第264回 フランス代表、2003年の成績(2) 輝くティエリー・アンリの活躍
■最もプレー時間が長かったビシャンテ・リザラズ
前回の本連載では2003年フランス代表の13勝1敗という素晴らしい成績について紹介したが、今回はその成績を支えた選手に着目してみよう。
まず、選手の出場数について紹介しよう。31人の選手が出場しているが、このうち10試合以上出場したのはティエリー・アンリ(14試合出場)、シルバン・ビルトール(13試合)、ビシャンテ・リザラズ(12試合)、リリアン・テュラム(12試合)、ロベール・ピレス(12試合)、ミカエル・シルベストル(10試合)、オリビエ・ダクール(10試合)の7人である。ただし、出場試合数には交代出場も含まれるため、最もプレー時間が長かったのは出場した12試合すべてが先発出場で、11試合にフル出場したリザラズの1073分である。リザラズはエジプト戦では主将を務めている。
■若手の期待株、ウィリアム・ガラス
また、GKに関しては所属するマンチェスター・ユナイテッドでは出場機会が少なくなったがファビアン・バルテスが9試合に出場し、3試合しか出場しなかったグレゴリー・クーペを大きくリードしている。
若手選手の中では、8試合に出場したウィリアム・ガラスがその筆頭であろう。ジャック・サンティーニ監督もフラット4のDFラインで2人のストッパーを配置しているが、前述のシルベストルに加え、マルセル・デサイー(9試合)に次ぐ地位を築いているのは楽しみである。一方、このポジションにはフィリップ・メクセス(3試合)、ジャン・アラン・ブームソン(3試合)という期待の若手選手も控えており、キャプテンマークを着用することの多かったデサイーも安泰ではないであろう。
ベテラン選手であるが、エマニュエル・プチは1試合に出場したのみで代表から引退している。また、エリック・カリエールも今年は出番がなかった。ベテランと言うには早すぎるが、パトリック・ビエイラも負傷の影響もあり5試合出場にとどまり、守備的MFはダクール、クロード・マケレレ(6試合)、ブルーノ・ペドレッティ(8試合)が活躍した。この守備的MFがワールドカップ以降でレギュラー選手の顔ぶれが最も変わったポジションであると言えよう。
■得点王とアシスト王に輝くティエリー・アンリ
これらの選手の中で最も活躍した選手と言えば、なんと言ってもアンリであろう。昨年のワールドカップのウルグアイ戦ではレッドカードを受けて退場するなど散々の成績であったが、その後見事に成長し、今年のフランス代表躍進の原動力となった。アンリは全14試合に出場した唯一の選手であり、うち13試合に先発、コンフェデレーションズカップの日本戦だけは試合終盤の80分から交代出場しており、攻撃陣の軸としてパワー全開の活躍だった。そしてゴールネットを揺らすこと11回、今年のフランス代表の得点王である。フランス代表は今年14試合で40得点をマークしており、その4分の1をアンリが記録したことになる。ちなみに、得点ランキングの2位はアンリと2トップを組んだダビッド・トレゼゲであり、8得点である。
アンリの活躍はゴールネットを揺らすことだけではなかった。フランス代表が記録した40得点のうち35得点にアシストが記録されているが、アンリは8アシストを記録し、得点だけではなくアシストもチームトップである。
■アンリ-トレゼゲの2トップが機能
そしてアンリが出したパスをゴールに叩き込んだのはもちろんトレゼゲであり、待望されていたアンリ-トレゼゲの2トップが機能した年であったといえよう。特にアンリ-トレゼゲのホットラインは秋以降の試合でうまく機能し始め、来年以降が楽しみである。
トレゼゲはこれで代表通算28得点となり、ユーリ・ジョルカエフと並び歴代4位、そしてアンリは代表通算25得点となり、歴代6位にランキングされている。彼らより上位には41得点でトップのミッシェル・プラティニ、30得点のジュスト・フォンテーヌ、ジャン・ピエール・パパンと言うビッグネームしかいない。アンリやトレゼゲの年齢を考えれば、フォンテーヌやパパンを抜くことはもちろん、通算ゴール数トップの将軍も射程距離である。
前回の連載で2003年産のワインは期待できると紹介した。猛暑の影響で糖度が十分であり、糖分を補充せず、醸造可能と言われている。酸味は足りないが、丸い味わいのワインとなるであろう。そしてこのようなワインは何年もたってから真価が発揮されるビンテージワインに最適である。2003年のフランス代表も将来のビンテージイレブンとなり、長く語り継がれるメンバーとなることを期待したい。(この項、終わり)