第241回 2003年女子ワールドカップ(3) 強豪ノルウェーに開幕戦で敗れる
■開幕試合で強豪ノルウェーに挑戦
さまざまな試練を乗り越え、9月20日に第4回女子ワールドカップが開幕した。
初めての本大会出場となる女子のフランスイレブン。ワールドカップでの初めての戦いはいきなりフィラデルフィアでの開幕戦、現地時間で正午キックオフの開幕戦には2万2000人の観客が詰め掛けた。
そして相手は強豪ノルウェーである。ノルウェーは前回大会こそ4位にとどまったが、1995年大会では優勝、そして1991年大会では準優勝、すなわち、過去3回の大会で必ず準決勝以上に進出している。また、オリンピックでもアトランタで銅メダル、シドニーでは金メダルであり、世界ランキングも米国に次ぐ2位であり、欧州ナンバーワンの実力を誇っている。過去のフランスとの対戦成績を振り返ってみても10試合対戦し、7勝3分という負けなしの圧倒的な成績を残している。20人のメンバーのうち5人は世界最高峰である米国リーグに所属しており、米国に次ぐ優勝候補である。
しかし、ワールドカップの開幕戦である。何が起こるかわからない。昨年の5月31日の男子のワールドカップのことを思い出してほしい。前回優勝のフランスは初出場のセネガルに敗れた苦い思い出があるが、ノルウェーと対戦する女子のイレブンが今度はセネガルの立場にまわるわけである。
■歴史の街・フィラデルフィアとフランス
今回のワールドカップは東海岸を中心に行われるが、フィラデルフィアは1681年に英国のクェーカー教徒が移住し、その後独立宣言や憲法制定の舞台となった町である。歴史の浅い米国の中でも歴史を感じさせる町である。そのフィラデルフィアの見所のひとつがフィラデルフィア美術館である。立派な石の建造物で、映画「ロッキー」のファーストシーンの登場した建物といえばご存知であろう。このフィラデルフィア美術館は米国で4番目の規模の美術館であるが、ポール・セザンヌをはじめとするフランスの印象派の収集においては目を見張るべきものがある。セザンヌの作品については世界で最も充実した美術館であり、フィラデルフィアの市民もフランスには特別な思いがあるであろう。
一方、本連載でも何回かテニスについて取り上げ、好評を博しているが、デビスカップの決勝に初めてフランスが挑み、そして初優勝を遂げた地がこのフィラデルフィアである。1925年に米国にチャレンジしたが0-5と完敗したフランスは翌年も1-4と連続してフィラデルフィアで敗れる。そして1927年の戦いではフィラデルフィアに乗り込んだフランスが米国を3-2と振り切ってデビスカップ初優勝をこの地で果たしたのである。
■対照的な両チームのスタイル
そのようなお膳立ての整ったフィラデルフィアで、フランスは欧州ナンバーワンのノルウェーに挑戦したのである。男子同様体格に勝るノルウェーは空中戦中心の戦い、一方の挑戦者フランスはグラウンダーのパス中心でテクニックを前面に出す戦いとなる。そしてフランスの最大の強みは、昨年のプレーオフを勝ち抜いた自信、そして数度の合宿で育まれたチームワークである。
欧州勢同士の戦いでありながら、対照的なチームカラーの試合は一進一退の攻防となる。前半終盤あたりから自力に勝るノルウェーのペースとなるが、フランス守備陣もがんばり、前半は両チーム得点なく、後半を迎える。
■後半に痛恨の2失点、気落ちせずにワシントンDCに移動
後半立ち上がり早々、均衡は崩れる。ノルウェーはFKのチャンスからアニータ・ラップが先制点を入れる。この失点の直後からフランスも反撃に転じるが、ノルウェーのゴールネットを揺らすに至らず、66分にはノルウェー主将のダニー・メルグレンが2点目を決める。国際試合ではセーフティーリードと言われる2点目を失い、コリンヌ・ディアクレ主将を中心とするフランスイレブンは意気消沈するどころか、逆にノルウェーを攻め立てる。フランスの猛攻も実らず、結局ワールドカップ本大会での初めての試合は0-2と敗れてしまう。
初戦は敗戦となったものの、エリザベート・ロワゼル監督以下の表情はきわめて前向きである。試合の翌日、次の試合会場であるワシントンDCへ3時間半のバスでの移動を行い、アメリカン大学で早速汗を流した。第2戦の相手は韓国、24日19時45分キックオフの試合でワールドカップ初勝利を目指すのである。(続く)