第46回 伝統国スコットランドと対戦(3) フランスとスコットランドの対戦史

■スウェーデン・ワールドカップ大会で決勝トーナメント進出を決めた勝利

 過去、フランスとスコットランドの対戦は12回。最初の対戦はウルグアイで開催された第1回ワールドカップを控えた1930年5月18日の親善試合。1938年のワールドカップ・フランス大会のメイン会場となるパリ北西部のコロンブにスコットランドを迎えるが、0-2で完封負け。2年後にも同じくコロンブに迎え、1-3と連敗する。初勝利をあげたのは欧州に平和が訪れた第二次世界大戦後の1948年5月23日。コロンブで3-0と大勝する。
 しかしながら、その後、負けが続き、いよいよ最初のタイトルマッチでの対戦を迎える。最初のタイトルマッチでの対戦となったのは1958年のワールドカップ・スウェーデン大会のグループリーグ。フランスはグループ2でパラグアイ、ユーゴスラビア、スコットランドと対戦する。フランスは初戦でパラグアイに7-3と大勝し、ジュスト・フォンテーヌは3得点をあげ、いまだに破られることのない大会最多得点記録(13得点)に向けた好スタートを切った。ところが第2戦ではフォンテーヌが2得点をあげながら、ユーゴに終了間際に決勝点を奪われ2-3で敗れる。そして決勝トーナメントへの関門となったのがスコットランド戦である。得失点差の関係で引き分け以上ならば決勝トーナメント進出、という条件ではあるが、過去の対戦成績を考えると楽観はできない。しかしながら、闘将アルベール・バトー率いるフランスイレブンは試合開始からスコットランドを圧倒、前半22分にレイモン・コパがボレーで先制点、前半終了間際の45分にはフォンテーヌが3試合連続となるゴールで追加点、後半のスコットランドの反撃を1点にとどめて、決勝トーナメントに進出し、準決勝でペレのブラジルに敗れるが、3位に入ったのである。

■親善試合での準備も実らず、グラスゴーで沈む

 ワールドカップ、欧州選手権の本大会での対戦はこの1回だけであり、それらの予選でも1度しか同じグループになったことはない。それが1990年ワールドカップ・イタリア大会予選である。1982年ワールドカップ・スペイン大会4位、1984年欧州選手権フランス大会優勝、1986年ワールドカップ・メキシコ大会3位と好成績を残しながら、1988年欧州選手権西ドイツ大会では予選落ちを喫したフランスは1990年のワールドカップ・イタリア大会出場を目指す。現在チュニジア代表を務めるアンリ・ミッシェル率いるフランスはユーゴスラビア、スコットランド、ノルウェー、キプロスと同じグループになり、上位2チームにイタリア行きのチケットが渡される。まずノルウェーにホームで辛勝したが、アウエーとはいえキプロスにまさかの引き分け、監督がミッシェル・プラティニに交代するが、ベオグラードで2-3と敗れ、1989年3月8日にグラスゴーでスコットランドと対戦する。フランスはスコットランド戦を前に仮想スコットランドとして北アイルランド、クラブチームのアーセナルと親善試合を行うが、北アイルランドと引き分け、アーセナルに敗北と、悲観論の中でスコットランド戦の日を迎えた。出場した13人の選手のうち代表歴が一桁という選手が9人というメンバーの入れ替えを図ったものの功を奏することはなく、スコットランドのエースであるモーリス・ジョンストンに2点を取られ、6万5000人の大観衆を歓喜させるにとどまった。前半戦を終了して1勝1分2敗、後半戦のスタートのホームでのユーゴスラビア戦もスコアレスドロー、アウエーに乗り込んだノルウェー戦もドロー、イタリア行きはほぼ絶望となった。

■スコットランドのアルプス越えをパリで阻止

 そして1989年10月11日、引き分け以上でイタリア行きが決まるというスコットランドをパルク・デ・プランスに迎える。タータンチェックのスカートにスコッチ片手の大応援団がパリに集結する。フランスはエースのジャン・ピエール・パパンと精神的支柱のマニュエル・アモロスを欠く陣容。しかしながら試合はフランスが支配し、26分にディディエ・デシャンが先制点。ストッパーのイボン・ルルーが負傷のため前半で退き、57分には左サイドバックのエリック・ディメコが2回目の警告で退場となり、守備の要を失う。(ルルーはこの試合が選手生活最後の試合となり、ディメコはこの後しばらく代表から離れる)しかし、63分にはエリック・カントナがパパン不在の試合の主役は自分だ、と誇示せんばかりの追加点、終了間際の88分にはジャン・フィリップ・デュランのシュートがスコットランドの選手にあたりオウンゴールで3点目。目の前でのスコットランドの予選突破を阻止する快勝であった。(最終的にはスコットランドは11月15日にノルウェーと引き分け、本大会出場を決める)その後、親善試合でサンテエチエンヌとグラスゴーで対戦するが、いずれもフランスが勝ち、通算成績は6勝6敗のタイとなっているのである。(続く)

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