第288回 2004年アフリカ選手権(1) 苦境から立ち上がった2人の監督

■欧州選手権以上の注目を集めるアフリカ選手権

 偶数年に行われるアフリカ選手権。その規模と注目の度合いについては参加国数、参加国の人口、ナショナリズムの高さなどを総合的に勘案すると欧州選手権や南米選手権以上のものがある。本連載の第26回から第31回を利用してマリで開催された2002年大会を紹介した際に、これらについてはすでに述べているので、今回はあえて述べないが、依然としてフランスとアフリカの関係は強固である。
 今シリーズはこの大会に出場するフランス人監督とフランスリーグに所属する選手について述べたい。まず、今大会の開催地はチュニジア、日本の皆様にとっては過去10年間で3度も代表チームが対戦しているなじみの深い国であろう。そして参加国は開催国のチュニジア、前回優勝のカメルーン、そして予選を勝ち抜いた14か国をあわせた16か国である。4チームずつの4グループでグループリーグを戦い、各グループリーグの上位2チームが決勝トーナメントを戦うことになっている。5都市6会場を使用し、1月24日に開幕し、決勝戦は2月14日に行われる。決勝トーナメントではワールドカップや欧州選手権で導入されたゴールデンゴール方式やシルバーゴール方式を採用せず、15分ずつの延長前後半を戦い、それでも同点の場合はPK戦と言う従来通りの試合方式を採用している。

■16チーム中5チームはフランス人監督

 すでに大会も開幕しているので、今回は本大会に出場するフランス人監督について紹介したい。一昨年のワールドカップの際はアフリカから5チームが参加したが、そのうちセネガルのブルーノ・メツ監督だけがフランス人であった。2年後の今回は16チームのうち5チームをフランス人監督が率いている。

■開催国チュニジアは名将ロジェ・ルメール監督

 まず、開催国のチュニジアのロジェ・ルメール監督。本連載の読者の方には説明は不要であろうが、一昨年のワールドカップではフランス代表監督、そしてまさかのグループリーグ敗退でフランスを追われ、地中海を渡ってチュニジアにやってきた。チュニジアはグループAに所属し、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ギニアの順に対戦する。特に第1戦にあたるルワンダ戦は開幕戦であり、2002年のワールドカップ開幕戦でセネガルに敗れた経験のあるルメール監督にとっては通常の大会の開幕戦以上の緊張が襲っているはずである。しかし、現在のチュニジアは韓国でのフランスとは異なる。チュニジアはルメール監督が就任してすぐにフランスと親善試合で対戦し、引き分けたことは本連載第100回から第103回にかけて紹介したとおりである。その後ルメール監督率いるチュニジアは好調を維持し、新チーム発足以来、負けたのはただ1回、昨年10月8日にチュニスでの日本戦だけである。ホームゲームでありながら敗戦を喫したこの試合も決定力のある日本FWに数少ないチャンスを決められたものであり、チーム全体の力はワールドカップ出場時よりは上である。

■マイナスからのスタートで本大会出場を決めたミッシェル・デュスイエ監督

 そして2人目に紹介するフランス人監督はグループリーグ最終戦でチュニジアと対戦するギニアのミッシェル・デュスイエ監督である。ギニアはフランス領西アフリカ連邦から独立したが、独立後は旧宗主国のフランスとは袂を分かち、東側諸国よりの非同盟路線を歩んできた国である。しかしながら、1980年代半ばにクーデターが起こり、社会主義体制から自由主義体制に転換してきた。代表チームの監督を旧宗主国であるフランスから招聘するのもそのような政治体制の表れであろう。デュスイエ監督はニース、カンヌなどでGKを務めた後、カンヌのユースチームの指導者から2002年8月にギニア代表監督に就任している。しかし、これまでの道のりは生易しいものではなかった。
 ギニアは1976年大会では決勝に進出し、1979年のワールドユースにもアフリカ代表として出場していることから日本の皆様はアフリカの名門であると認識されているであろう。しかし、アジアで初のワールドカップを目指して予選を戦っている2001年3月、ギニアでは政府がギニアサッカー協会に介入し、協会を解散させたため、FIFAはギニアに対して国際試合出場禁止の制裁を与えた。ギニアはワールドカップのアフリカ最終予選で南アフリカ、ブルキナファソ、ジンバブエ、マラウイと同じグループEで3戦して2勝1分と首位の南アフリカに次ぐ2位をキープし、南アフリカとの直接対決にワールドカップ出場を託していた矢先に制裁を受けたのであった。したがって1年間の国際試合のブランクのあるチームの指揮官に就任したデュスイエ監督はマイナスからのスタートだったのである。しかしそのようなハンディキャップにも関わらず、デュスイエ監督はリベリア、エチオピア、ニジェールとの予選を4勝2敗と言う成績で勝ち抜き、7回目の本大会を決めたのである。(続く)

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