第262回 アテネへの夢、クレルモンフェランに散る
■グループ1で7勝1分と圧倒的な強さを誇ったフランス
本連載の第260回でフランスとドイツの親善試合と同時期に21歳以下欧州選手権の予選のプレーオフがあるため、若手選手がフル代表に選出されなかったことを紹介した。今回は21歳以下欧州選手権予選のプレーオフについて紹介しよう。
21歳以下欧州選手権は偶数年に行われ、本大会には8チームが出場する。予選の組み合わせはフル代表の欧州選手権予選とほぼ同じであり、本大会の開催国は本大会出場国が決まってから決定するため、UEFAのすべての加盟国が参加する。フランスはグランドスラムこそ達成できなかったもののスロベニアとアウエーで引き分けた以外は全て勝ち、7勝1分でグループ1の首位となった。7勝1分と言う成績を残したのはフランスとトルコだけであり、予選のグループリーグでは兄貴分同様、欧州で最高の成績を残している。
■オリンピック予選を兼ねた本大会出場の最後の関門、プレーオフ
しかし、欧州選手権と異なり本大会出場数が8と少ないため、各グループリーグの首位10チームと2位グループの6チームからなる16チームの間でプレーオフが行われる。フランスのプレーオフの相手はグループ7で2位となったポルトガルである。プレーオフの勝者8チームが来年5月下旬から6月初めにかけて本大会を行い、その上位3チームがアテネオリンピックへ出場することになっており、オリンピック予選を兼ねている。オリンピック精神発祥の国としてオリンピック発祥の地での大会に参加したい気持ちは強く、その結果としてジブリル・シセ、フィリップ・メクセスをメンバーに招集したのであろう。
■古都ギマラエスで先勝
ポルトガルとのプレーオフ第1戦は11月15日、ギマラエスで行われた。試合会場のアフォンソ・アンリケスタジアムは来年の欧州選手権の会場としても使用され、7月に完成したばかりである。レイモン・ドメネシュ監督率いるフランスの若きイレブンには7月後にこのピッチに戻ってくることを心に誓っている選手もいるであろう。1万9000人の地元ファンの前でゴールネットを揺らしたのはポルトガルのホルヘ・リベイロだった。開始早々の6分のことであった。フランスも反撃に転じ、ポルトガルゴールに迫る。そして23分に同点ゴールを決めたのはドイツ行きから外れたシセであった。シセの見事な左足のボレーで追いついたフランスはその後試合を支配する。32分にはシセがゴールを決め、逆転。ポルトガルは地元ファンの期待に応えることができず、フランスがアウエーで2-1と先勝し、本大会出場へ前進する。
■英雄シセの退場で流れが変わり、PK戦に
18日の第2戦はフランスのホーム、クレルモンフェランで行われた。フランス中央のこの町は若き日のピエール・スベストルが活躍した町として有名である。アウエーの第1戦で勝利したフランスは余裕さえうかがえる。実にこの日まで15試合連続で負けなし、しかも予選のホームゲームでは無失点であり、その強さには一片の雲もない。しかし、思いもよらない結果が待っていた。まず、先制点は背水の陣となったポルトガル。29分にクリスチャノ・ロナウドがフランスのゴールネットを揺らす。ついにここでフランスのホーム無失点神話が崩れる。フランスはリードを許したとは言ってもアウエーゴール2倍ルールが適用されるため、フランスはあわてることはない。そして41分にエースのシセがベルナール・メンディとワンツーパスを鮮やかに決めて、同点ゴール。このプレーオフで3点目、フル代表入りをアピールする活躍である。ところが前半終了間際の44分、シセは相手DFへの危険なプレーにより、レッドカードを受け、退場となってしまう。
このエースの退場がこれまで順風満帆だったフランスの若きイレブンに影響を与えないはずがない。後半に入り75分にはポルトガルのブルーノ・アルベスに勝ち越し点を奪われ、これでホーム、アウエーとも同じスコアになり、90分の笛がなる。30分間の延長戦も両チーム無得点となり、試合はPK戦にもつれこむ。先蹴はポルトガル、後蹴のフランスはトップのメクセスが失敗、2番手のメンディは成功させたものの、3番手のパトリス・エブラが失敗する。一方のポルトガルは4人目まで全員成功、4人目のキックが成功した段階で、クレルモンフェランは沈黙する。フランスは前回の大会は決勝でPK戦で敗れたが、今回はプレーオフをPK戦で落とした。そして22歳以下の欧州選手権の出場権だけではなく、アテネオリンピックの出場権も手に入れることができなかったのである。(この項、終わり)