第753回 真夏の親善試合・スロバキア戦(3) ティエリー・アンリのゴールで勝利
■欧州選手権予選で巻き返しを図るスロバキア
前回の本連載で紹介したとおり、欧州選手権予選の天王山であるイタリア戦を控えて、6年ぶりに編成したフランスA'代表はスロバキアのA'代表に0-1と惜敗してしまった。この試合に出場しなかった選手が翌日のフル代表のメンバーとなる。
さて、スロバキアもまた欧州選手権予選を戦っているが、グループDでドイツ、チェコ、アイルランド、ウェールズ、キプロス、サンマリノという厳しいメンバーと戦っている。この段階で首位はドイツ(勝ち点19:6勝1分)が独走、2位はチェコ(14:4勝2分1敗)、3位はアイルランド(13:4勝1分2敗)、そしてようやく4位がスロバキア(9:3勝4敗)である。スロバキアはドイツ、チェコにホームで敗れている。9月8日はアイルランド、12日はウェールズといずれもホームで対戦する。ここで連勝して巻き返しを図りたいところである。
■レイモン・ドメネク監督の初黒星はスロバキア戦
スロバキアは第二次世界大戦前から単独で代表チームを編成してきたが、その後はチェコスロバキアとなって、東欧を代表する強豪チームとなった。最後の輝きは1990年のワールドカップ・イタリア大会であり、1992年の欧州選手権はフランスの前に本大会出場を阻まれる。そして1993年にチェコとスロバキアに分かれ、スロバキアとして新たな道を歩み始める。
フランスとスロバキアの対戦はこれが4回目である。最初の2回は1996年欧州選手権イングランド大会の予選である。そして3回目は昨年3月にスタッド・ド・フランスで行われた親善試合である。これらの3試合については第528回から第530回の本連載で紹介している。昨年3月のスタッド・ド・フランスの試合でフランスは1-2と敗れ、2004年夏にレイモン・ドメネク体制となってから初めての敗戦を喫したのである。暗雲の立ち込めたフランス代表であったが、それ以降は負けることはなく、ワールドカップ決勝戦で延長・引き分けの末、PK戦でイタリアに栄冠を譲るが、これも記録上は引き分けである。そしてフランスは、昨秋から始まった欧州選手権予選もグルジア、イタリアと退けて、グラスゴーでのスコットランド戦に敗れ、今年2月のアルゼンチン戦でも敗れている。スタッド・ド・フランスでフランスを下した数少ないチームであ、欧州選手権予選の成績や世界ランキングだけで判断するわけにはいかない。
■守備陣に負傷者が相次いだフランス
スロバキアとの2試合に30人以上のメンバーを選出したフランスであるが、守備陣に負傷者が相次いでいる。まず、リヨンの守護神グレゴリー・クーペが、年内復帰が危ぶまれる重傷となった。そしてCBもリリアン・テュラム、ウィリアム・ギャラスを欠いた陣容となる。これらの守備陣の重要人物の代役となったのがGKはミカエル・ランドロー、CBはフィリップ・メクセスと通常は左サイドのエリック・アビダルである。ランドローはこれまでに代表で6試合しか出場経験がないが、5勝1分で無失点である。またメクセスも出場した8試合全てで勝利を収めており、代役とは言っても勝負強さでは引けをとらない。サイドバックは右にフランソワ・クレルク、左はアビダルが中央に移ったのでパトリス・エブラを起用する。
■アンリ、代表通算40ゴールを決める
また、攻撃陣についても結局ニコラ・アネルカをトップに配し、やや下がり目に俊足のティエリー・アンリという布陣で、サミール・ナスリは先発メンバーから外れた。攻撃的なMFは右にフランク・リベリ、左はフローラン・マルーダとなった。そして守備的なMFにはパトリック・ビエイラとクロード・マケレレとベテランが陣取った。
試合はフランスがペースをつかみ、39分にはアンリがゴールを決める。アンリにとっては代表で40ゴール目となった。そして不安の尽きない守備陣であるが安定した守備を見せ、スロバキアにゴールを許さず、フランスが前日の雪辱を果たす。当面代表のゴールを守ることになるランドローは代表にデビューして以来の連続無失点試合を7に伸ばす。そしてドメネク監督は就任以来、初めて敗れた相手に勝利し、借りを返すことになった。
フランスはこの親善試合での勝利に喜んでいるだけではない。真の目標は9月8日にミラノのサンシーロで行われるイタリア戦なのである。(この項、終わり)