第294回 フランス代表100周年を飾るベルギー戦(1) 2人の新人を迎えたフランス代表
■100年前の初めての国際試合はブリュッセルでのベルギー戦
2月18日、フランス代表が今年初めての試合を迎える。対戦相手はベルギー、しかも舞台はブリュッセルのボードワン国王競技場である。今年はFIFAの創立100周年であるが、実はフランス代表が初めての国際試合を行ってから100年になる。フランスが国際試合を行ったことがFIFAの設立にも大きく影響をしている。そしてそのフランスの初の国際試合は1904年5月1日、ブリュッセルでのベルギー戦であった。そして本連載でも何回か紹介しているとおり、フランスが最も対戦歴が多いのがこのベルギーであり、これまで100年の歴史の中で69回対戦している。そのフランス代表100年の幕開けにブリュッセルでのベルギーと対戦すると言うのは当然の選択であろう。
■欧州選手権本大会までの数少ない準備の機会
もちろん今年はフランス代表100周年と言うだけではなく、4年に1度の欧州選手権本大会の年でもあり、タイトルホルダーであるフランスは連覇を狙いたいところである。本大会まで残された期間はあと4か月、現在のところ本大会までに予定されている親善試合はベルギー戦を含んでわずか5試合、合宿も5月末と6月初めに数日間ずつ行うだけである。欧州各地のクラブで活躍する選手がシーズンの佳境をこれから迎えることを考えれば、一つ一つの親善試合の機会を大切にしたいところである。本連載の第254回には本大会で好成績を残すためには本大会の前シーズンに新人を多くデビューさせることが必要であると書いた。ところがその直後の11月15日に行われたドイツ戦では、予選突破後の親善試合であるにもかかわらず、新人の起用はなかった。就任以来、積極的に若手、新人選手を起用してきたジャック・サンティーニ監督の方針変更を指摘する声もあがったが、敵地での3-0という記録的な勝利で選手起用に対する声も鎮まり、決戦の年を迎えた。しかし、2月12日のメンバー発表が近づくと、再び若手選手の起用について注目が高まったのである。
■注目を集めたジブリル・シセの代役
前任のフランス代表監督のロジェ・ルメールがチュニジアを率いてアフリカ選手権で快進撃を続け、決勝進出を決めたことが代表リストを発表するサンティーニの動揺を誘った可能性もある。2月12日の代表選手発表は、今年初めてのサンティーニの記者会見となった。注目はFW陣である。アテネオリンピック予選を兼ねる22歳以下の欧州選手権のポルトガル戦に出場するためドイツ戦ではフル代表から外れたジブリル・シセは、その試合で退場処分となり、今回のベルギー戦は出場停止処分になっている。そのシセの穴を埋める候補にニコラ・アネルカの名前も挙がった。アネルカは2002年11月のユーゴスラビア(当時)戦の前に負傷したシドニー・ゴブに代わって追加招集されたが、プライド高きアネルカはこれを拒否。さらに、今シーズンの初めにもサンティーニ監督を公然と非難している。ところが所属するマンチェスターシティでの成績は悪くなく、代表復帰の可能性が噂されていた。
■代表入りしたルイ・サハとペギー・リュインデュラ
しかし、サンティーニの発表した20人のリストにはアネルカの名前はなく、その代わりに初めて代表入りする2人の名前があった。まずはマンチェスター・ユナイテッドのルイ・サハ。25歳のサハは15歳の時に年齢別フランス代表にデビューして以来注目される選手であり、つい先日までフラムに所属していたが、1月下旬にマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、アンディ・コールの背番号9を受け継いだ。1月31日のデビュー戦のサザンプトン戦から活躍し、移籍後2試合で3得点をあげている。フラムからマンチェスター・ユナイテッドへのシーズン途中の移籍は両クラブの関係にひずみを生じさせたが、代表入りを機にサハの飛躍を期待したいところである。
そしてもう1人はリヨンのペギー・リュインデュラである。コンゴ民主共和国のキンシャサ生まれの24歳。リヨンで2連覇を経験したメンバーであり、ルメール監督もよく知っている選手である。
2人の新人が加わる一方、頼もしいベテランが帰ってきた。主将のマルセル・デサイーである。昨年9月10日のスロベニア戦以来、代表から離れていたが、戦線復帰した。新人とベテランが加わり100周年と言う記念すべき年の初戦がキックオフされる。(続く)