第455回 ホーム初勝利をかけたハンガリー戦(2) 国内で359日ぶりの勝利

■通算成績では大きく負け越すも、4連勝中のハンガリー戦

 かつてマジック・マジャールと言われた中欧の古豪ハンガリーが国際舞台から姿を見せなくなってから久しい。ハンガリーはワールドカップ予選ではグループ8に所属し、フランス戦を迎える段階で2勝1分2敗という成績でクロアチア、スウェーデン、ブルガリアに続く4位である。6月4日にアウエーでアイスランドと対戦するため、その準備としてフランスと親善試合を行った。
 このハンガリーに対するフランスの通算の対戦成績では7勝3分12敗と大きく負け越しているが、大きく負けが込んだのはハンガリーが強豪だった時代のことであり、フランスはこのところ4連勝している。1978年のアルゼンチンでのワールドカップで両チームが同色の白色のユニフォームを持ってきたために、フランスが地元のクラブの白と緑色の縦縞のユニフォームを着用して3-1で勝利し、1982年のパリでの親善試合、そして1986年のメキシコのワールドカップでもフランスが勝利している。最後の対戦は1990年のブダペストでの親善試合である。両チームともイタリアでのワールドカップ出場を逃していたが、フランスが3-1と完勝している。

■リヨンから6人を選出、国内勢中心のメンバー

 新監督になってからホームで6試合連続引き分けというフランス代表は初めての試合会場であるメッスでの試合で気分一新、初勝利を狙いたいところである。フランスはリヨンから選出された6人のうち5人が先発メンバーとなる。フランスのメンバーはGKグレゴリー・クーペ(リヨン)、左DFエリック・アビダル(リヨン)、右DFアントニー・レベイエール(リヨン)、ストッパーはジャン・アラン・ブームソン(ニューカッスル)とウィリアム・ガラス(チェルシー)、守備的MFにブルーノ・ペドレッティ(マルセイユ)、右MFビカッシュ・ドラッソー(ACミラン)、左MFジェローム・ロタン(パリサンジェルマン)、FWは左にフローラン・マルーダ(リヨン)、右にシルバン・ビルトール(リヨン)、中央にジブリル・シセ(リバプール)と言う布陣になった。国内クラブから7人、国外クラブから4人となり、国内クラブの選手を優先するのは日本だけではなくフランスでも潮流となりつつある。

■試合開始前の「ピレス」コールを打ち消し、359日ぶりに勝利

 メッスのサン・サンフォリアン競技場には2万6000人の観客が集まる。このところ、観客席からはジネディーヌ・ジダンの復活を願い「ジズー」コールが沸きあがるが、このメッスでは「ピレス」コールが起こった。メッスに所属したロベール・ピアスがメンバーから外れたことに対する不満の現われである。
 しかし、その不満はキックオフとともに収まった。フランス代表は久しぶりに生き生きとした試合を展開したのである。まず、昨年10月以来の代表復帰となったシセが10分に先制点を決める。2月のスウェーデン戦以来久しぶりのゴールである。このスウェーデン戦は先行されたのに追いついたものであり、実に国内でフランスがリードを奪うのは昨年8月の初陣であるボスニア・ヘルツェゴビナ戦以来のことである。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦はリードした30分後に追いつかれたままドローで終わるが、このハンガリー戦は違った。フランスは36分にマルーダが代表発ゴールを決めて2-0とリードを広げる。フランスが国内で2得点以上したのは昨年5月28日のアンドラ戦が最後、いかに得点力不足に悩んでいたかがよくわかる。後半に入ってハンガリーに1点返されたものの、フランスは2-1と勝利する。実にフランス国内では昨年6月6日のウクライナ戦以来、359日ぶりの勝利となる。本連載第435回では3月25日にスイスと引き分けたためにフランスは1年以上国内で勝利から見放されると紹介したが、その段階ではまだ中国遠征を予定していた。中国遠征のキャンセルにより、フランスは不名誉な成績から逃れることができたのである。

■8月の親善試合はセネガル戦

 新体制になってからのフランス代表の成績は3勝7分、得点9、失点4というものである。肝心のワールドカップ予選ではライバルから勝ち星をあげることができない。また、8月恒例の親善試合はアルゼンチンをスタッド・ド・フランスに迎える予定であったが、この試合はキャンセルされた。アルゼンチン戦はホームアンドアウエーで行われる予定であり、アウエーゲームの行われる頃は2008年の欧州選手権予選がたけなわであり、次回の予選から1グループが7あるいは8チームで行われるため、過密日程となることからアルゼンチンとの親善試合をフランス側が放棄し、セネガルと対戦することになった。まだまだフランスの苦悩は続くのである。(この項、終わり)

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