第129回 絹の道、女子ワールドカップへの道(4) デンマークにリベンジ、プレーオフ決勝へ
■プレーオフ1回戦はフランス-デンマーク、アイスランド-イングランド
フランスがグループ1で2位に入り、ワールドカップへのプレーオフの出場権を獲得した女子欧州選手権であるが、グループリーグを終了した段階でワールドカップへのチケットを獲得したのはノルウェー、スウェーデン、ロシア、ドイツの4か国である。一方、各グループで2位となり、プレーオフに進出したのはフランスのほかにデンマーク、アイスランド、イングランドである。プレーオフはまず、フランス-デンマーク、アイスランド-イングランドの2試合がホームアンドアウエー方式で行われ、その勝者がホームアンドアウエー方式で対戦し、欧州最後のチケットを争うことになる。
■因縁のデンマーク戦に向けて長期合宿
フランスとデンマークの対戦は第1戦が8月23日にフランスのランス、第2戦は9月15日にデンマークのオデンスで行われた。デンマークは女子サッカーの強豪であり、今までフランスと6回対戦しているが、対戦成績はフランスの1分6敗と全く歯が立たない。最新の対戦は前回の女子欧州選手権の本大会。両チームは昨年6月にドイツで行われたこの大会のグループリーグで対戦し、点の取り合いとなったが、フランスは試合終了直前に決勝点を奪われ、3-4で敗れている。そして、男子の話となるが、今年6月11日、ワールドカップの仁川での戦いは忘れられない。セネガルに敗れ、ウルグアイと引き分けたフランスはデンマークに2点差以上の勝ちならば決勝トーナメント進出であったが、デンマークが2点差で勝利をおさめてしまう。
フランスはデンマーク戦前に長期の合宿を行った。これは両チームの力関係だけではなく、コンディションの問題もある。男子と違い、女子の場合はほとんどの代表選手が国内のクラブに所属しているが、デンマークリーグが7月31日に開幕しているのにひきかえ、フランスリーグの開幕は9月1日である。リーグ戦が始まっていないフランスのクラブに所属する選手のコンディションを短期間の間に上げる必要がある。合宿は2次にわたって行われ、まず第1次合宿は8月7日から14日までクレールフォンテーヌで、そして第2次合宿は17日から試合の翌日の24日までクレールフォンテーヌとランスで行われた。
■圧倒的不利が予想されたフランスに朗報
第1次合宿の最終日には女子欧州選手権のグループリーグ2でデンマークに次ぐ3位に終わったスイスと親善試合を行った。ところがデンマークに大差で連敗したスイスにフランスは1-2と敗れてしまう。一方、デンマークは、フランスがスイスに敗れた翌日には10月にアジアの覇者となる北朝鮮を4-0と一蹴しており、プレーオフ決勝進出チームは戦う前にわかってしまったかに見えた。
ところが、サッカーはわからない。ランスのデンマーク戦の前日に大西洋の彼方からうれしいニュースが入る。米国のフィラデルフィア・チャージに所属しているエースストライカーのマリネット・ピションが米国女子リーグの年間最優秀選手に選出されたのである。
そして会場となったランスのフェリックス・ボラール競技場は過去フランスの男子代表が4回対戦して、負け無しの3勝1分、最新の試合は1998年ワールドカップの決勝トーナメント1回戦、世界王者を導いたローラン・ブランのゴールデンゴールが決まったあの試合である。通常は地元RCランスの黄色と赤に染まるこのスタジアムも4年ぶりに青に染まった。
■米国女子リーグ最優秀選手のピションが先制点、デンマークに史上初の勝利
フランスもいくつかチャンスをつくったが、デンマークが優位に試合を進めた。しかしフランスGKのセリーヌ・マルティが完璧な守りを見せ、グループリーグ6試合で21得点と抜群の得点力を誇るデンマークの攻撃陣を封じる。そして均衡を破ったのは32分、米国リーグ最優秀選手に輝いたばかりのピションであった。フランス代表としてそれまでに60試合出場、41得点というエースが見事に期待に応えた。そして歓喜の声がやまない36分にもソニア・ボンパストールが追加点をあげる。その後もチャンスをつかんだフランスは、2-0とデンマークに史上初、しかも2点差の勝利をあげたのである。
■第2戦も引き分け、プレーオフ決勝に進出
第2戦は9月15日にデンマークのオデンスで行われた。フランスは優位な立場に立っているとは言え、試合の1週間前の9日にクレールフォンテーヌに集合し、合宿に入る。試合の3日前にはハンス・アンデルセンの出身地であるオデンスに到着し、試合に向けて調整を行う。そして試合の日を迎える。男子のワールドカップと立場が変わり、2点差以上の勝利が必要なデンマークが攻撃的な試合運びを行い、先制点をあげる。2点目が必要なデンマークであったが、後半に入り、フランスが試合を支配する。そして88分にはフランスのセブリン・ラクッフルが同点ゴールを上げ、フランスは1勝1分でプレーオフ決勝進出。終了間際の得点はプレーオフ決勝にむけて弾みをつける1点となったのである。(続く)