第674回 21年ぶりのアルゼンチン戦(1) 実現しなかった近年のワールドカップでの対戦

■ワールドカップ優勝経験2回の強豪

 1月のフランスのサッカーは国内のリーグ戦、カップ戦だけが行われ、サッカーの国際試合が行われなかったが、2月に入ると早速国際試合が行われた。それが今回から紹介するフランス代表とアルゼンチンの親善試合である。2月7日にスタッド・ド・フランスで行われたが、両チームの対戦の歴史をさかのぼると興味深いことがわかる。
 これまでにワールドカップで優勝した経験のある国はフライス以外にはブラジル、ドイツ(西ドイツ)、イタリア、イングランド、アルゼンチン、ウルグアイの6か国であり、アルゼンチンは2回優勝している。アルゼンチン以外の5つの国との対戦については本連載で紹介してきたが、唯一紹介していないのがアルゼンチンである。また、本連載ではサッカー以外の競技、例えばラグビーやバスケットボールではアルゼンチンとの対戦を紹介してきたが、サッカーでは取り上げていない。

■1986年3月26日以来、21年ぶりの対戦

 それもそのはず、サッカーの世界でアルゼンチンとフランスが最後に対戦したのは20年以上前の1986年3月26日のことなのである。フランスはこれまでに多くの国と試合を行ってきたが、現存する国の中で21年以上試合を行ったことがない国はわずか6か国しかない。リトアニア(1924年以来83年間)、イラン(1978年以来29年間)、米国(1979年以来28年間)、ウェールズ、ペルー(ともに1982年以来25年間)、ルクセンブルグ(1985年以来22年間)という国である。欧州勢の場合は力の差がある小国で、ワールドカップや欧州選手権の予選で同じグループに入らない限り対戦しないであろう。残りの3か国は他大陸のチームであり、レベル的にも中堅国であることからわざわざ親善試合を行う必要には迫られず、4年に1回のワールドカップで同じグループリーグに入った場合のみ対戦の機会が訪れるのであろう。
 アルゼンチンは大陸こそ違うものの強豪国であり、ワールドカップの本大会で対戦する機会があってもおかしくはない。しかし、フランスとアルゼンチンは1930年大会、1978年大会といずれもグループリーグで対戦しただけなのであり、両国がワールドカップの強豪同士が争う決勝トーナメントで対戦したことはいまだかつてないのである。

■過去5年以内に対戦歴がある他の優勝経験国

 アルゼンチン以外のワールドカップ優勝経験国とフランスとの対戦を見てみると、いかにアルゼンチンと対戦していないかがよくわかる。フランスは昨年のワールドカップでブラジル、イタリアと対戦したのをはじめ、イングランドは2004年の欧州選手権で対戦している。ドイツとは2005年秋に親善試合で対戦し、ウルグアイとは2002年のワールドカップで対戦している。このように他の5か国とは少なくとも5年以内に対戦しているのに、なぜかアルゼンチンとだけは近年の対戦がなかったのである。

■大会の主役同士の対戦は実現せず

 1986年以降のワールドカップをみると、1994年大会と2002年大会以外の4大会でいずれかのチームが決勝に進出しているが、両チームの対戦はすれ違いに終わっている。まず昨年のドイツ大会、両チームともグループリーグを1位で通過し、決勝での対戦の可能性があったが、決勝まで残ったのはフランスだけで、アルゼンチンは準々決勝でドイツに敗れている。その4年前の韓国・日本大会では両チームが優勝候補の双璧と言われながら、双方ともグループリーグで敗退してしまっている。その前の1998年のフランス大会はアルゼンチンがイングランドとのサンテエチエンヌでの戦いを制しながら準々決勝で姿を消し、フランスと決勝で戦うことはかなわなかった。1994年大会、1990年大会はフランスが本大会にたどり着けなかった。アルゼンチンは1994年の米国大会では決勝トーナメント1回戦で敗退しているが、1990年のイタリア大会では決勝に進出している。そしてディエゴ・マラドーナのゴールと、フランス-ブラジル戦の戦いが今でも語り継がれている1986年のメキシコ大会であるが、フランスは準々決勝でブラジルに勝利した次の試合でドイツに敗れ、決勝進出を逃し、一方のアルゼンチンは優勝を遂げているが、この大会の2人の主役が同じピッチに立つことはなかったのである。
 フランスが本大会に出場できなかった1990年大会、1994年大会はさておき、2002年は大会前の両本命、そして1986年と1998年は優勝チームと最も印象に残ったチームであり、大会の両主役と言ってもいい。しかし、その主役同士の対戦はなく、不思議な因縁を感じるのである。(続く)

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