第791回 2つの組み合わせ抽選会(2) 「死のグループC」に入った欧州選手権

■6チームのグループと5チームのグループのあるワールドカップ予選

 ワールドカップ予選の組み合わせでフランスは第1シードとなった。まず、53チームを9つのグループに分けたことから、6チームからなるグループと5チームからなるグループが存在する。5チームからなるグループに入った場合、8試合しか戦わなくてもよく、欧州サッカーの過密日程の中で10試合戦わなくてはならない6チームからなるグループよりも日程的には楽であり、5チームからなるグループ9に誰しもが入りたいと思うであろう。
 また、プレーオフに進出する8チームを選ぶ段階で、単純に10試合の勝ち点と8試合の勝ち点を比較するわけには行かないので、6チームからなるグループの場合は最下位チームとの対戦成績を考慮しない。これは必ずしも公平なシステムとはいえないであろう。すなわち、2位となるチームは最下位チームとなるチームとの対戦では勝ち点さえ上積みできればよく、得失点差は関係なくなるわけである。どのチームが最下位となるかが、ある程度わかってから戦うチームとわからない段階で戦うチームとでは不公平が生じる。
 一方、5チームからなるグループに入った場合は、全ての対戦が成績にカウントされるため、全ての試合に対して同じモチベーションで戦うことができる。

■イングランド戦を回避できたワールドカップ予選

 いずれにせよ1位で突破した場合はプレーオフは関係なくなるため、第1シードのフランスとしては1位突破したいところである。その際に気になるのが第2シード以下のチームである。第1シードから外れた有力国としてはイングランドがあげられる。イングランドはFIFAランキング12位で第2シードに甘んじている。さらに来年の欧州選手権の出場権を逃しており、今回のワールドカップ予選にかける意気込みはただならぬものがあろう。
 抽選の結果、フランスはグループ7に入り、第2シードからはルーマニア、第3シードからセルビア、第4シードからリトアニア、第5シードからオーストリア、第6シードからフェロー諸島が入った。5チームからなるグループ9に入ることはできなかったが、第2シード以下の顔ぶれを見ると、最大のライバルはFIFAランキング13位のルーマニアであろうが、フランスにとってはまずまずの結果であったと言える。
 注目のイングランドはグループ6、クロアチア、ウクライナなどが入った。今回の欧州選手権ではクロアチア、ロシアに本大会の道を阻まれており、クロアチアとの再戦、旧ソ連邦のウクライナとの戦いには母国の執念をかけてくるであろう。

■第1シードに弱小国が集まった欧州選手権

 その次の日曜日には、欧州選手権本大会の抽選会があった。フランスがワールドカップ予選と欧州選手権本大会のシード順において大きな差があったことを紹介したが、実はフランス以外に大きな差のある国がある。それが開催国のスイスとオーストリアである。スイスはワールドカップ予選では第3シード、オーストリアは第5シードとなっている。欧州選手権本大会の出場国16か国のうち、9か国は順当にワールドカップ予選で第1シードに入ったが、入ることができなかった7か国も、そのうち5か国は第2シードである。開催国だけが第2シードまでに入らなかったのである。またギリシャも前回優勝として第1シードだが、ワールドカップ予選は9番目のチームとして第1シードに滑り込んでいる。
 組み合わせ抽選のシード順の決定に使用した1試合あたりの平均勝ち点はスイスは1.800、オーストリアは1.500、そしてギリシャは2.167であり、開催国のスイスは参加16チーム中15番目(第4シードに相当)、オーストリアは最下位の16番目(第4シードに相当)と下位2つを占め、前回優勝のギリシャですら11番目(第3シードに相当)である。

■オランダ、イタリア、ルーマニアと同グループ

 すなわち、第1シード4か国のうち、オランダ以外の3チームは下位シードの実力しかないとみなすことができるであろう。すなわち、4チーム中3チームは第1シードとは名ばかりで、第2シード以下の各チームはオランダと同プールに入らなければいいであろう。
 ところが、フランスにとっては魔の組み合わせとなった。第1シードは唯一実力で入ったオランダと同じグループCになってしまう。そればかりか第2シードからは今回の欧州選手権予選でも死闘を演じたイタリア、第3シードからはワールドカップ予選で最大のライバルとなるルーマニアと強国がそろったのである。(この項、終わり)

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