第822回 強豪スペインと親善試合(4) スペインで今回も勝利できなかったフランス
■8回目の欧州選手権出場となるスペイン
フランス代表にとってこのマラガでの試合は初めてのことであると紹介したが、スペイン代表にとっても7回目の試合である。最後のマラガでの試合は14年も前のことであり、フランス代表と言うようなビッグネームとの対戦とあって、3万5000人収容の試合であるが、5万以上のチケット購入希望があった。
スペインは欧州選手権予選ではスウェーデン、デンマークと言うライバルと同じグループFで、9勝1分2敗の成績を残し、首位で突破を決めている。欧州選手権は第2回大会にあたる1964年大会で優勝を飾っている。今大会は4大会連続8回目の出場であり、ドイツの10回、ロシアの9回に次ぐ出場回数を誇り、ドイツが西ドイツから、ロシアはソ連からの通算成績であることを考慮すると同一チームではオランダと並んで最多の出場回数となる。欧州選手権の本大会では前回優勝のギリシャ、予選でも対戦したスウェーデン、そして初代王者の流れを組むロシアとともにグループDで戦う。
■近年の国際大会では不振の無敵艦隊
無敵艦隊と言われたのは今は昔、最近の国際大会では2006年のワールドカップではフランスに敗れベスト16、2004年の欧州選手権では優勝したギリシャとグループリーグで勝ち点、直接対決の結果、総得失点差で並び、結局は総得点の差でグループリーグ敗退となってしまっている。国際大会で準決勝以上に進出したのは欧州選手権では1984年大会(準優勝)、ワールドカップでは半世紀以上前の1950年大会(4位)が最後である。今大会の予選も序盤で2敗したが、中盤から盛り返し、2006年11月のルーマニアとの親善試合で敗れたのが最後、2007年はアウエーのイングランド戦で勝利したのを皮切りに、10勝2分と無敗で1年を終え、2008年の最初の試合がこのフランス戦である。
■キャリア十分の若手が多いスペインの選手
スペインのメンバーは大幅に若返った。主将のGKのイケル・カシージャスはこれが代表74試合目となるが、まだ26歳である。先発メンバーで30歳以上の選手はフランスは過半数の6人を数えるが、スペインは守備的MFのダビッド・アルベルダだけである。カシージャス同様、年齢的に若くても代表でのキャリアの多い選手としてセルヒオ・ラモス(21歳で31試合目)、フランシスコ・ファブレガス(21歳で31試合目)、フェルナンド・トーレス(23歳で46試合目)、アンドレス・イニエスタ(23歳で21試合目)と列挙できる。フランスの先発メンバーで最年少は24歳のジェレミー・トゥーラランであるが、まだ10試合目である。同じ24歳で24歳の出場経験のあるフランク・リベリは前週に太ももを痛めてメンバーから外れている。
■ティエリー・アンリがブレーキ、ジョアン・カプデビラの一撃に泣く
試合はまず黄色いユニフォームのスペインのペースで始まった。13分にはシャビのFKがわずかに外れる。そして24分に現在イングランドのプレミアリーグで得点ランキング3位のフェルナンド・トーレスが負傷退場する。25分過ぎになると今度は赤いユニフォームのフランスがリズムをつかむ。プレミアリーグで得点ランキング5位のニコラ・アネルカも好シュートを放つ。
後半開始時に、スペインは積極的にメンバー交代を行い、3人を入れ替える。一方のフランスは1人だけの交代にとどまる。ダビッド・トレゼゲがレイモン・ドメネク監督の構想から外れてしまった現在、ティエリー・アンリとコンビを組むのはアネルカかカリム・ベンゼマかという選択肢になっている。そのベンゼマは60分にアネルカに代わってピッチに入ってきた。フランスリーグでの得点ランキングトップのベンゼマはすぐにアンリからのパスを受け、シュートを放つが、カシージャスに阻まれる。試合の3分の1しか出番のなかったベンゼマであるが、チャンスを活かすべく、3本のシュートを記録する。一方、精彩を欠いたのが2トップの軸であるアンリである。フル出場しながら積極的なプレーがなく、シュート数はわずかに3、しかもGKと1対1になる好機も外している。
試合終盤の80分、スペインのイニエスタが左CKをシュート、フランスのラッサナ・ディアラがクリアしたものの、ジョアン・カプデビラがこのクリアボールをシュートし、ゴールネットを揺らしたのである。
この1点がこの試合唯一の得点となり、スペインがフランスを1-0と下す。親善試合としては2001年のバレンシアでの戦いに続き連敗となった。実はこれまでのフランスのスペインでの親善試合の成績は1勝2分7敗、唯一の勝利は、今から半世紀以上前の1955年のことなのである。(この項、終わり)