第487回 ワールドカップへ向けて2つの親善試合(1) ニコラ・アネルカが3年7月ぶりに復帰
■首位リヨンから6人が選出
ワールドカップ本大会出場を決めたフランス代表はその準備の第一歩として11月に2つの親善試合を行う。9日にマルティニックでコスタリカと対戦、12日にスタッド・ド・フランスでドイツと対戦する。前々回の本連載でご紹介したとおり、9日にカリブ海でのホームゲームとなるコスタリカ戦に対しては強行スケジュールと言うことで議論を呼んだ。
ドイツ戦に次ぐ第二の親善試合を希望したレイモン・ドメネク監督は、中南米カリブ地域とは最近対戦いないという理由で、世界ランキング20位のコスタリカとの対戦を希望している。コスタリカ戦、ドイツ戦に臨む23人の選手が11月3日に発表された。来年のワールドカップ本大会に向けた第一次選手選考と言う意味もあり、通常の選手の発表よりも大きな注目を集めた。
まず、遠距離の遠征への代表選手の招集を渋る声もあったが、アーセナルのティエリー・アンリはメンバーに入った。チャンピオンズリーグを戦い強行日程となるリヨンもグレゴリー・クーペ、エリック・アビダル、アントニー・レベイエール、フローラン・マルーダ、シドニー・ゴブー、シルバン・ビルトールの6人、ユベントスからはダビッド・トレゼゲ、リリアン・テュラム、パトリック・ビエイラの3人が選出されている。
■復帰組の目立つメンバー構成
また、復帰組が目立ったのが今回のメンバー選手との特徴である。GKは6か月間の出場停止処分の解けたファビアン・バルテスが今年の3月30日のイスラエル戦以来の復帰を果たした。前回の連載で紹介したリヨンのグレゴリー・クーペとの正GK争いが見ものである。DF陣のアビダルも今年5月のハンガリー戦以来の復帰となる。MFではジェローム・ロタンがカムバックし、アンリ、トレゼゲの2トップがそろったのは今年8月15日のコートジボワール戦以来のことである。
■最大の驚きはニコラ・アネルカの選出
しかし、なんと言っても最大の驚きはニコラ・アネルカの3年7か月ぶりの復帰であろう。前回のワールドカップ前の2002年4月のロシア戦に出場して以来、代表から外れ、ワールドカップ出場を逃す。ワールドカップ敗退を受けてジャック・サンティーニ体制になったその年の11月のユーゴスラビアとの親善試合では、負傷者が相次ぎ、追加招集をかけたものの、誇り高き問題児はこの招集を拒否し、フランス協会だけではなく当時所属していたマンチェスター・シティからも処分を受ける。それ以来アネルカ待望論はくすぶり続けたものの、今日まで代表のユニフォームを着ることなく、所属チームもトルコのフェネルバフチェに変わっている。アネルカはパリ近郊ベルサイユ出身であるが、アネルカという姓は元々ナイジェリアの姓であり、アネルカの先祖はアフリカからカリブ海のマルティニックに渡り、さらにパリ近郊へとその生活の拠点を移してきたのである。3年7月ぶりに代表に招集されたアネルカは満足しており、自らの先祖の出身地であるマルティニックでの代表復帰戦に並々ならぬ闘志を燃やしている。
二度と代表に選出されることがないと思われていたアネルカが代表する一方で、やはり選出されなかった、というのがロベール・ピレスである。ドメネク監督との見解の相違で「ブラックリスト」に名を連ねており、代表入りはありえないと思われていたが、今回のアネルカの選出でドメネク監督はブラックリストの存在を否定している。
今回戦術的な観点から代表から外れたのはピレスのほか、ジョアン・ミクー、オリビエ・ダクールなどである。また、負傷により代表を外れたのはジネディーヌ・ジダンである。代表選出の前日の練習で負傷してしまった。
■飛行機事故の犠牲者への慈善試合
さて、前々回の本連載でも紹介したとおり、このコスタリカ戦は8月にベネズエラで起こった飛行機事故での多数のマルティニック在住の犠牲者への慈善試合という意味もある。フランス代表の選手達はこの試合の収益金40万ユーロをこの飛行機事故の犠牲者のために寄付することを決定した。アネルカ効果のおかげでチケットの販売は上々であるそうである。長距離の移動、過密日程の中で行われる試合であるが、好ゲームを期待したい。(続く)