第751回 真夏の親善試合・スロバキア戦(1) A’代表と合わせてメンバーを大量に選出
■イタリア、スコットランドとの連戦に備えてスロバキア戦
8月に入り、国内ではリーグ戦、そして欧州に目を転じると欧州カップの予備選が始まっている。そしてバカンス明けの9月には欧州選手権予選の最後の天王山とも言えるイタリア、スコットランドとの連戦が待ち受けている。
フランス代表は本連載でも毎年取り上げてきたように、8月に親善試合を行い、ワールドカップや欧州選手権の予選が本格化する秋のシーズンに備えている。今年の夏の親善試合は8月22日にアウエーでスロバキアと対戦する。2週間後の9月8日にアウエーでイタリア戦、そして12日にホームでスコットランド戦が控えている。新たなシーズンの開始に伴い、選手自身もコンディションを作り始めたところで、新戦力が決戦に向けてどのように機能するかファンは期待している。
■フル代表戦の前日にA'代表の試合を実施
2006-07シーズンにフランス代表では新たに代表にデビューした選手が9人、代表でビューはならなかったものの、代表入りした選手が4人おり、彼らが秋の予選、そして来年の本大会でどれだけ活躍できるかと言うところが注目である。さて、欧州でフル代表の国際試合がある場合、通常はその前後にそれに準じるチーム、例えばオリンピック代表の試合が行われる。今回のスロバキア戦も例外ではなく、22日にフル代表の試合がトルナバで行われるが、その前日の21日にはセネツで両国のA'代表の試合が行われる。年齢制限のあるオリンピック代表の試合ではなくフル代表に準じるチームの試合を準備したということに大きな意味がある。イタリア戦、スコットランド戦に向けて通常は20人前後のフル代表の選手だけではなくそれに準じる選手もテストしたいことからA'代表の試合を組んだのであろう。
通常、フル代表とそれ以外のチームがある場合、それぞれのチームを別々に招集するが、レイモン・ドメネク監督はこの2チームを合わせた34人をフランス代表として試合の前週の16日に発表した。そしてその後負傷者が出たり、追加招集したりして、最終的には34人の大デレゲーションとなったのである。リーグ戦の翌日の19日の夕方にこの34人はクレールフォンテーヌに集合、そして月曜日の20日には午前中練習、夕方にスロバキアに向けて出発する。スロバキアではセネツに滞在し、到着の翌日の夜にA'代表が試合、その翌日にフル代表がトルナバに移動して試合と言うあわただしいスケジュールである。
ドメネク監督は「2つのチームが2試合行うのではなく、1つのチームが2試合行う」として、二軍にあたるA'代表のメンバーは試合の当日に発表するという徹底振りである。
■2人の新人、2人の代表未出場選手、2人の復活組
注目の新人選手の抜擢は2人だけ、ソショーのGKのテディ・リシェールとトゥールーズのMFのジェレミー・マテューの2人である。いずれも、昨季のフランスのサッカーを沸かせた古豪の主力メンバーである。また、これまでに代表に招集されながら、試合出場機会に恵まれなかった選手がフィオレンチーナ(イタリア)のGKのセバスチャン・フレイ、レンヌのFWのジミー・ブリアン、今季オセールからイングランドのアーセナルに移籍したばかりのバカリ・サーニャの2人である。
また目立つのが復活組である。2005年2月のスウェーデン戦以来となるユベントス(イタリア)のジョナタン・ザビーナ、2001年6月に韓国で行われたコンフェデレーションズカップの豪州戦以来となるパリサンジェルマンのズーマナ・カマラと、久しぶりの復活となった。
■輝く2007年3月にデビューした選手たち
そして、忘れてはならないのが今年3月のリトアニア戦(欧州選手権予選)とオーストリア戦(親善試合)で代表にデビューした選手たちである。サミール・ナスリ(マルセイユ)は3月のオーストリア戦でデビューし、これまでに代表出場3試合、同じくオーストリア戦でデビューしたカリム・ベンゼマ(リヨン)は代表出場2試合、リトアニア戦でデビューしたラッサナ・ディアラ(チェルシー)も代表出場2試合、そしてオーストリア戦に出場したフレデリック・ピキオンヌ(モナコ)は代表出場1試合である。
彼らは代表としての出場数こそ少ないが、デビューしてからの印象は鮮明であり、デビュー以後も貴重な戦力として活躍している。彼らが今の輝きを保つことができれば、フランスは、イタリア戦やスコットランド戦だけではなく、来年の欧州選手権本大会も安泰であろう。(続く)