第752回 真夏の親善試合・スロバキア戦(2) 6年ぶりに編成されたA’代表、惜敗する
■6年ぶりに編成されたA'代表
9月に行われる欧州選手権予選の天王山を控えて、フランスはスロバキアとフル代表ならびにA'代表の試合をセットで行う。さて、A'代表であるが、実は6年ぶりのチーム編成となる。6年前の2001年3月22日にミュールーズでフランスとドイツがA'代表同士の試合を行っている。記憶力の良い読者の皆様ならばお分かりと思うが、フランス代表はちょうどこの試合の直後の3月24日に日本とスタッド・ド・フランスで対戦し、大勝し、28日にスペインとバレンシアで対戦し、惜敗している。翌年のワールドカップを控え、メンバー選考をしている段階で日本戦、スペイン戦だけでは不十分であると判断したのであろう。それ以前もしばしば、フランスA'代表は編成されていたが、フル代表とは異なるチームと対戦してきた。今回のスロバキア戦のようにフル代表の試合とA'代表の試合がセットで行われるのは今から11年前の1996年3月のベルギー戦以来のことである。
したがって、今回のようにフル代表とA'代表が同じ相手と戦い、しかもチームも合同で招集されると言うケースは初めてのケースである。ちなみに11年前のベルギー戦はフル代表がベルギー国内で試合を行い、A'代表はフランス国内で試合を行った。今回のスロバキアとの2つの親善試合が評価されれば、このようなチームの編成方法も今後のフランス代表のあり方を左右するであろう。
■代表から離れた中堅と若手選手で構成
そして6年ぶりに編成されたフランスA'代表のメンバー16人はレイモン・ドメネク監督の予告どおり、試合のある21日に発表された。GKはセバスチャン・フレイ(代表歴0試合)、テディ・リシェール(0試合)、DFはジャン・アラン・ブームソン(21試合)、ズーマナ・カマラ(1試合)、ジェレミー・マテュー(0試合)、アントニー・レベイエール(5試合)、ミカエル・シルベストル(40試合)、セバスチャン・スキラッチ(11試合)、ジョナタン・ゼビーナ(1試合)、MFはアルー・ディアラ(12試合)、ラッサナ・ディアラ(3試合)、リオ・アントニオ・マブーバ(6試合)、FWはジミー・ブリアン(0試合)、ジブリル・シセ(35試合)、フレデリック・ピキオンヌ(1試合)、ダビッド・トレゼゲ(39試合)というメンバーになった。半数以上の選手は代表歴が一桁であり、若手中心の構成である。二桁出場歴のある選手は翌日のフル代表の試合に出場してもおかしくないが、同ポジションにいる他の選手との関係で、この火曜日の試合に回ったのであろう。また、年齢的には若くてもカリム・ベンゼマ、サミール・ナスリなどはこのメンバーに入っていないことから翌日のフル代表の試合での活躍を期待されている。
■主将に任命されたブームソン
ドメネク監督は火曜日のA'代表の試合と水曜日のフル代表の試合の違いはテレビ中継があるかないかだけだ、と選手のモチベーションを高める。観衆はわずか2000人だけであったが、各選手は与えられたチャンスを与えようと、意欲は高かった。
フレイ、ブームソン、シルベストル、スキラッチ、マテュー、ゼビーナ、アルー・ディアラ、ラッサナ・ディアラ、ブリアン、シセ、トレゼゲがスターティングメンバーとなった。そして主将にはブームソンが任命された。4年前のコンフェデレーションズカップの日本戦で代表デビューしたことから日本の皆様には親しみのある選手であろう。所属チームのユベントスはイタリアで2部降格を余儀なくされ、代表の試合でも2006年のワールドカップのメンバーに入ったが、ドイツでは1試合も出場することがなかった。ワールドカップ後初めての昨年のこの時期に行われたボスニアヘルツェゴビナ戦には出場したものの、それ以来代表の試合での出場は昨年10月のスコットランド戦だけである。そのスコットランド戦は、フランスにとってワールドカップ以降唯一の敗戦である。ブームソンにとっては信頼を回復し、フル代表に復帰するチャンスである。
■控えGK以外の15人がテストを兼ねて試合に出場
テストと言う意味もあって、選手交代を積極的に行い、控えのGKのリシェール以外の15人が出場した。試合は前半の23分にスロバキアのフィリップ・ホロスコにゴールを決められてしまう。この1点を返すことができず、6年ぶりに編成されたフランスA'代表は勝利することができなかったが、彼らにとって、そしてフランス代表にとってこの経験が生きてくる日がいつか来るのである。(続く)