第1055回 曲がり角のリーグカップ (1) ビジネス目的が引き起こした過密スケジュール

■急成長した第3のタイトル

 前回までの本連載では1部勢が新たに参戦したフランスカップのベスト32決定戦を取り上げてきた。32試合中12試合が延期となり、ジャイアントキリングも少ないことからわずか2回の連載で終わってしまったが、このベスト32決定戦の行われた次の週の半ばに行われるのがリーグカップのベスト8決定戦である。
 リーグカップはフランスリーグ、フランスカップに次ぐ第3のタイトルであり、本格的なタイトルとなったのは1994-95シーズンからと歴史はまだ15年程度と言う若いタイトルである。しかし、優勝チームに欧州リーグ(昨季まではUEFAカップ)出場権が与えられること、そして日程的には他の2つの伝統的なタイトルよりも早く行われること、さらに地上波でのテレビ中継が多いこと、このような理由で入場者数、テレビ視聴者数などもフランスカップと比肩するレベルになり、急成長してきたタイトルである。

■シーズン終盤の過密スケジュールを避けるために決勝の日程を前倒し

 ところが、近年曲がり角を迎えている。1つの課題が、ビジネス面であり、テレビの視聴者数や入場者数である。そしてもう1つの課題が競技面の問題である。リーグカップは国内ではリーグ戦、カップ戦に次いで創設されたが、これ以外にクラブレベルでは欧州カップ(創設時にはチャンピオンズリーグ、カップウィナーズカップ、UEFAカップ、現在はチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグ)、そして代表の試合がある。選手の過密スケジュールを避けるために様々な工夫がなされてきているが、最初に矛先にあがるのがこのリーグカップである。
 リーグカップも以前は5月に決勝が行われていた。しかし、クラブにとっては重要な試合がシーズン終盤に集中することを避けるために、2003-04の大会は4月半ばに決勝が行われた。そして欧州選手権イヤーの2007-08シーズンには3月末に決勝が行われるようになり、2008-09シーズンの決勝は4月25日に行われたが、ワールドカップイヤーの今年の決勝は3月27日に行われる。

■国内の試合数が最大7試合となる1月

 2003-04シーズンから昨年までは、年が改まる前にベスト8が決定し、年が変わってからは準々決勝から決勝までの3試合を行うと言うのが過去数年の日程であった。ところが、今年のベスト8決定戦は年が改まった1月12日に行われ、準々決勝は1月26日、準決勝は2月2日、そして決勝が3月27日である。年初のほぼ1月の間に3試合が行われると言うハードなスケジュールである。さらに、1月はフランスカップはベスト32決定戦とベスト16決定戦が行われる。また、リーグ戦は第20節から第22節までの3試合が予定されている。
 つまり、カップ戦で順調に勝ち進めば国内の試合だけで1月には7試合を戦う。年末年始の中断、2月2日のリーグカップの準決勝も考慮すれば、ほぼ1月間に8試合を戦うことになり、フランス代表の国際試合はないものの、過密スケジュールになるのである。

■過密スケジュールが代表戦にも影響

 この過密スケジュールの1つの原因がリーグカップである。フランスにおいて、かつてはリーグカップはシーズン前に行われ、本拠地ではない都市で開催するなど、シーズン前の若手選手の育成、そしてサッカーの普及を主眼としていた。1994年以降、リーグカップはUEFAカップ(欧州リーグ)につながるタイトルとなり、多額の賞金もかけられ、テレビ中継も行われるようになった。サッカーを論じる上で、普及、強化、ビジネスと言う3つの観点があるが、過去のリーグカップが普及と強化を目的としていたのに対し、現在はビジネスを主目的とするように変わったのである。
 2007年3月には厄介な問題が起こった。31日に決勝戦が行われ、リヨンとボルドーで争われた。しかし、その直前にフランス代表の試合が2試合行われ、24日に欧州選手権予選のアウエーのリトアニア戦、28日にホームで親善試合のオーストリア戦が行われた。当時のリヨンは7人も代表に送り込んでおり、リーグカップ決勝で代表疲れの残るリヨンはボルドーに敗れてしまったのである。逆に代表戦ではリヨンの選手に気を遣いながらの起用となったのである。ちなみにレイモン・ドメネク監督はリヨンの監督を務めたこともある。
 このようにビジネス目的となったリーグカップが過密スケジュールと言う結果になったのである。(続く)

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