第812回 2008年アフリカ選手権(4) アンリ・ミッシェル、ジェラール・ジリも白星発進

■モロッコを率いるアンリ・ミッシェル

 前回の本連載では開幕戦のガーナ-ギニア戦のクロード・ルロワとルベール・ヌザレのフランス人監督対決を紹介した。今回のアフリカ選手権に出場しているフランス人監督はこの2人だけではない。
 開幕戦の翌日の1月22日には3試合が行われた。まず16時からはガーナ、ギニアと同じグループAのナミビア-モロッコ戦がアクラでキックオフされた。
 ナミビアは南アフリカからの独立国であり、フランスのクラブに所属している選手もフランス人監督もいない。一方のモロッコはフランスから独立した国であり、マグレブ諸国と言うことでフランスと密接な関係にある。モロッコの代表チームには6人のフランスリーグに所属する選手がおり、このチームを率いるのはアンリ・ミッシェルである。アンリ・ミッシェルについてはこれまで本連載ではしばしば取り上げてきた大物監督である。フランス代表選手として活躍して引退した後、フランス五輪代表監督としてロサンジェルスオリンピックで優勝し、1984年欧州選手権後にフル代表の監督に就任する。アンダーエイジ以外の初めての監督がフランス代表の監督であり、1986年ワールドカップ3位と言う素晴らしい経歴を持つ。しかしながら、イタリアワールドカップの予選中に解任の憂き目にあい、パリサンジェルマンの監督を1季務めた後はフランスから去る。

■名将に率いられたモロッコが大勝

 カメルーン代表監督を皮切りに、モロッコ代表監督として1998年ワールドカップで母国の土を踏む。アラブ首長国連合代表や国外のクラブチームの監督を経て、チュニジア代表監督として2002年ワールドカップの予選突破を果たす。2006年にはコートジボワール代表監督としてドイツのワールドカップで指揮を取る。そして昨年夏よりモロッコ代表監督に就任し、アフリカ選手権に駒を進めてきた。
 このモロッコとナミビアの試合はワンサイドゲームとなった。スーフィアン・アルーディのハットトリックなどでモロッコが5-1と大勝する。なお、モロッコの5点目はナンシーに所属するモンセフ・ゼルカのゴールであり、フランスのクラブに所属する選手の今大会初ゴールとなった。

■1974年ワールドカップ優勝メンバーのベルティ・フォクツ

 そして、18時にはグループBが開幕した。セコンディでナイジェリアとコートジボワールが対戦する。ナイジェリアの監督はベルティ・フォクツ、かつての西ドイツの名選手であり、1994年のワールドカップでは優勝している。引退後はドイツ代表の監督として欧州選手権、ワールドカップともに2回ずつ出場、1996年の欧州選手権では優勝している。スコットランド代表監督としてフランス代表とも対戦成績のあることは本連載第44回で紹介したとおりである。昨年からナイジェリアの監督に就任している。

■五輪代表監督から急遽昇格したコートジボワールのジェラール・ジリ

 一方のコートジボワールの監督はジェラール・ジリである。5連覇を果たしたマルセイユの最初の優勝時の監督であり、1999年にはエジプト代表監督を務めている。そして今回のアフリカ選手権の2週間前に突然コートジボワール監督に就任している。それまで指揮を取っていたのはドイツ人のウーリッヒ・シュティーリケ監督である。西ドイツ代表として1982年のワールドカップ優勝メンバーとなったシュティーリケ監督の息子が昏睡状態になったため、監督の座を辞したためである。そのためコートジボワール代表のコーチを歴任し、コートジボワール五輪代表の監督として2008年の北京オリンピックへチームを導いたジリがフル代表の監督に昇格したのである。
 西ドイツのワールドカップ優勝メンバーを引き継いだジリであるが、デビュー戦の相手もまた西ドイツのワールドカップ優勝メンバーと言う奇遇な巡り会わせが実現した。この試合は後半から優勢となったコートジボワールが、65分のサロモン・カルーのあげた1点を守りきって初戦突破、ジリは監督として見事に門出を飾ったのである。(続く)

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