第736回 グアドループ、ゴールドカップで大活躍(5) シード国のカナダ相手に大番狂わせ

■ワールドカップ開催から13年たった米国

 今回のゴールドカップの開催国は米国、13年前に欧州・南米以外で初めてワールドカップを開催した国である。また米国のスポーツといえばアメリカンフットボールであり、そのアメリカンフットボールの競技場をベースとした巨大なスタジアムで猛暑の中で戦いが行われてから13年の月日がたった。サッカー不毛の地での開催、プロのビジネスとしてのサッカーの定着はいまだに難しい課題であるが、競技としてのサッカーの普及は目覚しく、男女問わず各年代で世界の舞台で活躍している。
 また、競技場にも不足はなく、数多くの巨大なアメリカンフットボール用の競技場が点在している。初出場のグアドループが戦う舞台はマイアミのオレンジボウルである。日本の皆様ならばよくご存知のとおり、ワールドカップの2年後に行われたアトランタオリンピックで日本がブラジルを破った舞台である。日本のブラジル戦勝利はマイアミの奇跡といわれたが、今度はグアドループが奇跡を起こしたのである。

■カリブカップで敗れたハイチ相手に勝ち点1

 グアドループの米国での最初の相手はフランスから独立したハイチである。フランスから独立する場合、第二次世界大戦後の1960年前後が中心であるが、ハイチの場合は1804年と古い歴史を誇る。これはクリストファー・コロンブスによって発見されたハイチが1697年にフランスの植民地となったが、フランス革命に乗じてハイチに独立の機運が高まった結果によるものである。西ドイツで1974年に開催されたワールドカップに出場し、1次リーグで3連敗して敗退したが、ポーランド、アルゼンチン、イタリアが相手では仕方のないところであろう。そのハイチは前回の本連載でも紹介したとおり、カリブカップ決勝ではトリニダード・トバゴを下し、初優勝を決めている。そしてハイチは準決勝でグアドループを3-1と下していることから、ハイチ有利という前評判の中で試合はキックオフされた。この試合、36分にハイチはPKで先制する。しかし、グアドループも後半に入って54分に同点ゴールを決め、格上と目されていた相手に対して勝ち点1を上げたのである。

■シード国のカナダ相手に勝利を呼んだジョセリン・アングロマのゴール

 そして第2戦の相手はゴールドカップ本戦にストレートで出場しているカナダである。カナダは第1戦でコスタリカを下しており、グアドループに勝利すれば早々に準々決勝進出を決めることができる。第1戦のハイチ戦に続いてフランス語圏との戦いとなったグアドループは奇跡を起こす。それが10分のジョセリン・アングロマのボレーシュートである。このシュートでグアドループはシード国のカナダ相手に先制し、オレンジボウルに集まった2万3000人の観衆は驚きの声を上げたのである。そしてカナダも負けじと35分に同点に追いつくが、アングロマが攻撃のリーダーとなったグアドループはすかさず37分にダビッド・フルーリバルが勝ち越し点を上げる。フルーリバルはパリ郊外の生まれでフランス国内で育ち、現在は2部のツールの主将を務めているが、先祖の出身地であるグアドループのためにバカンスを返上して米国に駆けつけたのである。そしてグアドループは残り1時間近くこの1点のリードを守りきり、シード国相手にFIFA未加盟国が勝利という大番狂わせを演じ、グアドループは首位に立ったのである。

■コスタリカに惜敗し、他グループの結果を待つ

 そして勝ち点4と首位に立って迎える第3戦は2002年のワールドカップに出場したコスタリカが相手である。コスタリカはここまで1分1敗と勝ち点にとどまる。グアドループに勝利すれば勝ち点で並ぶことができるコスタリカの執念が上回り、グアドループは1-0と最少得点差で勝利する。そしてカナダはハイチに勝利し、1位カナダ2勝1敗、2位には1勝1分1敗、総得点3、総失点3、得失点差0でコスタリカとグアドループが並ぶ。直接対決でコスタリカが勝利しているため、コスタリカが上位となり、3位になったグアドループが準々決勝に進出できるかどうかは他のグループの結果次第となったのである。(続く)

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