第38回 マルティニック、ゴールドカップで大健闘(5) 前回優勝国のカナダに惜敗
■決勝トーナメントでカナダと対戦
FIFA未加盟国としてFIFA主催の大会の最終ラウンドで白星をあげたマルティニック。その歴史的勝利の4日後に決勝トーナメントでカナダと対戦した。
カナダは今回のワールドカップの出場権を獲得することはできなかったが、1986年のワールドカップ・メキシコ大会に出場しており、その際はフランスと同じグループCでフランス、ハンガリー、ソ連相手に1点も取れず3連敗している。しかし、前回のゴールドカップの覇者であり、昨年、韓国と日本で開催されたコンフェデレーションズカップには北中米カリブ地域を代表して出場し、ブラジルと0-0のドローに持ち込んだ試合は世界中に衝撃を与えた。
■三すくみの結果、抽選でカナダがグループ首位に
カナダは今回のゴールドカップではグループリーグでハイチ、エクアドルと同じグループとなり、カナダは初戦のハイチ戦は2-0と勝利を飾り、ハイチはその2日後、エクアドルを2-0と破る。そしてグループリーグ最終戦のカナダ-エクアドル戦は最後の5分間にエクアドルが2点を入れて、カナダは0-2で敗れる。3チームとも勝ち点、得失点差、得点、失点とも同じことから抽選の結果、カナダがグループ1位、ハイチがグループ2位となる。その結果、今大会の最大の驚きであるマルティニックと準々決勝で対戦することになった。カナダの監督はホルガー・オジェック、東洋の赤い悪魔・浦和レッドダイヤモンズを率いて黄金時代を築いたことは日本の皆さんの記憶に新しいことであろう。カナダ有利の前評判が高かったが、カナダのオジェック監督はグループリーグでのカナダの試合内容が決して満足のいくものではなかったという厳しい評価をするとともに、グループリーグをカナダと同じマイアミで戦ったマルティニックの試合も観戦しており、「決して侮れない相手である」と試合前にコメントしている。マルティニックは今大会のためにフランスから3人の選手を呼び戻しているが、カナダはイングランド、スコットランド、ブラジルなどから多くの選手を呼び戻している。
■延長戦、PK戦の末、惜敗
マイアミのオレンジボウルには約1万5000人の観衆が集まるが、判官びいきでマルティニックを応援する。前半は見せ場の少ない試合となり、カナダが試合を支配しながらも両チーム無得点でハーフタイムを迎える。後半に入り、61分、マルティニックのMFのジャン・ビクトール・ラブリルが悪質なファウルで一発退場。10人になったマルティニックの苦戦が予想されたが、思わぬプレゼントがその2分後にやってくる。ロドルフ・ラノのあげたクロスボールをカナダのDFマーク・ロジャースが誤って自ゴールに入れてしまい、マルティニックが先制点を奪ったのである。しかしながら、試合開始から主導権を握りつづけていたカナダはエースのケビン・マッケナが同点ゴールを73分にたたきこむ。試合は結局延長までもつれこみ、120分が経過した段階でも両チーム決勝点を奪うことはできず、PK戦となる。PK戦はマルティニックが先にペナルティスポットにボールを置く。カナダの2人目がミスした以外は次々と成功させ、リードしたマルティニックの5人目のキッカーはレンヌから呼び戻したファブリス・ルーペルネ。しかし、ルーペルネのキックはバーの上を越え、カナダの5人目が成功させ、勝負は6人目以降のキッカーに委ねられることになった。6人目は双方成功、マルティニックの7人目はキャプテンのパスカル・リナ。リナのキックはポストをたたく。カナダの7人目ジャソン・ベントが成功させ、マルティニックは準々決勝敗退となったのである。
■第二のジャンビオンの出現を予感させる大健闘
惜しくもパサディナのローズボウルでの準決勝に進出することができなかったマルティニックであるが、今回のゴールドカップは非常に収穫の多い大会であった。1993年大会のメキシコ戦での0-9の敗退はゴールドカップ史上のワースト記録であるが、今回の大健闘はその汚名を返上するにふさわしく、カリブのサッカー史に新たな1ページを刻んだ。大会のベスト11にもストッパーのルドビック・ミランドが控え選手(6人)として選出された。準々決勝で敗れたカナダとの差は経験の差であり、今後カリブカップだけではなく試合を重ねれば、人材の宝庫であることから期待はできる。そして第二のジェラール・ジャンビオンが出現した時に、マルティニックのユニフォームを着るのかフランス代表のユニフォームを着るのか、想像をするだけで興味は尽きないのである。(この項、終わり)