第52回 東欧の巨人ロシアと対戦(4) 二度にわたりフランスの西ドイツ行きを阻んだソ連
■ワールドカップ・西ドイツ大会の予選で敗退
揺れ動くソ連との関係の中で4回の親善試合を行ってきたフランスが、初めてソ連とタイトルマッチで対戦することになったのが1974年ワールドカップ・西ドイツ大会予選である。1972年には東西の枠を越えて欧州全域における安全保障問題を協議する場として欧州安全保障協力会議(CSCE)が発足している。
1974年ワールドカップ予選でフランスはソ連、アイルランドと同じ組に入った。まず1972年10月13日に最大のライバルであるソ連をパリに迎える。この試合はその後長い間フランス代表のホームスタジアムとなるパルク・デ・プランスが改装され、その柿落としとなる試合であった。この新スタジアムの改装を祝福するかのように、ジョルジュ・ベレッタが60分にあげたゴールをマリウス・トレゾールなどの守備陣が守りきって1-0というスコアでフランスは強敵ソ連に勝ち、幸先の良いスタートを切った。遠来のロシアにとってはまさに13日の金曜日とも言える結果になってしまった。
ところが、翌月にダブリンで行われたアイルランド戦で、ジャン・ミッシェル・ラルケのゴールで追いついたものの、1-2と黒星を喫する。年が変わった1973年5月19日のパリでのアイルランド戦、78分のセルジュ・シエーザの先制点も空しく、その5分後に追いつかれてドローに終わる。ライン川を越えるためのチケットはその1週間後のモスクワでのソ連戦の勝利が条件となった。モスクワのレーニンスタジアムには7万5000人の観衆がつめかける。フランスの守備陣もよく持ちこたえたが、終盤の81分と84分に失点し、0-2で敗れる。フランスは1勝1分2敗という成績で2回連続してワールドカップ本大会への出場を逃した。
その後従来のように1年かけてホームアンドアウエーで行うような親善試合ではなく、単発の親善試合を1977年、1980年、1983年とパリとモスクワで行うが、フランスは2分1敗と勝ち星を挙げることはできなかった。
■ワールドカップ・メキシコ大会でドロー
1986年のワールドカップ・メキシコ大会での対戦は両チームが国際大会の本大会での唯一の対戦である。この大会、フランスは前回大会で4位になっていることが評価され、シード国になる。同じグループCにはカナダ、ソ連、ハンガリーが入った。グループCはレオンとイラプアトで行われたがシード国のフランスは3試合ともレオンで試合を行うという優遇を受けた。最初の相手のカナダ戦はなかなかゴールが生まれな
い。終盤の79分、ゴールネットを揺らしたのは代表2試合目のジャン・ピエール・パパンであった。2試合目の相手は初戦でハンガリーに6-0と大勝したソ連である。この当時のソ連は2年後の欧州選手権で準優勝するメンバーが育ちつつあり、後にガンバ大阪で活躍することになるセルゲイ・アレイニコフもいたことから日本の皆様も記憶されていらっしゃるであろう。勝てば決勝トーナメント進出という試合は54分にロシアが先制する。フランスは決勝トーナメントのブラジル戦でヒーローとなるルイス・フェルナンデスがアラン・ジレスのパスを決めて同点に追いつき、ドロー。フランスもソ連も最終戦は勝ち、勝ち点で並んだが、得失点差でソ連がグループ1位となり、2位になったフランスは決勝トーナメントの1回戦でイタリア(グループAの2位)、準々決勝でブラジル(グループCの1位)という強敵と対戦することになり、これらの強敵を退け、準決勝では西ドイツに敗れたものの、3位決定戦でベルギーを破ったのである。
■欧州選手権・西ドイツ大会の予選で再び敗退
メキシコの余韻も覚めやらぬ1986年秋、欧州選手権・西ドイツ大会の予選で再びフランスはソ連と対戦する。9月の初戦でアウエーとはいえアイスランドとスコアレスドロー、10月11日にソ連をパリに迎える。両チーム無得点で試合終盤を迎え67分にイゴール・ベラノフがパルク・デ・プランスを沈黙させる。そして73分にはワールドカップでも得点をあげたバシリ・ラッツが追加点をあげ、フランスは完敗。フランスは11月のアウエーの東ドイツ戦もスコアレスドロー。年が変わり1987年になってアイスランドをホームで下したものの、ノルウェーにアウエーで完敗。9月9日にモスクワに乗り込んだ。後に日本で活躍するバジル・ボリ、ジェラール・パシがモスクワのレーニンスタジアムのピッチに立つ。先制点は13分のジョゼ・ツーレ、この1点を守りきればライン川を渡る可能性はあったが、77分に追いつかれ引き分けとなる。意欲を失ったフランスは残る試合も精彩を欠き、1勝4分3敗という前回大会のチャンピオンらしからぬ成績で日程を終了し、予選落ちする。そしてこれがソ連との最後の対戦となり、結局フランスのソ連との対戦成績は2勝6分4敗に終わったのである。(続く)