第212回 コンフェデレーションズカップ2003 (1) 初戦のコロンビア戦に勝利
■フランス人の生活には欠かせないコロンビア産のコーヒー
初めての欧州開催となった今年のコンフェデレーションズカップ。フランスの初戦は2001年南米選手権優勝のコロンビア。地理的にも遠く、スペインから独立した国であるため、フランスとは縁の薄い国であると思われている読者の方も多いと思われるが、実はコロンビア無しではフランス人の生活は成立しないのである。
パリジャンのあらゆる生活のシーンに登場するコーヒー。いわゆるフレンチローストという深煎り風味の強いコーヒーであるが、この主たる原産国はコロンビアである。コーヒーの発祥地はエチオピアであるが、フランス人がハイチ経由で中南米に持ち込んだと言われている。深煎りのフレンチローストに耐えられるのは硬い豆だけであり、高地で栽培される必要がある。したがってコーヒー大陸の中でも高地栽培のコロンビア産の硬い豆がフランスに輸入され、コロンビア産のコーヒー豆だけがフランス人のテイストを満足させることができるのである。
さて、フレンチローストを何杯も飲み干して乗り切ったNBAファイナル。次のスポーツイベントはフランスのゴールデンタイムに行われるコンフェデレーションズカップである。やはり、国内で開催されるスポーツイベントとしては6月最大のものである。
■ベストメンバーは揃わないが、連覇を目指す
フランスはグループAでコロンビア、日本、ニュージーランドの順に対戦する。前回大会準優勝で4月にワールドカップベスト4の韓国を破っている日本も強敵であるが、初戦のコロンビアを無視するわけにはいかない。スペインリーグが終了していないため、ジネディーヌ・ジダンやクロード・マケレレを欠き、負傷によるパトリック・ビエイラなどのメンバーも招集しておらず、前回大会同様ベストメンバーとはかけ離れた陣容であるが、国民の期待に応えるためには初戦の突破が必須である。
■最近成績の悪い南米勢との戦い
最新のフランスと南米勢との対戦は昨年のワールドカップでのウルグアイ戦、そしてその前は本連載の第1回から第4回で紹介したチリ戦である。ウルグアイ戦はスコアレスドロー、そしてチリ戦は1-2で敗れており、現在南米勢との対戦成績は芳しくない。また、コロンビアとの過去の対戦は1972年6月18日にブラジルで行われたインディペンデントカップで対戦しただけである。奇しくも今大会と同じ日の対戦であったが、この時はフランスが3-2で勝っている。そして31年前の試合にはユーリ・ジョルカエフの父、ジャン・ジョルカエフが出場している。息子のユーリもすでにフランス代表を引退しており、実質的に両国は初対戦であるといっても過言ではないであろう。ここで思い出すのは昨年のワールドカップ。初戦は初顔合わせのセネガル。セネガルに敗れたフランスは調子を取り戻すことができないまま、韓国から去ってしまった。
欧州選手権予選などで調子を取り戻したとはいえ、このコンフェデレーションズカップで敗れれば、昨年のワールドカップの再現となり、ソウルでのトラウマを払拭することができなくなる。
■ジャック・サンティーニ監督、故郷で見事な采配
コロンビア戦の舞台はリヨン、フランス代表がリヨンで試合を行うのは1998年ワールドカップでグループリーグ最終戦となったデンマーク戦以来のことであり、これまで6戦して3勝2分1敗。その中ではワールドカップ優勝の第一歩となったエメ・ジャッケ監督の国内デビュー戦であるチリ戦やロベルト・カルロスの強烈なシュートが語り草となっているフランストーナメントのブラジル戦が思い出される。しかし、ジャック・サンティーニ監督にとってはリヨンの監督としてランスとの直接対決に勝ち、リヨンを初優勝に導いた1年前の試合がなんといっても印象的であろう。リヨンのファンもわが町に優勝をもたらした名指揮官の帰還を歓迎し、サンティーニ監督は限られた持ち駒の中で万全の準備を行い、戦術を練る。
メンバー的には苦しい布陣であるが、そこはクラブチームでの経験豊かな指揮官である。それなりのメンバーでそれなりのスコアでの勝ち方を知っている。スコアこそティエリー・アンリのPKによる1点だけであったが、危なげなく勝利する。もちろん、グループリーグ、大会の性質を考えるとただ勝てば言いというものではない。大黒柱のいない中での攻撃パターンも確立し、控え選手も穴を感じさせない活躍をし、試合内容は納得のできるものであった。第2戦は、メンバーをがらりと変えて、隣町サンテエチエンヌで優勝候補の日本に挑戦するのである。(続く)