この組み合わせがパリサンジェルマン-ランス戦であった。つまり、今年の決勝はスタッド・ド・フランスに会場を移した初年度のカードと同一のカードである。10年前の戦いはリーグチャンピオンのランスとリーグカップ勝者のパリサンジェルマンが二冠目をかけて戦ったが、パリサンジェルマンが2-1で勝利し、二冠を獲得するとともに、スタッド・ド・フランスで連勝を果たしているのである。実はこのリーグカップの準決勝でランスはパリサンジェルマンに1-2と惜敗しており、リーグチャンピオンのみの一冠に終わったランスは残りの二冠も惜しいところで逃したのである。

■2番目の勝利チームとなったランスも10周年の決勝に登場

 フランスがワールドカップを制して迎えた翌年、リーグカップの決勝にランスは進出し、メッスと対戦する。この試合でダニエル・モレイラのあげた1点を守りきり、ランスはリーグカップ初優勝を果たし、パリサンジェルマンに続いてスタッド・ド・フランスで勝利をあげた2番目のクラブチームとなったのである。
 今年はスタッド・ド・フランスが開業して10周年と言う節目の年である。開業初年にサッカーのワールドカップが開催され、フランスが優勝し、大きな盛り上がりを見せた。しかし近年はサッカーのフランス代表は安定した成績を残しているものの、フランス代表の試合は空席が目立つ。方や、ラグビーは代表チームの試合は常に満員と言う状態が続くだけではなく、フランスリーグの試合は毎回8万近くの観衆を集めている。10年前にサッカークリックで「フランス・サッカー実存主義」の連載当初、このスタッド・ド・フランスの主について複数回にわたり取り上げたが、近年はその主人公はラグビーであると言わざるを得ない。10年前のスタッド・ド・フランスを沸かせたパリサンジェルマンとランスがサッカーを復権させるような試合を期待したいものであるが、予期せぬ事件が起こったのである。(続く)

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