第1056回 曲がり角のリーグカップ (2) 国内に3つのタイトルがあるフランス、イングランド、日本

■リーグ戦とカップ戦しかないスペインとイタリア

 前回の本連載では国内3番目のタイトルであるリーグカップが過密スケジュールを引き起こしていることを紹介したが、欧州の他のサッカー主要国であるイングランド、イタリア、スペイン、ドイツの状況について紹介しよう。
 まず、リーグ戦のチャンピオンとカップ戦のチャンピオンが対戦するスーパーカップを除くと、国内のタイトルがリーグ戦とカップ戦しかないのがスペインとイタリアである。スペイン、イタリアともリーグのレベルは有数であり、ビッグクラブが目白押しであり、スペインでは国王杯、イタリアではコッパイタリアと言うカップ戦が存在する。

■リーグカップに近いスペイン国王杯とコッパイタリア

 ところがこれらのカップ戦は協会に登録しているチームであればどのチームにも参加資格が与えられるものではない。
 スペインの国王杯は1部と2部に所属するチームについては全チームが出場資格があり、3部リーグは上位チーム、地域別に行われている4部リーグは優勝チームにしか出場資格がない。すなわちオープンカップではなくリーグカップに近い大会方式である。
 イタリアのコッパイタリアも同様である。3部に相当するセリエC1までのチームに加え、セリエC2やセリエDからは少数のチームのみが参加する形式であり、オープンカップ方式ではなくリーグカップ方式である。昨年の参加チームは78チームである。
 このようにラテン系の2か国にはリーグ戦とリーグカップに近いカップ戦だけがタイトルとして存在している。

■スーパーカップを拡大したドイツのリーグカップ

 そして隣国ドイツの状況もユニークである。ドイツにはドイツカップというカップ戦がある。これは各地域の代表とブンデスリーガの1部と2部の全チーム、3部の上位チームを交えて行うカップ戦であり、各地域の代表を交えていると言う点でオープンカップである。
 ドイツには第3のタイトルであるリーグカップが存在する。しかし、これはフランスのリーグカップ、スペインの国王杯やイタリアのコッパイタリアとは大きく様相を異にする。シーズン前に開催され、前年度のリーグ戦上位4チーム、ドイツカップの優勝チーム、2部リーグの優勝チームというわずか6チームで争われる大会である。1997年にそれまでのスーパーカップに代わる大会として始まった。賞金額は大きいが、優勝しても欧州カップに出場できるわけではない。欧州選手権やワールドカップの本大会と時期が重なることから、シーズンオフの期間の過密日程が問題となった。欧州選手権が開催された2008年からは開催されず、ブンデスリーガとドイツカップのそれぞれの優勝チームの争うスーパーカップになっている。

■三大タイトルがそろっているイングランドと日本

 結局、欧州のサッカー大国の中でリーグ戦、カップ戦(オープンカップ)、リーグカップと3つのタイトルがそろっているのはフランスとイングランドだけである。イングランドのリーグカップは1部に相当するプレミアリーグの所属する20チームに加え、その下部のリーグであるフットボールリーグのチャンピオンシップ、リーグ1、リーグ2に所属する72チームも参加する。実質4部に相当するリーグまでのチームの合計92チームによって争われる。決勝戦はウェンブリー競技場で行われ、優勝チームには欧州カップ出場権が与えられ、50年と言う長い歴史を誇る。
 リーグカップの規模は違うにせよ、フランスとイングランドにはリーグ戦、フランスカップ、リーグカップと3つのタイトルがある。そしてリーグカップの決勝戦はカップ戦同様にその国を代表するスタジアムで行われ、優勝チームは欧州カップ戦への出場権が与えられる。
 三大タイトルがあり、リーグカップが欧州の舞台につながっていると言う点でフランスとイングランドは同じであり、これは日本も同じである。イングランド、フランス、日本の3か国はこの点よく似ているが、リーグカップの位置づけと言う点でフランスは他の2か国と大きく異なっているのである。(続く)

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