第240回 2003年女子ワールドカップ(2) 開催国変更、数度の合宿でチーム力をアップ

■強敵ドイツに5度目の対戦で初得点・初勝利

 アルガーブ・カップで好成績を残したフランスは4月17日にはパリ近郊のオゾワール・ラ・フェリエールに強豪ドイツを招き、親善試合を行う。ドイツはいろいろな意味でフランスのライバルである。男子はフランスとドイツの対戦成績はほぼ五分だが、女子についてはフランスの戦績は4戦4敗、1得点もあげることができず、4試合で14失点を喫している相手である。しかし、この強豪相手にフランスはよく持ちこたえ、試合も終盤に差し掛かった75分にカンディー・エルベールがジャン・ピエール・パパンばりの見事なボレーシュートをゴールに突き刺す。対ドイツ戦史上初のゴールが両チーム唯一の得点となり、フランスは歴史的な初勝利を上げたのである。

■開催国変更、組み合わせ抽選でグループBに

 ところがこのころアジアを中心に重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生により大きな問題となったために、当初中国の4都市で9月23日から10月11日まで行われる予定であったワールドカップは開催地の変更を余儀なくされることになった。開催時期は変更せず、開催地を変更するという事態になったのである。本来であれば5月24日には本大会の組み分け抽選会と中国女子代表-世界選抜の試合が予定されていたが、この時期にFIFAは緊急理事会を開催し、女子ワールドカップの代替開催地として立候補した米国、イタリア、カナダ、豪州、スウェーデンのうちから、4年前の大会を開催した実績のある米国を代替開催地に決定したのである。
 6月中旬には使用するスタジアムや日程も決定し、7月12日には日本を最後に参加16か国が勢ぞろいした。そして日本中が歓喜に沸いていた7月17日には、カリフォルニアのカールソンで本大会の組み合わせ抽選会が行われた。
 フランスはノルウェー、ブラジル、韓国とともにグループBに入った。ちなみにグループAは米国、スウェーデン、ナイジェリア、北朝鮮、グループCはドイツ、カナダ、日本、アルゼンチン、グループDは中国、ガーナ、豪州、ロシアという顔ぶれになっている。フランスの所属するグループBだけが欧州勢が2チームとなっているが、これは欧州からの5枚のチケットのうち、最後の1枚を獲得したのがプレーオフを勝ち抜いたフランスだったからである。しかしながら、厳しいプレーオフを勝ち抜いたフランスは実力をつけ、今回のワールドカップにあわせてFIFAが女子にも採用した世界ランキングではフランスは9位に位置し、欧州勢の中ではノルウェー(2位)、ドイツ(3位)、スウェーデン(5位)の次に位置し、ロシア(11位)よりも高く評価されている。グループBの中ではノルウェー、ブラジル(6位)に次ぐランキングであり、韓国のランキングは25位である。

■夏期に3度の合宿でチーム力向上

 組み合わせ抽選の結果をフランスのイレブンはクレールフォンテーヌで聞いた。本大会に向けた親善試合は4月のドイツ戦以来行っておらず、5月以降の試合は2005年の欧州選手権予選でハンガリーと対戦しただけである。そのため、7月中旬にエリザベート・ロワゼル監督は34人の代表候補選手をクレールフォンテーヌに集めて4日間の合宿を行ったのである。そして7月下旬にもサボワで1週間の合宿を行い、親善試合を行う代わりにじっくりと合宿でチームを作り上げた。7月末から8月にかけてドイツで行われた19歳以下の女子の欧州選手権で、妹分が優勝を飾り、士気高揚する中、8月下旬にはティーニュで10日間にわたる長期合宿を行った。

■米国入りし、日本との親善試合はドロー

 9月に入ると8日に欧州選手権の予選でアイスランドと対戦、難なく2-0と一蹴し、2勝目を上げる。アイスランド線の疲れを癒す間もなく、9月10日にはフランス代表はシャルル・ド・ゴールからワシントン経由でボストンに到着、フランス代表が初めて北米大陸の地を踏んだのである。14日には4月のドイツ戦以来5か月ぶりとなる親善試合をボストンで行う。親善試合の相手は日本。大会前唯一の親善試合であり、フランスが日本を対戦相手として選んだ理由は、グループリーグでフランスが韓国と対戦することから、仮想韓国という意味合いもあるが、昨今の国際情勢も無視できない。今春のイラク戦争以降、米国との同盟関係に揺らぎが見える日本に対し、フランスが急接近している証しでもあろう。試合はフランスのエースストライカーのマリネット・ピションが前半に2得点をあげるが、メキシコとのプレーオフを勝ち抜いた日本も後半に粘りを見せ、57分に大谷未央、75分に荒川恵理子がゴールをあげ、同点に追いつき、大会前唯一の親善試合は引き分けとなる。いよいよ20日のフィラデルフィアでのノルウェー戦のキックオフの笛を待つばかりである。(続く)

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