第420回 北欧の雄、スウェーデンと対戦(5) アンリ-トレゼゲの罠、ドローに終わる

■36年間負け知らずのスウェーデン戦

 スウェーデンはこれまでのワールドカップでも地元開催の1958年大会で準優勝、1998年大会では3位と北欧勢の中では最も輝かしい成績を残している。そしてその北欧の雄とフランスはワールドカップ、欧州選手権の予選で同じグループに3回入り、直接対決の成績では3回とも上回りながら、本大会へのチケットを手にできないという不思議な相手である。
 フランスはスウェーデンと1997年にアウエーで、1998年にはホームで親善試合を行っている。アウエーで勝利、ホームで引き分け、実はスウェーデンとは1969年にワールドカップ予選で敗れて以来フランスは5勝4分と負け知らず、相性のいい対戦相手である。

■必勝を期してダビッド・トレゼゲが代表に復帰

 現在行われているワールドカップ予選は苦戦続きのスタート、前回の本連載で紹介したようにスウェーデンとの親善試合が転機となることを期待するファンは少なくないであろう。レイモン・ドメネクはファンの期待に応えるメンバーの選出を行った。昨年8月の新体制発足後、肩の負傷のために代表から遠ざかっていたダビッド・トレゼゲにブルーのユニフォームを準備したのである。トレゼゲの代表入りはポルトガルでの欧州選手権以来であるが、2トップのコンビを組むのはもちろんティエリー・アンリである。アンリ-トレゼゲは前回紹介したパパン-カントナに匹敵する2トップであることに異論はなかろう。アンリとトレゼゲは同じ1977年生まれ、フル代表入りするまでもアンダーエイジでの代表でもコンビを組み、1996年の欧州ユース優勝などアンダーエイジでの数々の栄光をもたらした。そして当時のアンダーエイジのチームを率いたのが現在のフル代表のドメネク監督であり、この2トップには心強く感じているであろう。7年前に代表にデビューしたこの2人が代表でトップを組んだ試合はこれまで41試合にのぼる。そのうち2人がそろって先発した試合は20試合あるが、この20試合でアンリは10ゴール、トレゼゲはなんと16ゴールをあげている。そしてその20試合のうち16試合はフランスが勝利しており、まさにドメネク監督ならずとも勝利のためにトレゼゲが復帰してきたと喜ぶのも当然であろう。
 トレゼゲ復帰の発表により、チュニジアでのハンドボールの世界選手権や開幕したばかりのラグビーの六か国対抗に釘付けだったフランスのスポーツファンもスタッド・ド・フランスでのスウェーデン戦に期待を膨らませた。なぜならば、ドメネク新体制ではスタッド・ド・フランスではフランスはまだ得点を記録しておらず、アンリ-トレゼゲの黄金コンビがアンダーエイジ時代からの恩師ドメネク監特に本拠地での初ゴール、初勝利、そして親善試合での初勝利をプレゼントするのではないかとサッカーの代表の試合としては久しぶりに5万人を超える観衆が集まった。

■アンリからのセンタリングをトレゼゲが同点ヘッド

 しかしながら、アンリ-トレゼゲで必勝を期したフランスはスウェーデンに先行を許す。11分にスウェーデンのマーカス・オールブラックのシュートのこぼれ球をフレデリック・リュングベルグが無人のゴールに押し込む。ドメネク体制になって実はこれが初めてのスタッド・ド・フランスでの失点となる重苦しい序盤となった。その重苦しい雰囲気を払拭したのはやはり2トップだった。35分、アンリのセンタリングをトレゼゲがヘディングであわせてフランスは同点に追いつく。トレゼゲにとってこれが代表30得点という記念すべきゴールとなったが、そのうちアンリからのアシストによるものが8得点であり、この夜もファンの期待にこたえたのである。

■フル出場時は成績が悪いアンリ-トレゼゲのコンビ

 フランスのチーム状態は上々であり、アンリ-トレゼゲのコンビは90分間ゴールを狙い続けたが、スウェーデンの堅守を崩すことができず、試合は1-1のドローに終わってしまう。ドメネク体制になってからボスニア・ヘルツェゴビナ戦、ポーランド戦と親善試合では引き分けが続き、これで3試合連続のドローとなる。また、聖地スタッド・ド・フランスでの試合はワールドカップ予選のイスラエル戦、アイルランド戦、親善試合のポーランド戦と3試合連続スコアレスドロー、ようやく今回はトレゼゲが得点をあげたが、4試合連続本拠地で勝利を逃している。
 アンリ-トレゼゲがコンビを組んでこれまでに先発出場した20試合のうち90分間フル出場したことは4試合しかない。その4試合の戦績は1勝2分1敗という成績である。2人が先発出場しながら勝ち星を逃したのは4試合あるが、そのうち3試合は2人がフル出場した試合であり、黄金コンビのフル出場は凶というデータがある。フランス代表は思わぬ罠にかかってしまったのである。(この項、終わり)

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