第167回 フランス・サッカーの危機(2) フランスリーグ、この2年の人気急落
■ワールドカップ優勝以来安定していた関心が急落したフランスリーグ
前回はフランスにおけるサッカーの国際試合(チャンピオンズリーグ、UEFAカップ、フランス代表戦)についてはすべて人気が低下してきたことを紹介した。今回は国内のタイトルについてフランス人の関心の変化について紹介しよう。
まず、なんと言っても衝撃的だったのはフランスリーグ(1部)に対する関心の急落である。「非常に関心がある」「関心がある」「少し関心がある」「関心がない」という4段階のうち、フランスリーグに「非常に関心がある」あるいは「関心がある」と回答した人は1998-99シーズンの段階では55%であった。この数字は同時期の国際試合に比べると少ない程度であった。(チャンピオンズリーグ:58%、UEFAカップ:60%、フランス代表戦:56%)これらの国際試合についての関心がその後低下していくことは前回の本連載で紹介したとおりである。
ところがフランスリーグは次の1999-2000シーズンは「非常に関心がある」あるいは「関心がある」という数字は54%、そしてその翌年も同じく54%と数字を保ち、上記の国際試合よりも関心が高かったのである。つまり、欧州選手権でフランスが優勝したシーズンですら、フランス人にとってフランスリーグはフランス代表の試合よりも関心が高い存在であったのである。
しかしながら、そのように安定した人気を保っていたと思われたフランスリーグも2001-2002シーズンには突然この数字が50%を割り込み、48%となる。そして今シーズンも続落し46%になっている。この急落の理由には非常に興味深いデータがある。
■「関心が低くなった」が「関心が高くなった」を大きく上回る調査結果
今年度についてはフランスリーグに関して関心の度合いだけではなく、他の項目も質問し、その結果が報告されている。まず、「以前に比べてフランスリーグに対して関心が高まったか、低くなったか」という質問に対しては「高くなった」という回答が24%に対し、「低くなった」という回答はそれを大きく上回る39%であった。そして関心が低くなったと回答した人たちについてはその時期と理由を詳細に聞き出している。
■この2シーズンで顕在化した人気の低落
それによると関心が低くなった時期は今シーズンからと回答した人はわずか8%、そして関心の度合いが急落した昨シーズンからと回答した人は21%、それ以外の71%の人は「それ以前から」と回答している。つまり、一般的にファンはかなり前からフランスリーグに関心を失ってきており、それがこの2シーズンで顕在化したといえよう。
■サッカー以外の要素が大きい「関心が低くなった理由」
関心を失ってきた理由については10項目をあげ、「全くそう思う」「そう思う」「そう思わない」「全くそう思わない」という4段階で回答するようになっている。「全くそう思う」あるいは「そう思う」と回答した割合が最も多かったのが「シーズンで活躍した選手がシーズン終了後国外に流出してしまうから」というものであり、実に89%の人がこの理由をあげている。そしてそれに続く81%という数字をあげたのが「選手がクラブに対して愛着を持たなくなってきている」というものである。続いて第3位は「選手が課題に評価されている」というもので74%、以下「フランスのクラブはテレビ収入に頼りすぎ」「フランスのクラブは財政基盤が弱い」「フランスのクラブに対する税制が厳しい」「フランスのクラブにはスター不在」「戦術的な目新しさがない」「アウエーゲームで引き分けが多い」となり、最後が「攻撃的ではない」である。ここで注目して欲しいのは関心を失ってきた理由として上位に挙げられるのが選手の移籍などの行動や態度というサッカー以外の要素ばかりであり、スター選手の不在や戦術面、攻撃的な試合運びなどサッカーそのものに関する要素が下位にきていることである。
実は次回述べるように、フランスリーグの試合そのもののレベルについてはかなり問題がある。にもかかわらず、サッカーそのものではなく、サッカー以外の部分で関心を失ってきたということは、根本的な問題ではないのであろうか。(続く)