第291回 2004年アフリカ選手権(4) フランス勢躍進、ダービーマッチとなった準々決勝

■チームのフレンチ度とグループリーグを突破した8チーム

 過去3回の連載ではフランス人監督、フランスのクラブに所属する選手が多いことを紹介してきたが、今回はグループリーグでの戦い振りを紹介しよう。組み合わせ並びに監督、選手のフレンチ度を紹介すると、グループAはチュニジア(フランス人監督、フランスのクラブ所属選手5人)、ルワンダ、コンゴ民主共和国(3人)、ギニア(フランス人監督、1人)、グループBはセネガル(フランス人監督、12人)、ブルキナファソ(フランス人監督、8人)、ケニア、マリ(フランス人監督、10人)、グループCはカメルーン(8人)、アルジェリア(8人)、ジンバブエ(1人)、エジプト(1人)、グループDはナイジェリア(1人)、モロッコ(6人)、南アフリカ(1人)、ベナン(7人)となっている。
各グループでリーグ戦を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。グループAは1位チュニジア、2位ギニア、グループBは1位マリ、2位セネガル、グループCは1位カメルーン、2位アルジェリア、グループDは1位モロッコ、2位ナイジェリアとなった。

■素晴らしい成果を残したフランス人監督

 本連載第288回と第289回でフランス人監督について紹介したが、グループAではフランス人監督の率いる2チームが決勝トーナメントに進出し、3人のフランス人監督が集中したグループBでも上位2チームはフランス人指揮官の率いるチームである。指揮官をイングランド(コンゴ民主共和国)やセルビア・モンテネグロ(ルワンダ)などから招聘した国を押しのけて決勝トーナメントに進出したロジェ・ルメール(チュニジア)、ミッシェル・デュスイエ(ギニア)は高く評価できる。フランス人監督は最高の成績を残しているのである。

■フランスのクラブに所属する選手の多い国が決勝トーナメントに進出

 一方、選手に注目すると、グループリーグを突破したすべての国にフランスのクラブで活躍する選手が登録されている。そればかりかフランスのクラブに所属する選手の多い国がグループリーグで好成績を収めている。各グループでフランスのクラブに所属する選手の数が上位2チームに入っている国のうちグループリーグで敗退してしまったのはベナンだけである。もっともそのベナンもフランス勢7人のうち1部リーグのクラブに所属しているのは2人だけであり、大多数は2部やナショナルリーグに所属している選手である。結局フランスから参加した77人の選手のうち56人は決勝トーナメントに残り、チュニジアで3回目の週末を迎えることになったのである。

■準々決勝は興味深い4つのダービーマッチ

 決勝トーナメントに残った8か国のうちナイジェリアを除く7か国はフランスから独立した国である。しかし、同じフランスから独立した国と言ってもそれぞれの歴史や独立の背景は異なり様々である。決勝トーナメントの組み合わせはフランスからの独立した国の多様性を象徴するような興味深い組み合わせが重なった。
 まずギニアとマリ、両国は隣接しており、西アフリカダービーである。イスラム文化圏であり、独立後は社会主義国寄りの路線を歩み、近年民主化されたという似たような歴史を持つ国であるが、豊富な地下資源に恵まれているギニアと、一次産品が主要な産業であるマリとの間の経済格差は大きい。ただし、サッカーの世界ではマリは前回大会の開催国でもあり、近年はマリの方が好成績を残している。フランス人監督同士の戦いにも注目したい。次に、チュニジア-セネガルは一昨年のワールドカップ出場国同士と言うだけではなく、フランス人監督同士の戦いでもある。チュニジアのルメール監督とセネガルのギ・ステファン監督はフランス代表時代の上司と部下の関係に当たる。フランス代表でルメールが監督を務めていた時にステファンはコーチであった。ともにフランスサッカーの保守本流の2人、元フランス代表スタッフダービーがチュニジアで展開されるとは2年前は誰もが想像しなかったであろう。
 モロッコとアルジェリアはマグレブダービーとなった。マグレブとは「日の沈む場所」と言う意味でこの両国とチュニジアを加えた3か国の意味である。北アフリカのライバル同士の対戦で激しいライバル心が激突するであろう。最後に唯一非フランス語圏から決勝トーナメントに残ったナイジェリアの相手はカメルーン。両国も隣接しているが、ワールドカップ常連国ダービーであるが「アフリカの盟主」をかけた試合となった。このように準々決勝4試合はいずれも注目のダービーマッチとなったのである。(続く)

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