第490回 ワールドカップへ向けて2つの親善試合(4) 開催国ドイツとスコアレスドロー

■相性のよい強豪国ドイツ

 カリブ海での逆転勝利の後、再び長旅でフランス代表は本拠地に戻った。ハードスケジュールであるが、本大会までにチームがまとまって行動する機会はそれほどない。時間はあるが、機会がないのである。その数少ない機会の締めくくりが、本年の代表チームの活動の締めくくりともなるドイツとの親善試合である。前回のワールドカップ準優勝のドイツは今回は開催国であり、優勝候補の一つである。そのドイツを迎えて戦うことはフランスにとって来年の本大会への重要な試金石である。
  前回のドイツとの対戦は2年前の11月15日のことである。この模様は本連載の第255回から第260回の本連載で紹介しており、この時はアウエーで3-0と歴史的な勝利を飾っているが、フランスにとって相性のいい強豪国である。フランスが最後に敗れたのは1987年8月12日に西ドイツにベルリンで1-2、同年11月18日にパリで東ドイツに1-0というスコアで負けたのが最後である。1990年には1月24日に東ドイツに3-0、2月28日に西ドイツに2-1と統合直前の東西両ドイツに連勝する。統合後は1996年6月1日にシュツットガルトで初めて対戦して1-0、2001年2月27日のスタッド・ド・フランスでも1-0、さらに前回の対戦はゲルセンキルヘンで3-0と3連勝し、フランスは無失点である。

■新ユニフォームで本年最後の試合に臨む

 フランスはコスタリカ戦では飛行機事故の犠牲者を悼み、白いユニフォームを着用したが、このドイツ戦は来年のワールドカップに向けたニュールック、新しいデザインのユニフォームを着用した。今までどおり青が基調で赤のアクセントが入っているが、これまでは赤い線が水平に入っていたのに対し、新ユニフォームでは赤い線が首から脇に斜めに、そして脇の下から腰にかけて体の側部に垂直に入っている。このところ国際大会では2大会連続して不本意な成績が続いており、縁起を担ぐ意味でも新ユニフォームにかかる期待は大きい。

■コスタリカ戦から先発メンバーを6人入れ替え

 しかし、来年のドイツでの勝利はユニフォームではなく選手が問題である。レイモン・ドメネク監督が今年最後となる代表の試合でピッチに送り込んだメンバーは変則的なものとなり、コスタリカ戦から過半数の6人が入れ替わった。まず、GKはグレゴリー・クーペを起用、コスタリカ戦で久々の復帰をしながらチャンスを活かすことができず2失点を喫したファビアン・バルテスに不合格の烙印を押すことになった。ちなみに控えのGKはミカエル・ランドローであり、バルテスはベンチにも入っていない。そしてDFラインは負傷者が多発したため、変則的なメンバー起用となり、右にアントニー・レベイエール、左にウィリアム・ギャラス、センターの位置にはジャン・アラン・ブームソンとリリアン・テュラムを起用する。MFでは本来はDFのバイエルン・ミュンヘン所属のビリー・サニョルが右サイド、それ以外は守備的な位置にクロード・マケレレと攻撃的な位置にビカッシュ・ドラッソー、左サイドにフローラン・マルーダを起用する。そして2トップは久々のコンビとなるティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲである。ジネディーヌ・ジダンとパトリック・ビエイラが不在のため、主将はテュラムである。
  対するドイツもGKはオリビエ・カーンではなく、イェンス・レーマンである。このところのフランス-ドイツ戦はバルテスとカーンのGK対決にスポットライトが当たることが少なくなかったため、時代の変遷を感じざるを得ない。そしてそのレーマンも磐石ではなく、36歳と高齢である上に所属チームのアーセナルでは出場機会に恵まれていない。

■両チーム無得点でワールドカップイヤーを迎える

 フランスとドイツの対戦、しかも第一次世界大戦が終結した11月の試合とあって主審はイングランドのスティーブ・ベネット氏である。フランスは水曜日の試合と長旅、そして芝の状態もあり、動きは決してよくない。一方のドイツも試運転中という感じの試合運びである。前半は両チームとも見せ場がなく、無得点に終わる。後半に入りフランスはFW陣を入れ替える。後半開始時にアンリに代えてニコラ・アネルカ、70分にトレゼゲに代えてジブリル・シセを投入、少なからずチャンスは作ったものの、両チーム得点なく、スコアレスドローで試合は終わる。
  両チームが来年の本大会で顔を合わせることはあるのであろうか。本大会で顔を合わせるとなれば、1982年ワールドカップ以来のこととなるのである。(この項、終わり)

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