第128回 絹の道、女子ワールドカップへの道(3) 最終戦でウクライナに逆転勝ち、プレーオフ進出

■2位で折り返したフランス

 女子欧州選手権は昨年8月に始まり、昨年中に各チームが一通り対戦し、ノルウェー3勝、フランス2勝1敗、ウクライナ1勝2敗、チェコ3敗という成績で折り返す。フランスはノルウェーとの直接対決はアウエーであるが、是非とも首位の座を奪い返し、ワールドカップの出場権を確保したい。悪くとも2位に入ってプレーオフに望みを託したいところである。

■ワールドカップ開催を返上したストラスブールでチェコに快勝

 グループリーグの後半戦は4月20日のストラスブールでのチェコ戦から再開する。ストラスブールと言うと4年前のワールドカップでは立派なスタジアムを持ちながら、町が混乱する一過性のイベントよりも、落ち着いて市民全体がスポーツに親しむ環境を維持しつづける方が重要、ということで開催地を返上したと言う経緯がある。男女の違いこそあれ、フランス代表として素晴らしい試合をすることが、アルザスの市民から期待されている。
 レユニオンでの合宿、中西部での国際大会優勝の効果があり、フランスはキックオフ直後からリズムに乗り、5分にサンドリーヌ・スーベイランが先制、30分には豪州戦で国際大会の優勝を決めるゴールを上げたマリネット・ピションが2点目、そして39分にはステファニー・ムニェレ・ベゲがカウンターアタックで3点目を決める。後半開始早々の49分にはコーナーからガエル・ブルーアンが追加点。グループリーグ前半戦で3連敗のチェコは試合開始直前にPKで1点を返すのが精一杯、4-1とフランスが快勝し、首位奪還のかかるノルウェー戦に挑むことになったのである。

■ノルウェーに完敗、首位奪回に失敗

 アウエーのノルウェー戦は5月9日。ここまでノルウェーは4連勝(勝ち点12)、フランスは3勝1敗(勝ち点9)。ノルウェーは勝てば本大会出場を決めることになるが、フランスも勝てばノルウェーと勝ち点で並ぶことになる。しかもノルウェーは3日後の12日にはウクライナでのアウエーゲームが待っている。ホームでは完敗したフランスであるが、逆転を狙い気合十分。ところが、開始早々の3分にノルウェーに先制点を許す。精神力の充実したフランスは10分にエースのピションが同点ゴール。ピションはこれで3試合連続得点である。ところが、ここから強豪ノルウェーが本領を発揮する。先制点をあげたダニー・メルグレンが25分に勝ち越し点、55分にはハットトリックとなる追加点を決め、フランスは1-3で敗れ、5連勝となったノルウェーがグループ首位を確定し、中国行きのチケットを手に入れたのである。

■プレーオフをかけたウクライナとの直接対決を制す

 しかし、フランスも気落ちばかりしていられない。グループ2位に入り、プレーオフに一縷の望みを託すべきである。ところが2位確保に黄信号がともった。地元でワールドカップ出場を決めたノルウェーはその3日後、ウクライナで最終戦を戦う。この試合でノルウェーはウクライナと引き分け、この時点でウクライナは勝ち点を4とする。そしてウクライナは5月23日のアウエーのチェコ戦でも3-2と競り勝ち、勝ち点を7に伸ばす。試合消化数の微妙な違いが存在したとは言え、最大6ポイントの差があったフランスとウクライナの勝ち点差はわずか2となり、6月1日に2位の座をかけてフランスとウクライナは直接対決することになったのである。
 プレーオフ進出をかけた直接対決を前にフランスは合宿を行う。試合の3日前に国内線のパリの玄関であるオルリー空港に集合し、そこから試合が行われるシャトールーにバスで移動したのである。「シラノ・ド・ベルジュラック」「グリーンカード」などに出演し、フランスを代表する俳優のジェラール・ドパルデューの出身地であり、パリ・ダカール・ラリーや自転車レースの中継地として名高いこのフランス中部の小都市が決戦の地となったのである。
 試合前日の5月31日の昼過ぎにテレビで見た男子ワールドカップの開幕戦、フランス-セネガル戦はフランスが敗れる。彼女たちは男子の分まで、という気持ちで決戦の日を迎えた。ウクライナ戦は8000人の観衆を集め、キックオフされた。前半は両チーム無得点で、引き分け以上ならばプレーオフ進出となるフランスにとってはまずまずの展開。後半に入り51分、ウクライナにリードを許す。しかし、ピションが9分後同点ゴールを決めて、同点。このままスコアが動かなければフランスがプレーオフ進出となるが、ウクライナが勝ち越せば、ウクライナがプレーオフに進出する。そのようなスリリングな展開にピリオドを打ったのがチェコ戦で先制点をあげたスーベイランであった。スーベイランの73分の得点によって、フランスは勝ち越し、そのまま試合終了、フランスは2位を死守した。フランスはグループリーグで2位となった4チームで争われるプレーオフへの出場権をつかんだのである。(続く)

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