第968回 国内カップ、フィナーレ(4) 最多となる3度目のリーグカップ優勝を果たしたボルドー
■カップ戦に吹いたブルターニュの風
これまでの3回の本連載ではフランスカップの決勝までの足取りを紹介してきたが、今回はリーグカップ決勝の模様を紹介したい。前回の本連載ではホームチームが有利と言われた準決勝のグルノーブル-レンヌ戦、トゥールーズ-ギャンガン戦のいずれもアウエーチームが勝利し、風が吹いたと表現した。この風は今年のフランスサッカーのカップ戦の世界にはブルターニュの風が吹いたのである。レンヌもギャンガンもブルターニュ地方のクラブであり、またリーグカップで決勝に進出したバンヌもブルターニュのチームであり、カップ戦のファイナリスト4チームのうち、リーグカップの決勝進出チームであるボルドーを除く3チームがブルターニュのクラブなのである。
本連載の第936回でリーグカップの準決勝について紹介しているが、この2試合も驚きであった。カップ戦のスペシャリストであるパリサンジェルマンがボルドーに敗れ、2部のバンヌが1部にニースに勝利しているが、今思えば、ボルドーはこのころから連勝街道を驀進し、バンヌにはブルターニュの風が吹いたのであろう。
■プロ化初年度に決勝に進出したバンヌ
4月25日のリーグカップ決勝を迎える段階で、ボルドーは首位マルセイユを勝ち点差2で追う2位の座につけており、一方のバンヌは2部で10位と中位にとどまっている。しかしながら、スタッド・ド・フランスに集まった7万5000人の観衆の半数以上の4万人はバンヌの応援団であった。これはバンヌというクラブの歴史を振り返ってみればこれだけの注目が集まるのは当然であろう。クラブが設立したのは地元開催のワールドカップの直前の1998年5月のことである。3部に相当するナショナルリーグに昇格したのが2005年のことである。そして2007‐08シーズンのナショナルリーグで優勝し、2部に昇格する。しかし、昇格を決めた段階ではバンヌはまだプロチームとしてのステータスを得ておらず、2部参戦に向けてプロチームとしてステータスを変えたばかりであり、プロチーム1年生がリーグカップの決勝に進出したのである。リーグカップにはプロチームしか出場できないため、バンヌは初出場で決勝進出という極めて珍しいケースとなった。
さらに、バンヌの監督はステファン・ル・ミミャン監督は弱冠34歳、フランスの2部以上のチームで一番若い監督である。チームの急成長も監督の若さを見てもバンヌはシンデレラのようなチームであるが、ブルターニュの風を感じざるを得ない。
■最多の決勝進出回数を誇るボルドー
一方のボルドーであるが、今回が5回目の決勝進出である。リーグカップが本格化してから今年で15回目であり、5回の決勝進出はもちろん最多記録である。そして過去4回の決勝進出のうち、2002年と2007年は見事栄冠を獲得しており、3度目の優勝を獲得したいところである。ボルドーが優勝すれば、優勝回数でパリサンジェルマンと並ぶことになるのである。ボルドーの優位は過去の実績だけをとらえているわけだけではなく、このところの国内での戦いの安定ぶりが高く評価されている。3月14日以来、国内リーグでは5連勝、リーグカップ決勝直前の第32節ではリヨンを下し、2位に浮上している。
■試合開始直後からゴールラッシュ、ボルドーが3度目の優勝
さて、試合は予想通り立ち上がりからボルドーの一方的な試合展開となった。3分にベンデルが先制点、10分にはマルク・プラニュスが追加点、さらに14分にはヨアン・グルクフのパスを受けたヨアン・グフランがゴールを決めて、試合の6分の1が終了した段階でボルドーは3-0と勝利をほぼ確実にする。さらに40分には3点目とは逆にグフランのパスをグルクフが決めて4-0とリードを大きく広げた。そして、後半はスコアは動かなかったものの、ボルドーは4-0と大勝し、3回目のリーグカップを獲得し、来季のヨーロッパカップの出場権を獲得したのである。そしてボルドーにはこれよりも大きなタイトルを狙うことになるのである。(続く)