第2604回 今季が最後となるリーグカップ(1) テレビ放映権料がネックで今年で廃止

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■様々な工夫を凝らしてきた第三のタイトル、リーグカップ

 フランスでは国内リーグ戦、カップ戦に加え、リーグカップが行われ、優勝チームにはヨーロッパリーグの予備戦への出場権が与えられている。リーグカップには1部2部のチームに加え、前年まで2部に在籍したチームも出場し、40数チームがエントリーする。そしてチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグに出場するチームはシードされ、12月下旬に行われるベスト8決定戦から参戦する。1月には準々決勝、準決勝が行われ、4月に決勝が行われる。この大会は1960年代から断続的に行われてきた。当時は夏に地方都市で集中的に開催されているなど不規則な形で行われてきたが、1994-95シーズンからはほぼ現在の大会形式で行われるようになった。
 日程的には三大タイトルの維持が難しいという環境にあり、同じノックアウト方式のカップ戦であるフランスカップに対して魅力を高めるべく、日程面などを工夫するとともに、テレビ中継が豊富に行われ、クラブレベルの大会の中では国内外通じて最も一般のファンがアクセスしやすい環境にある。また、決勝戦も従来はパルク・デ・プランス、スタッド・ド・フランスというパリ並びにその近郊のフランスを代表するスタジアムで行われてきたが、3年前からリヨン、ボルドー、リールという新装なった巨大スタジアムを転戦することになった。

■昨年9月18日のフランスプロサッカーリーグの理事会、総会で廃止が決定

 しかし、このような努力にもかかわらず、リーグカップは今季が最後という決定が下された。決定が下されたのは昨年9月18日に開催されたフランスプロサッカーリーグの理事会である。フランスプロサッカーリーグは国内リーグ戦に加え、このリーグカップを主催している。今季が最後というのは2020年以降のテレビ放映権の調整がつかなかったからである。前年の12月に2020年から2024年までの放映権料についての提示を受けたが、これをフランスプロサッカーリーグ側が受け入れなかった。現在は地上波のフランステレビジョン2波と契約型のカナルプルスから2,390万ユーロの放映権料を受け取っているが、フランステレビジョンもカナルプルスも現行の契約を受け入れる意思はなく、交渉が不調に終わったと言える。

■代替策も検討されたが、大差で廃止が可決

 テレビ放映権料交渉が難航することは一昨年の12月から予見され、上位8チームだけを集めて年末年始に開催する方法、クラブの所在によって東西南北に分けてトーナメントを行う方法なども検討されたが、理事会では大差で廃止が可決された。理事22人のうち廃止に賛成したのは16人、残る6人は棄権した。さらに理事会後の総会では66パーセントが廃止に賛成した。
 廃止の理由としてはテレビ放映権料収入が期待できないことに加え、国内外の過密日程を緩和したいこと、そして通常のリーグ戦での収入が非常に大きくなったため、リーグカップの収入は魅力的ではなくなってきたということである。フランスプロサッカーリーグは状況が整えばこのタイトルを復活させるとしているが、このようにクラブ側にとってメリットの少なくなったタイトルを復活させることは難しいであろう。

■リーグカップが存続するイングランド、日本

 1994年にこの大会を当時のフランスプロサッカーリーグの会長はノエル・ルグラエである。現在はフランスサッカー連盟の会長となっているルグラエはこの決定に対し、感傷的になりながらも時代の変化を受け入れている。1990年代にクラブの試合が地上波を見ることは貴重な機会であった。しかし、現在は地上波以外のテレビの受信方法が多様化し、地上波局にとっても国内サッカーは魅力的なコンテンツではなくなってきた。また、過密日程を理由にリーグカップがない国の方が今では多数派であり、欧州の主要国で三大タイトルがあるのはイングランドとポルトガルくらいである。世界に目を広げても強豪国では日本くらいである。これも富の蓄積があるからこそである。今後、世界のサッカーは富も選手もイングランドと日本に集中していくのであろうか。(続く)

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