第169回 フランス・サッカーの危機(4) 見る側にも問題が存在するフランス・サッカー
■今年も欧州のベスト8に残ることができなかったフランス勢
本シリーズは第166回でクラブチームならびに代表チームが戦う国際試合の人気の低下傾向、第167回でこの2年間に関心が急落したフランスリーグ、第168回でフランスリーグにおける人材の流出、得点の少なさについて述べてきた。
2月下旬には欧州チャンピオンズリーグの2次リーグが再開し、UEFAカップの4回戦が行われ、今年最初のクラブレベルでの国際試合が行われた。クラブチームとして両カップ戦で越年できたのは、あわせて32チーム。ところが、この中でフランスのチームはUEFAカップで4回戦に残ったオセール1チームだけである。他の欧州の有力リーグからはイタリア5チーム、スペイン5チーム、ドイツ4チーム、イングランド4チームが残っており、フランス・サッカーの地盤沈下は明白である。しかも唯一の希望を託されたオセールもイングランドのリバプール相手に連敗し、昨年同様、欧州カップのベスト8にフランスのクラブが残ることができなかった。
■年によって関心の度合いが変動する国内カップ
今回のレキップ紙の調査は3つの国際試合(欧州チャンピオンズリーグ、UEFAカップ、フランス代表戦)、3つの国内タイトル(フランスリーグ、フランスカップ、リーグカップ)に対する国民の関心の動向を時系列で追ったものである。これまでに調査結果を紹介してきた3つの国際試合ならびにフランスリーグについては国民の関心は下がる一方であった。ところが、今回紹介するフランスカップ、リーグカップについては、それらと違い、関心が高まる年もあれば、下がる年もあるのである。
例えば、フランスカップについて「非常に関心がある」「関心がある」「少し関心がある」「関心がない」という4段階のうち、「非常に関心がある」あるいは「関心がある」と回答した人は1998-99シーズンの段階では50%であった。それが、翌年には63%と跳ね上がる。この1999-2000シーズンのフランスカップに対する関心の高さは今回の調査全体の中で最も高い数字を示している。2000-01シーズンには50%と元に戻り、2001-02シーズンには40%と他のタイトル同様に急落している。
一方、リーグカップに関しても1998-99シーズンは50%、そして翌年の1999-2000シーズンは57%とアップし、2000-01シーズンはやや落ちて54%、2001-02シーズンは40%と大幅ダウンしている。(フランスカップ、リーグカップについては、調査時点において1部リーグのクラブがまだ参戦していなかったため、今シーズンの数値は対象外となっている)
■下位リーグのチームの活躍が注目を集めるカップ戦
この2つの国内カップについて言えることは、数字が上下することに加え、年によってはその数字は国内最高のタイトルであるフランスリーグを上回る、ということである。この理由は長丁場のリーグ戦の場合、波乱が起こりにくいのに比べ、カップ戦は予期せぬチームが上位進出し、そのジャイアントキリングが注目を集めるからである。例えば1999-2000シーズンのフランスカップについては4部リーグに相当するCFAに所属するカレーが快進撃を続けて、アマチュアチームとして初めて決勝に進出し、カレー現象という言葉が誕生したシーズンである。そして同シーズンのリーグカップでも、2部リーグに所属するグーニョンが優勝したことに加え、3部リーグに相当するナショナルリーグに所属する名門チームであるレッドスターが準決勝に進出したことも見逃せない。このような波乱が起こった大会は注目を集めるが、同じ波乱でも2000-01シーズンのストラスブール、2001-02シーズンのロリアンのように2部降格の決まったチームが優勝するような場合はそれほど注目を集めない。
■サッカーの質そのものを見極める力のないフランス人
結局、フランスのサッカーが長期的な傾向として優秀なタレントが流出し、ゲームの質も下がっていることは問題であるが、それ以上に憂慮すべきことは、フランス人がサッカーのレベルを見極める力を持っておらず、話題性のあるチームや選手にばかり注目が集まるという点であろう。サッカーを見る力をフランス人が持っていないということ、これが問題の本質であるということにそろそろ気がつくべきではないであろうか。(この項、終わり)