第231回 スイスと32回目の対戦(5) スイスに快勝、好スタートを切った新シーズン
■ジュリアス・シーザーが建設し、日本代表が変えた街ニヨン
8月20日はインターナショナル・マッチデー。世界各地で代表チームの試合が行われたが、すでにフランスではリーグ戦が始まっており、8月16日にも各地で試合が行われている。フランス代表チームのメンバーは18日にスイスのニヨンに直接集合し、スイス戦に備えた。レマン湖のほとりにあり、避暑地として名高いニヨンはジュリアス・シーザーによって建設された都市である。湖の近くにある城からのレマン湖の眺望は絶景である。
この城壁のある小都市を建設したのは古代ローマ最大の将軍であったが、この都市がサッカーの世界で有名になったのは1998年の初夏のことである。隣国フランスでワールドカップが開催され、本大会初出場を果たした日本代表がこの地にやってきた。日本代表のキャンプにあわせ、このニヨンは近代的なキャンプ施設を整え、シーザーによる建設以来2000年ぶりに街の装いを新たにしたのである。そしてもう一つ忘れられないのは前年まで世界各地で行われたワールドカップ予選で14得点と世界最多得点を記録した三浦知良がこの地で代表メンバーから外れたことである。予選で爆発的な得点力を記録し、本大会でも得点王の有力候補であった三浦が代表メンバーから離脱したことは「ニヨンの衝撃」として、ブルータスによるシーザーの暗殺以来のショッキングな事件となって世界中を震撼させたのである。ニヨンに集合したフランス代表は早速練習を行ったが、この練習には3000人もの観客が集まった。人口わずか1万2000人の小都市でこれだけの人が集まると言うのは5年前の日本代表のキャンプがこの街を変えたのであろう。
■ベテラン中心となった20人のメンバー
20人のメンバーにはスペインリーグの日程の関係でコンフェデレーションズカップのメンバーから外れたレアル・マドリッド勢からジネディーヌ・ジダンが復帰、けが人も復帰し、久しぶりにベストメンバーが集まった。ジャック・サンティーニ監督は昨年の就任以来、国内で活躍する若手選手を抜擢しつづけてきたが、今回選出された20人のメンバーのうち新体制になってからフランス代表の一員となった選手はブルーノ・ベドレッティとジャン・アラン・ブームソン、ウスマン・ダボの3人だけである。ペドレッティは昨年11月のユーゴスラビア戦以来、代表メンバーに定着している。一方、ブームソンとダボはコンフェデレーションズカップの日本戦で代表にデビューしたばかりで、ダボは続くニュージーランド戦には交代出場しているが、ブームソンは日本戦のみの出場経験しかない。しかし、日本戦でマラドーナ二世と言われる大久保嘉人を完封したことが今回の選出につながったのであろう。
■久しぶりにアンリ-トレゼゲの2トップ
2010年の欧州選手権の会場にもなるであろう改装間もないジュネーブ競技場のピッチにフランス代表は白いユニフォームでラ・マルセイエーズを歌う。初対戦時のユニフォームの色を尊重して白いユニフォームを着用したのであろうか。先発メンバーはGKファビアン・バルテス、DFはリリアン・テュラム、ミカエル・シルベストル、マルセル・デサイー、ビシャンテ・リザラズ、守備的MFはパトリック・ビエイラ、オリビエ・ダクール、攻撃的MFはジダンとシルバン・ビルトール、そしてFWはティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲという陣容である。アンリ-トレゼゲの2トップは本連載第179回で紹介した4月2日のイスラエル戦以来のことである。
■ビルトール、マルレのゴールで快勝
明日にでもポルトガル入りして欧州選手権が戦えるのではないか、というメンバーが集まり、フランスが一方的にゲームを支配する。12分にはこの日で代表90試合というテュラムが攻撃の起点となり、ビルトールが無人のゴールに先制点をあげる。後半に入ってもフランスはジュネーブを我が庭とばかりに走り回り、後半に入って54分には交代出場したスティーブ・マルレが追加点をあげる。サンティーニ監督は結局8人を交代させ、19人を出場させ、快勝を収め、久しぶりのスイスでの勝利となった。
昨年のワールドカップは直前1年間の準備のミスで惨敗したが、10月に予選が終了した後はドイツ、ベルギー、オランダ、ブラジルという強豪との親善試合が予定されている。欧州選手権に向けたフランス代表に今季も注目したい。(この項、終わり)