第168回 フランス・サッカーの危機(3) 選手の国外流出と得点シーンの欠如

■フランス代表選手のほとんどが国外クラブに所属

 前回の本連載ではレキップ紙の調査結果の中で、フランスリーグに対する関心がこの2年で急落し、その主な要因がサッカー以外の要素ばかりであり、サッカーそのものに関する要素ではなかった、ということを紹介したが、実はフランスのサッカーの質というものに関してはかなり深刻な状況にある。
 まず、よく言われるのが有力選手の国外流出である。フランス代表選手の大部分が国外のクラブに所属していることは本連載の読者の皆さんならばよくご存知のことであろう。昨年の例をとると、1試合あたり平均12.5人の国外のクラブに所属している選手がフランス代表の試合に出場している。11人よりも多い数字となるのは交代出場選手が存在するからであるが、このフランス代表戦における1試合あたり平均の国外クラブに所属する選手の数は増加傾向にあり、10年前の1993年には2.3人であったが、ボスマン判決の下る直前の1995年には3.2人、その直後の1996年には4.4人、そしてボスマン判決を受けてビッグクラブへの移籍が本格化した1997年には一気に9.8人となった。ワールドカップイヤーである1998年はワールドカップ後の選手の若返りがあったため、8.4人と一旦ダウンしたが、その後は増加する一方で、2000年には10.7人と大台を越え、現在に至ったのである。
 振り返ってみると全員がフランス国内のクラブに所属した最後の試合は1995年8月のノルウェー戦、そして前世紀最後である2000年11月日のトルコ戦は先発選手全員が国外のリーグに所属していた。そして2001年4月25日、涙の解放記念日として語り継がれるポルトガル戦は交代出場した選手も含めて16人全員が国外のクラブに所属していた。このようにフランスのトップレベルである代表クラスの選手を週末にフランス国内のスタジアムで見ることができなくなって久しい。

■代表クラスだけではない選手の国外流出

 そしてこの選手の国外への流出は代表クラスの選手のビッグクラブへの動きだけではない。中堅・若手選手も国外の様々なレベルのクラブに流出している。10年前に国外の1部リーグに所属している選手はわずか9人だったが、増加の一途をたどり、今シーズンは233人にのぼる。リーグ別で見るとイングランドが54人、イタリアの24人となっているが、選手の所属はこれらの強豪リーグだけではない。スコットランド20人、ギリシャ15人、ベルギー13人、そして忘れてならないのはルクセンブルグ、イスラエル、アルメニア、ポーランド、ハンガリーなど20か国以上のリーグでフランス人選手が活躍しているということである。
 このように、スター選手だけではなく、かつて一世を風靡したベテラン選手、次代を担う若手たちも海外へ流出しており、ワールドカップで活躍したアフリカ人選手が穴埋めするには至らないであろう。

■欧州他国に比べて圧倒的に少ないゴールシーン

 これまでも何回か紹介しているとおり、フランスリーグには多数のアフリカ人選手が活躍している。さぞかし攻撃的なサッカーが展開されているであろうと、日本の読者の皆様は想像されるであろう。実は全く逆で、フランスリーグの1試合あたりの得点数は欧州の他国のリーグに比べてかなり少ない。フランスリーグの1試合あたりの平均得点数は2.18である。この数字を欧州の他の有力リーグの1試合あたり平均得点数を比較してみると、ドイツのブンデスリーガが2.76、スペインのリーガ・エスパニョーラは2.58、イタリアのセリエAは2.55、イングランドのプレミアリーグが2.54と、いずれもフランスリーグを高く上回る数字であり、単純に平均得点数だけで試合が攻撃的か否かを判断するのは危険かもしれないが、日本で年明けから急速にブンデスリーガの人気が高まっていることを考えてみれば、ゴールシーンの多い試合、リーグを好むことは当然のことであろう。日本でフランスリーグに注目が集まらない理由も明白である。
 このように選手の国外流出と得点シーンの欠如はフランスリーグの質の低下を意味しているのであるが、それに気がつかないファンにも大きな問題があるといえよう。(続く)

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